ササキリ ユウイチ

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川柳試論-暮田真名を読む【柳論】

句集『ふりょの星』刊行を記念して  暮田真名の第一句集『補遺』(私家版)の最初のページにあるこの句に翻弄されながら、連想の限りを尽くす一句評。第一句集の最初の句、この特別な句に評を捧げよう。  にしては長く、もはや一句評というのは仮面でしかなく、おそらく別の顔がある。暮田真名論か、あるいは一般の川柳に通ずる柳論か。果てしない注釈か。何はともあれ、川柳を愛するものとして、また応答する側も奇行に及びたい。-川柳はなぜ奇行に及ぶのか?  大まかにいえば、この試論は表現と定型に

    • 川柳句会ビー面 2024年10月

      匿名互評の川柳句会の選評と投句一覧。目次に無記名の句一覧があるため、無記名句一覧の仮想体験も可能。 曜日感覚ごと煮込んでくカレー 挿絵になって線から狂い咲く 髪をすく 隣の家は夜逃げした すごい無視おもわず窓は全開だ はじめまして湖沼ですよろしく 汐見先生、ザ、スーパーエクスペリメンタルマシーンヘッド 行列をだいすきになる風ふくよ オペ室の池でおどる子みな無効 アリの巣になります 敬具 夫より 飴色になるまで笑った海だった 波風が立たないためのエトセトラ

      • 川柳句会ビー面 2024年9月

        匿名互評の川柳句会の選評と投句一覧。目次に無記名の句一覧があるため、無記名句一覧の仮想体験も可能。(2024年9月参加者*ササキリユウイチ・スズキ皐月・公共プール・南雲ゆゆ・城崎ララ・太代祐一・西脇祥貴・雨月茄子春・小野寺里穂・黒澤多生、10人) 本当は一人もチャリで来なかった みなそこもまちがい電話に共鳴す 本当にきらいな人をすべる皿 南十字が狙うカニカマ 鳥貴族、星屑たちが、飲んでいる おれら死屍おれらルイルイ午后の浜辺に アニサキスのaiを発揮しているね

        • 川柳句会ビー面 2024年8月

          匿名互評の川柳句会の選評と投句一覧。目次に無記名の句一覧があるため、無記名句一覧の仮想体験も可能。(2024年9月参加者*ササキリユウイチ・スズキ皐月・公共プール・南雲ゆゆ・城崎ララ・太代祐一・西脇祥貴・雨月茄子春、8人) プラットホームにいたっていいか 紅葉と時代錯誤に言いたまえ 産声が待合室で身を晒す 落ちてるベロはしまっちゃおうね 蝋燭の炎に影のカワイサン 太陽も煮物も直視してはだめ 罪悪感でPUMAが煮える 最高のねぐせは麦の島である 待つ人が外す真

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          川柳句会ビー面 2024年7月

          匿名互評の川柳句会の選評と投句一覧。目次に無記名の句一覧があるため、無記名句一覧の仮想体験も可能。 素材のままの愛し方習う 絵にかいた寝首だったねケセラセラ 交際はしない台風だと思う 自殺してくれなくなったヴァイオリン 万国のかわいい皿よ団結せよ 親指の爪くっつけて生れる山 ローマのテラス詰めた枕のための風 皮膚の手前でたらスパ食べたい セルフィーの彼氏の髪が伸びている やさしさのない録画じっとする膝 面会はミモザ香るの止しなさい 宙返りまた別の扉を撮

          川柳句会ビー面 2024年7月

          川柳句会ビー面 2024年6月

          匿名互評の川柳句会の選評と投句一覧。目次に無記名の句一覧があるため、無記名句一覧の仮想体験も可能。 おい背景の家が伸びてる ハンカチは弁が立たない格子柄 災厄と名乗られあ、ですよね、ですです この道以外すべてが退路 メーデーに生まれてメーデー行った父 ふるまえばポピーポピーな事態です 人一人おさまるトート 惰性終戦 feedsmesomebrokenwingstosweepthosebakedupnarrativesaway 茎の向こうで目が醒めている ボ

          川柳句会ビー面 2024年6月

          川柳句会ビー面 2024年5月

          匿名互評の川柳句会の選評と投句一覧。目次に無記名の句一覧があるため、無記名句一覧の仮想体験も可能。 フェチ過ぎた すてられた間たちの為のクォ・ヴァディス はい誤謬発見お前ん家江戸城 うれしくて揉みしだかれて初日の出 恐竜の虫歯は今も照れている 手がセレブなの 姪っ子を社会のひじと罵った 名付けを逃れて仏滅を掘る セクシーあんたたちセクシー ふざけよう(もえよ肺! もえよすずしく!) どれを選んでも花の手、掴めない 誓約も石の仲間と言うけれど 冥土の土

          川柳句会ビー面 2024年5月

          川柳句会ビー面 2024年4月

          匿名互評の川柳句会の選評と投句一覧。目次に無記名の句一覧があるため、無記名句一覧の仮想体験も可能。 春って躍るわたしの島かぴかぴゆるしえないくちびる 芥場の条件に鏡花を付せば なけなしの遺跡を持って帰りたい 時代のうねりで米を研ぐ どうしても主任の子機を使いたい 白波の最初のゆらぎを語り継ぐ 警察が来て野球部に当たりだす どこまでも一人の同じ屋根の下 ひとつの鏡ふたつの薊 返せわたしの頭の余白 こうぜんの秘密をぼくらもひろめよう 打撲傷みちのくの荷のほ

          川柳句会ビー面 2024年4月

          川柳句会ビー面 2024年3月

          匿名互評の川柳句会の選評と投句一覧。目次に無記名の句一覧があるため、無記名句一覧の仮想体験も可能。 燃え盛るみらいてんでんこ鬼ごっこ あくりょくをきたえつづけて占い師 二十指のスルメ化現象待ったなし 枯れ草のレク係ならとんそうす おばけには見えるあなたも泣いている     を透明と呼ぶ日のミシン 訓読はんこみつばち由来 募金箱は透けている僕が喉を鳴らす わたしに見えるあなたに黒を塗る オレンジとラメに生まれた三姉妹 傘寿でも陰キャピースが治らない 語り

          川柳句会ビー面 2024年3月

          川柳句会ビー面 2024年2月

          匿名互評の川柳句会の選評と投句一覧。目次に無記名の句一覧があるため、無記名句一覧の仮想体験も可能。 おじゃる丸。過払いだっピ。返すっピ。 少年の素振りに据えてゆく頭 双絲の先で狐に当たる 雪舟とイソジンが闘った橋 ピースオブマイハートにも生きる罪 青色の魚の素を入れましょう 募集 河童は物だ質量だ 奈良の鹿は火を忘れない いつだってソーラン節でお湯わかす まともな日の自分km/h 木の卵あの滝壺に浸していたの きみもウォルト・ディズニーになれる どこ

          川柳句会ビー面 2024年2月

          【句会報】生榊句会、於:京都、泥書房、2024/1/13

          2024年1月13日土曜日 「生榊(生きている榊陽子に会いましょう)句会」 於:京都、泥書房 参加者:榊陽子、兵頭全郎、まつりぺきん、中山奈々、山本伊等、小野寺里穂、西脇祥貴、ササキリユウイチ 題「誓い(画鋲の口移し)/榊陽子」 新しいポッキー様式  /まつりぺきん 1点 コーラスは優しく思い出の死刑  /榊陽子 2点 ウエディングケーキの護符を剥がせない  /兵頭全郎 1点 ミロのヴィーナスが画鋲を欲しがって  /中山奈々  くちびるの説明しているねこの発疹  /山本伊

          【句会報】生榊句会、於:京都、泥書房、2024/1/13

          川柳句会ビー面 2024年1月

          匿名互評の川柳句会の選評と投句一覧。目次に無記名の句一覧があるため、無記名句一覧の仮想体験も可能。 ビー玉に教えを乞うたお辞儀です じょわじょわの口のまんまで観覧車 スレとズレ隙間を縫って泳ぐ地図 3分後カップ麺は空を知る 静脈の柱がトルマリンブルー 信号のナットはちょうど鰤に似て 重なった家家あいつよりかぶく 亻で桃の缶詰め開いた夜 せえので動く 生きてるならば ぼくたちはひかりがすきで困ってる 象だけでこんなにお墓を建てたんだね レモン4個分のモン

          川柳句会ビー面 2024年1月

          川柳句会ビー面 2023年12月

          匿名互評の川柳句会の選評と投句一覧。目次に無記名の句一覧があるため、無記名句一覧の仮想体験も可能。 はんたいはんたいあなたのはんたいへん 空港を減らしても眠れない夜 ミナミコアリクイに背中を掻いてほしい時もあるし つけおきで誕生日がぶれる 胸元に蛸がしまってある喪服 同じ動きと と ととと フレーム外  へ どなたにも固結び固結び。いいね。 昼なのに砂で作った電車がいくよ 胃袋を掴むそれから みぎ ひだり のど飴の駐車技術も偏れば 文中にない鱗で応えなさ

          川柳句会ビー面 2023年12月

          2023年のササキリを概観せよ

          2023年回顧 2月。このnoteアカウントでも公開している、私ササキリが催している川柳句会ビー面(川柳のオンライン上での互評句会、選評を全公開していることを特徴としている。読むと、川柳が読める)は、22年1月から始めた。2023年のはじまりは、川柳句会ビー面の2年目のスタートだった。「【簡単】川柳の場のつくりかた【レシピ】」では、川柳をつくる西脇祥貴氏(川柳句会ビー面の初期メンバーでもある)とともに、とても実務的な川柳を続ける方法について書いた。 3月。郡司和斗氏と、川

          2023年のササキリを概観せよ

          『飽くなき予報』のあとがき【あとがき、予備知識】

          予報が貴方に意識させる光景は、蓋然性が加わった未来の光景だ。このばあい、蓋然性の大小についてが気にかけられることはあまりない。素朴な、思慮の足りない、短絡的で、愚かなプロセスによって出力された蓋然性であってもかまわない。蓋然性は、あたえられるかどうかの二者択一であってもいい。光景はすでに事後的。筆記が貴方に賜予する光景も事後的に報じられている。命名も改名も襲名も予め排除しておいた。寵愛のなかで栄えていたときがほんとうはいつだったのか、はどうでもいい。ああ、いま、時間はおいとい

          『飽くなき予報』のあとがき【あとがき、予備知識】

          川柳句会ビー面 2023年11月

          匿名互評の川柳句会の選評と投句一覧。目次に無記名の句一覧があるため、無記名句一覧の仮想体験も可能。 人生のそとがわに待つおまんじゅう 人生のそとがわとなると死後と生まれる前とある。「待つ」という言葉から死後の気がしてくる。死後に待つおまんじゅう。なんだか大きい気がしてくる。ハッピーだ。 ──────スズキ皐月  「人生のそとがわ」というちょうどよい詩性、そこで待ち構える「おまんじゅう」という存在がゆるキャラのように微笑んでいる。 ──────小野寺里穂   人生のそとがわを

          川柳句会ビー面 2023年11月