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というタイトルをつけるとまるで2016年に作った現代川柳や2021年に作った現代川柳もあったかのようですが、なかったです。なぜなら現代川柳に出会ったのがことし2022年だから。というわけで、8月6日に参加した「川柳スパイラル創刊5周年の集い」以降に作った現代川柳をまとめてみます。あれですね、まとめることで気づきがあるといいですね。なくてもいいですね。

川柳スパイラル句会(8月)

■短歌も俳句も知らないわたしが現代川柳を知ったのはことし7月ごろ、川柳作家の暮田真名さんが書いたこの記事を読んだのがきっかけでした。で、記事中で紹介されていた小池正博さんが発行人を務める川柳誌「川柳スパイラル」の創刊5周年イベントがあると知り、のこのこ行って、のこのこ自分でも句をつくってみた。

預言者のもち肌ばかり夢に見る
タロットと畳を色で分けている
優秀な犬の気配にみちている
砂糖には似合う角度の捨て台詞
逆流を活かして棒でリズムとる
好きなスペース茄子立てかける
 ▲まさかこの年末に「茄子」で連作を作るとは
賭博でも氷で多少工夫する

7句中6句が「る」終わりなのは恐ろしいが、作っているときそれに無自覚だったことがいちばん恐ろしい。なぜ気づかないのか。しかしいまは気づけている。川柳にかぎらず、短詩型文学には「自分のクセかんたんにふりかえり装置」みたいなところがあると思う。

「盆ダンス」句会(8月)

■上記の「川柳スパイラル」にも参加されている川柳作家の海馬さんと、「川柳句会ビー面」を主催されているササキリユウイチさんが開催したオンライン句会。事前投句をしたうえで、zoomで「一堂に会して」行われたもの。と、いまでこそなんとなく説明できますが、そのときはなにがなにやらわかっていませんでしたし、いまもわかっていません。

こころざしなかばのサランラップかな
有形のサランラップでやりなおす
この幅は菫の影が通れない
 ▲これはいいですね
屋根裏の菫部分をふりかざす
 ▲これはよくないですね
猛暑日にグランドピアノ増えている
有識者会議になじむ麦茶だね
教え子は刺身目線で意見する
おもしろくなってきたなと川魚
自主的に染色体がもっちもち
効率を求めた先で餅を見る

同句会・席題

上記は事前に出されたお題に事前に応えた句。下記はその場で出されたお題にその場で応えた句。

茶畑に鯨が隠れている気分
ぼんやりとした人数のこどもたち
そら耳の構造模した野球術
愛の無い言葉でサラダ味つける
血まみれの床で生まれたスポーツ
 ▲時間に迫られ出てきたのがスポーツ。なぜ

お休み段図抄(9月~10月)

■現代川柳とは無関係にひとりこつこつやっていたモーニングルーティーン文芸「段図抄」のストック画像(説明は省きます)が底をつき、次のストックを集めるまでの期間、いわば「お休み」中にためしにやることにした川柳づくりシリーズ。要するに階段のピクトグラム的な図の写真をお題にした毎朝一句ずつの川柳づくり。画像ありの正式なバージョンはラジオポトフのインスタグラムにきれいに見やすくまとまっていますが、文字だけで読むのがむしろ正式かもしれません。正式って?

深海の学習塾の経営者
すれちがいざまの同姓同名だ
スパイスをしおり代わりにするムード
いつまでもシカの話が終わらない
あまりにも反り返るので目を見ない
排水の音で枕が濡れている
注意せよ注意をせよと言うふたご
空中を歩いてからがソクラテス
両端が便利グッズになった祖父
白ヘビに聞いた話をひた隠す
手作りの古墳に着せる服を買う
横幅を部活動とは認めない
昔から歯の本数が変わらない
あそこから見えるここから見る景色
黒猫が埋まっていないそこの壁
動くのがめんどう空を動かそう
 ▲やりたいヴィジョンをやろうとしている感
竜はいてわたしはすこしいない町
矢印にしたがい事故を引き起こす
黒酢なき並行世界なにがある
矢印をもうひとつ書き足すとよい
開けてから知った未来のドアだった
左手のたちこめかたにセンス出す
待ちぶせの否定形 土佐犬を飼う
 ▲初の一字空け体験

これも「読み」ですか?(9月~)

■現代川柳の肝は「読み」にある!と思ってやりはじめた鑑賞シリーズ。個人的には作句より重要な気がするのでがんがんやりたいが、どの句を読むか選ぶのがけっこうむずい。現在までに9回。マガジンにまとめてあります。今後もやろう。

海馬万句合第二回(10月)

川柳作家の海馬さん、ゲスト選者の西脇祥貴さんによるネット句会。選評(リンク先後半に個別リンクあり)や、オンラインでのふりかえりトークなどからほとばしる現代川柳への興味喚起力がすごかった。ほかにも謎の衝動により自主的に全入選句にコメントを書いたり、海馬さん西脇さんをはじめいろんな方にいろんな「評」をもらったり、さまざまな初めての経験があり、現代川柳にいよいよ興味を持ちました。ラジオポトフの高澤さんが楽しそうに参加していたのもよかったですね。その後、ラジオポトフは現代川柳の「沼」にはまっていき……

123とてつもない5678
ずっと前ここには雨が降っていた

マダガスカル句会(11月)

■先述のササキリユウイチさんや、暮田真名さんが選者を務めたネット句会。高澤さんが大いに取り組んでいたのが印象的でした。このすこし後に行われた文学フリマの盛り上がりも印象に残ってます。

これアトムぎゅっとした砂のかたまり
 ▲選者の有無で変わる意識のことを考えたり
8が好きだった子猫を飼うまでは
 ▲同上
なんかきみたまごっぽいねしぐさとか
 ▲同上の同上

段図抄川柳(10月)

■先述の「お休み段図抄」では「川柳」という言葉は使わず(自信がなくて使えず)に575を書いてましたが、えーと、おれがやってるこれって、たぶん川柳………?だよな…………?…………もういいや川柳川柳!そう言っていこう!という、きわめて高度かつ綿密かつ冷静な計算のもと、はっきりと「川柳」を謳ってシリーズを仕切り直しました。ひきつづき毎朝一句のモーニングルーティーン。

陽光がクラスメイトの髪を切る
ちょうどいい間取りに海をとりいれる
眠らないゴルファーだった抱き枕
スペースにならべる用のわたしです
デザインを突きつめて猫抱きつめて
龍めいた気候すかさず龍をよぶ
見渡すと一面がタイの国会
 ▲国名のタイだと示したくて「国会」にした
塔の窓から見えるきょう立った塔
 ▲これ以降、句にこじつけた雑文も書くように
声が隅ずみまで届く東京だ
説明をせず立っていてもいい湯気
 ▲下5「もいい湯気」をOKにして気持ちが楽に
食べてすぐ寝ると切ない牛になる
駆け上がる(後略)
 ▲かけあがる/かっここうりゃく/かっことじ
おいマクドナルドをわざと残したな
 ▲上5。575システムへの信頼あふれる句
上に行く手段をえらぶための上
黒鍵をひくと白鍵あした鳴る
あふれてもいい泡だったからだから
 ▲下5で「意味の固定から逃げる」ことを発見
歯を白く強く大きく果てしなく
 ▲いいですね。そっちに行くんだ〜、という
見下している人見上げている人
 ▲鹿野司さんをイメージしていた
はい出てはいけないくらい深い沼

ぱぴ句会(10月~)

■ツイッター上でハイペースに続いている句会。十二音の句「ジュニーク」と絡めて投句募集していた回にふと参加させていただいた際に入選。景品で佐賀の川柳誌をいただきました。西沢葉火さんの選評がていねいでおもしろい。

紙コップだったからには

写真でラジオポトフ川柳(10月~)

■写真(画像)をお題としていた「段図抄川柳」の画像ストック切れにともない、新機軸として、ことし春頃にラジオポトフでやっていた写真企画「写真でラジオポトフ」の画像をお題に川柳を作っていくことにしました。ひきつづき毎朝1句ずつのモーニングルーティーン。いろいろ試しつつ、いま(2022年12月)も楽しく続いています。来年2023年はどうなる。

遠距離で見た歯近距離から見た歯
刑務所のどこかのどこかとりはずす
 ▲川柳ってそういうことじゃないよといま思う
何度聞きなおしてもオチが鬼太郎
漆黒を切り裂き余白をくり抜き
 ▲しっこくを/きりさきよはく/をくりぬき
白まくら逃げないうえにやわらかい
そのころはまだどんぐりがあったころ
 ▲言葉選びに意図がなさそうでいいし、ない
大きいの困る小さいの要らない
白っぽくしたいかわかる人である
目だったか耳だったかの人だった
革命がすんでからすみついた家
 ▲前半の呼応としての後半。ふ〜ん
横になるべく横になるべく横に
 ▲たまにこういうのがあるが、いまいち
あの舟の乗客たちのシルバニア
ねずみかなそこにいるのはいないのも
ともだちだよねと確認してしまう
 ▲「おいマクドナルド」と同じ考え方
野次馬でいい元気なら元気でね
ここは事故物件ここは給水所
 ▲熟語で句またがりしてよし!と決めたら楽に
歯にはえた歯にはえた歯にはえた歯に
 ▲たまにこういうのがあるが、いまいち
犬に月見せて月には犬見せて
 ▲実景?っていうやつ? 月食の日の話です
いい幅にはまった赤子光りだす
つめた距離とかさつめたい距離とかさ
ダルマ置きあるならすぐにでも置くさ
落とし穴からだした土あたたかい
 ▲自分的分類だと「意味の固定から逃げる」句
みてなにもかもなくしても大丈夫
八百万あぶない嘘をつくしぐさ
足元の自分の影はなんの影
富士山を浮かせて横にすべらせて
飛べだしてから歯ならびが気になって
きみがすきやっぱりきらいあいしてる
 ▲こういう雰囲気のやつもね、まあね
かたちだけでも飼っているから犬だ
 ▲暮田真名リスペクト
くまが出た村だ電球われる音
 ▲イメージ飛ばしすぎというか、勝手でしかない
ここからはあの人といけいきなさい
嘘でいい背中をかいてくれるなら
人体のはて当店のあるところ
8人で16種類たのむには
あらわないあらがわないといけないと
もう獣医にはなったから動物を
Y字路でしかこんな顔と会わない
豚肉にパン粉ストップ警察だ
いま猫がいやさっきあれいつだっけ
足よあすどこいくなにをしにどこに
短さをおまえは長さと言うきさま
すこしずつすこしずつ背が伸びていま
きのうより白いしあしたより白い
目がきみにささやくことはすべて嘘
 ▲自分の考えを書いてもおもしろくない例
もやもやを骨董品にくっつける
 ▲新鮮な作り方だった
かぎかっこ宇宙の端と端にある
さあ手と手つないで手と手と手と手と
 ▲たまにこういうのがあるが、いまいち
わたがしでいいならいいと言えばいい
生きている歯形描くうちわかるコツ
 ▲てんでだめ
針を抜き敬語で話かけている
みなさんの心の虎が逃げました
 ▲ふ〜ん
立体のわたしになってほほえんだ
宝石のとがったとこで怪我を負う
自治会に行ってくるよと霧になる
山頭火ドリンクバーで立ちすくむ
動物が月の明かりで菓子パンに
 ▲ん、ロマンチック!
誰しもが通常通り奇跡的
妖精は酢のすがたして豚と会う
 ▲石田柊馬リスペクト
ゴミの日に生まれてゴミの日に眠る
ダイイングメッセージでのマヨビーム
 ▲15/17文字が名詞なので良い
もうくまにあえないつらいくまいない
 ▲このひらがなは逃げだが、だめではない
夢のなかDIYが終わらない
 ▲よくないものをよくないまま出すという経験
これからのことを切り絵で示される
ひとつぶのお米が街にやってきた
ケルベロス相談できる人がいて
スラッシャー映画のロケ地弓道場
ゆるキャラの中で時計の音がする
はちのみつうまくいかないこともある

ラジオポトフ2022(12月)

■ラジオポトフのふたり&鳥原弓里江さんの3人で作った川柳のネットプリント。高澤さんが狂気の35句、鳥原さんが初挑戦の7句、今田は珠玉の14句および短すぎる小説、さらに《何笑ってんだかビーナスは二色刷り/小池正博》に対する一句評のような怪文書を書きました。以下、今田の句のみ。

真夜中に茄子が爆発する季節
十月の理由によって茄子が降る
翼竜が来なくて暇で植えた茄子
お母さんこれ丸善に置いてきて
 ▲まあこういうのもね、まあね
ひとまわり大きくて濃い茄子の影
帰りみち十二月から茄子ランプ
早朝の茄子に感情移入する
シーサーのテーマパークにひとりきり
春にしてシーサーとして君離れ
目を閉じてシーサー家族会議中
折り畳み式シーサーを折り畳む
噺家と向かい合わせに咲くシーサー
4時半のシーサー 夢の衢
 
▲よじはんの/しーさーゆめの/わかれみち
シーサーか、あるいはサンドウィッチマン
 ▲初めての読点経験

以上です。5千字。長いよ。このほかにも現代川柳を通じて考えたことはあれこれありますが、それはネットプリント「ラジオポトフ2022」を作った感想と絡めてまたいずれ書こうと思います。ほんとに書くかな?

では、良いお年を!


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