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猛獣の怪我を治して死んだふり

シリーズ・現代川柳と短文 033
(写真でラジオポトフ川柳121)

 かつて行った舞台公演にキャラクターのひとりが凶刃に倒れるシーンがあった。まぶたを閉じ、仰向けになる俳優。静まり返る劇場。そのとき客席からこどもの声がした。「死んだふりだ〜」うん、そうだよ。死んだふりだよ。続いて舞台上ではそのキャラクターの親友が涙を流しはじめた。こどもは一緒に来ていた親に注意されたのか、こんどはなにも言わなかった。だから代わりにわたしが心の中で言った。「泣いてるふりだ〜」


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