川柳句会ビー面 2024年6月

匿名互評の川柳句会の選評と投句一覧。目次に無記名の句一覧があるため、無記名句一覧の仮想体験も可能。

  1. おい背景の家が伸びてる

  2. ハンカチは弁が立たない格子柄

  3. 災厄と名乗られあ、ですよね、ですです

  4. この道以外すべてが退路

  5. メーデーに生まれてメーデー行った父

  6. ふるまえばポピーポピーな事態です

  7. 人一人おさまるトート

  8. 惰性終戦 feedsmesomebrokenwingstosweepthosebakedupnarrativesaway

  9. 茎の向こうで目が醒めている

  10. ボディ・アンド・水平線の再編成

  11. 「上品」が大塚愛のヒト言葉

  12. 揉めているミニマリストの相撲部屋

  13. 肩こりに参っちまった紅しょうが

  14. ショッパー五つ、夕食探し、控え室。

  15. どもる思考きらきらひかるやり直し

  16. 我が同志ちまたのべろはぬいたかね

  17. 全力ぶりっ子は罰ゲームじゃない

  18. 地につける足がないのは誇らしい

  19. 祝祭に間に合うために下る丘

  20. 子の器かわいいね海に逃がしちゃお

  21. 面の皮剥ぎ焼いていくピザ

  22. 撃ち落とした龍のロンダリング痕

  23. 掃除機もある種の乳母と言うわけか

  24. 間引かれたわたしの目玉怒鳴らない

  25. 余裕のASMRをシャクシャクと聴けろ

  26. 木彫りの熊本県はこうだよ

  27. 泥だけど松葉杖には借りがある

  28. 雪国を抜けてみては いかがですか

  29. 認めにCrew夏可視がりに

  30. 自分からちぎれてくれてありがとう


おい背景の家が伸びてる

なんか川柳であまり見ない声色をしていると感じる。歯磨きのときにえずく昔ながらのおっちゃんみたいな声。「おい」で始まって、「家」(の寸法?が変化するところ)に大工さんっぽい要素があるからかな。おいはいけい、のリズムも気持ちいいですよね。おいはいけいのい、までテンポよく聞ける。「背景の家」、これありますよね。写真の補正したら背景が伸びちゃうやつ。話し言葉から川柳を作るの僕も好き。お気に入りの句になりそう。
────────雨月茄子春
アリス? アリス撮ってて、アリスが伸びなきゃいけないのに、後ろの家ばっか伸びててあわててるディレクターさんのぼやきのよう。伸びてるは状態ではなく、動作と読みたいですね。
────────西脇祥貴

ハンカチは弁が立たない格子柄

手に持っているハンカチを指してだと思うんだけど、ハンカチ一般の話っぽくなってるのが難しいような。でもこういう言い方いいですよね。昔のコミックにありそう。ヤンキーがヒロインに言い負かされてキーって怒るんだけど、喋りが苦手だからハンカチ噛んで。そのハンカチを見てぽつりと「弁が立たない格子柄」ってポエミーに思うわけだよね。木枯らしが背景に吹き過ぎたりしてね。
────────雨月茄子春

災厄と名乗られあ、ですよね、ですです

災厄と不意に遭遇した人のリアクションがあまりにもコテコテすぎる気もしたけど笑ったので並選を入れた。出会った相手が災厄なのが良くて、姿かたちのわからない災厄にも「あ、ですよね、ですです」みたいな反応をしてしまう人間のダメダメさが良く出ていると思う。
────────スズキ皐月
多くの人が出入りする。うっすら知らない人とも繋がっている。「噂は聞いているよ」などと返したいところ、まあ、結局は食い気味の「あ、ですよね」で返してしまうんだよな。災厄ってたぶん「まだおもしろい」に入ると思う。災厄って半値なだけで一生おもしろいのに、「ですです」が最高級のキモさを提供してくれている。
────────ササキリ ユウイチ
継続はコミュ力なり
────────嘔吐彗星
「ですです」って九州弁らしいですね。街なかでちょこちょこ耳にします。「名乗られあ」がちょっと面白がれました。「さんかれあ」みたいな。おもしろかったんですが、リズムが視覚で受ける印象と比べて悪いんじゃないかなという気がしました。
────────雨月茄子春
ですよねー
────────西脇祥貴

この道以外すべてが退路

かっこいい。「この」がいい。後には退けない怖さや強迫感もあるけれど、この道と言ったことでそこに立つ作中主体の強さが出ていると思う。
────────城崎ララ
それは思い込みだよと言ってあげたい。言い切りが気持ちよくきまっていて、思わず肯定したくなる気持ちもわかる。
────────小野寺里穂
クソデカ人生訓すぎた
────────嘔吐彗星
プロレスラーの名言集にありそう。ちょっと真っすぐすぎるかな。
────────雨月茄子春
安倍内閣のスローガンみたい(「この道しかない」)。ねらってやったにしてはそのまま重なりすぎるので、うがちには取りにくいか。もし素直な決意表明なのなら、そこまで思いつめないでよ。ちょっとお茶しよ?
────────西脇祥貴

メーデーに生まれてメーデー行った父

直感で「帰ってこなかったんだな」と思った。それはこの句に出てくる動詞の「生まれるー死ぬ」「行くー帰る」のより重要な片側が欠落してるからだろう。その欠落が意図的かどうかはわからない。それでもこの句の暗い雰囲気は物事の始点だけを見せたことによるのだと思う。「メーデー」の歴史的かつ政治的な意味の重さもその暗さに影響してるだろう。暗い深みが好みで特選にした。
────────スズキ皐月
こういう「言っただけ」の川柳を掘っていきたい気持ちがあります。ただごと句というか。父がなんか置きにいったなと思ってしまった。
────────雨月茄子春
そのまま読みになるかもしれない、と思いつつ、生まれた日と行った日が同じ、しかも家族に連れられてでなく自分の意志で行ったとすればおもしろいです。誕生仏の天上天下唯我独尊とか、両津勘吉が産湯に浸かったまま猪鹿蝶そろえてた、みたいな超人エピソードのより庶民派版と言えなくもない。ただこれはだいぶ寄り添った読み。家族史の記録句としてはかなり説明のみになっているし、ふたつ目のメーデー後に助詞が無いのがどうしても気になる。読めば読むほどメーデーが浮いてくるのはむしろ、メーデーがその下に何かを隠しているように見えておもしろいけど、本意では無いと思う。あるいはメーデーそのものが細ってしまったことへの皮肉とか? にしても、うーん、もう一声ほしい。
────────西脇祥貴

ふるまえばポピーポピーな事態です

かわいい感じは出せてると思います。アリスSOSのことを思い出しました。きんぎょ注意報も。なんか不思議とレトロですね。アニソンぽい。
────────雨月茄子春
です、がな……。まとめにかかってるな、と……。ふるまえばも目的語がないので空回りぎみだし、ポピーポピーも語感はいいけど(オール阪神さんですか、と思ったもののたぶんビー面の世代の人で阪神さんのCM知ってる人いない、のでは?)ファンシーぼんやりして見えてしまう。ポピーポピーが目立ちそうなのに、埋もれてしまってるような。
────────西脇祥貴

人一人おさまるトート

好きだ〜!トートって結構たくさんものが入るけど、特にノートとか縦長のものが収まるのがいい。リュックやキャリーほどではないけど、自分にとって大事にしたいものを最低限保って歩くにはちょうどいい。おまけに、トートバッグって持ち歩くという意識が強い気がする、体に密着させるからかなあ。自分にとっての大事なもの、自分自身がぴったり収まって、しかも持ち歩ける。その収まり具合がいい句。
────────城崎ララ
あー悔しいけどおもしろい!人ー人・トートですよね。「おさまる」が邪魔してなくていいですね。
────────雨月茄子春
ジュニークって確かに家具っぽいな、って思ってた、デザイナー家具!
────────西脇祥貴
この程度の、既出に決まっている気付きは事前にツイートチェックをする。たくさんヒットしたわりにネタの自覚に欠けているものがほとんどなのは意外だった。この句に生産者の顔はなく、配達員の顔だけがある。
────────嘔吐彗星

惰性終戦 feedsmesomebrokenwingstosweepthosebakedupnarrativesaway

惰性的に終戦に向かうのか、「惰性」という名の戦争を終わらせるのか。四字熟語というものが省略でできているから、解釈が開ければ誤解も招けるんだということ。ひと続きの英文にスペースを入れて一言一句区切っていく作業には、"その文を読もうとしている自分"を意識するだけの長さがある。575の川柳よりかは幾分の時間と慣れない労力をかけて現れる文章が、私に何をもたらすというのか、何ももたらさないかもしれないというのに、判断する前に読まされる。読めと迫られず、しかし有無を言わさず、私は自らこの句を読んだ。その事実が残る。火の輪を作るときには端から端まで途切れずに油を染み込ませること。
────────嘔吐彗星
ノリに乗ってるな、と思った。惰性終戦、SF小説っぽくて良いです。伊藤計劃とか三体とかに出てきてもおかしくない用語で良いね!西尾維新の戯言シリーズの二つ名っぽさがかっこいい。でもいかんせん長すぎる!!!!!!→数日後→だんだんよく見えてきた。もしかしてルビみたいなことなのかな。ネイティブに読めば17音か77で読めたりする?意味が結構かっちょいい。こんがり焼けた物語をどっかにやっちまうためのぶっ壊れた羽をくれよ。スペースなしで詰めたことで怨嗟感が出ていいかも。
────────雨月茄子春
川柳で横スクロールさせられたのはじめて。メディアの様式に規定される川柳、いや川柳がメディアの様式に規定される事象かな、に最近興味があったので目に留まりました。最初横スクロールできること気が付いてなくて、英語の途中で終わってるの何でなんやろ?って思ってしまったのがもったいないところ。例えば横長の句集とか作ってみたら面白いだろうか?……でも、横スクロールさせられること、従来の川柳を読む場面に存在しなかった行為を生み出してる攻めた姿勢も生かしたいし、ただ形が風変わりな句集だけでは物足りないですね。
────────南雲ゆゆ
我欲喰壊翼(日本人がつくる偽の中国語)とかは、とはいえ、やっぱり自らの羽を喰らうんだろうなと思ったりする。焼き立てナラティブはおかしさを感じる(焼き立てという訳の雰囲気が適切かはわからないけど、とはいえ前半のポエティックな雰囲気とははっきり違う熟語なのはそう間違ってないんじゃないか、わからんけど)。で、前半かっこいいんだけど、後半とぼてるんだけどちょっと切実って感じ。四字の漢字の後に、漢字に対する外国語がやってくるからなのか、惰性終戦に満足できなかった別の存在が惰性終戦じゃない(開戦か、長引かせるか、惰性の対義語終戦かなんだけど、だとすると開戦な気がする)ものをやりにきたわけ、と読むことになる。ゆえにこの句は宣戦布告である。
────────ササキリ ユウイチ
中央本線の句にいまならどう返事するかな+初心忘るべからず
────────西脇祥貴

茎の向こうで目が醒めている

美しい句。茎の向こうで目が醒めている。すがすがしい。勇気をもらえる。
────────雨月茄子春
茎の素材感をどう設定するかで光景がけっこう変わりそう。植物、肉、金属……。
────────西脇祥貴

ボディ・アンド・水平線の再編成

とてもいい川柳だと感じた。〜か〜か、の対句の構文の川柳もよくなりやすい。ポケットモンスターの後の大喜利みたいな構文とか川柳には長すぎる。ハリーポッターの副題みたいなのもなんだか……。どうするか。これである。ひとまず「ナイフの傷」くらいは思い出させておくけど、そのうちその必要もなくなると思う。面白い。何年も何年も残って、インスピレーションを与えてほしい。
────────ササキリ ユウイチ
Body & SoulのSまで踏襲したのは良いと思う。より難しい大喜利にチャレンジした気概を買いたい。でも、僕はもう少し「意味」を求めてしまったのが句にとってのアンラッキーだった。
────────雨月茄子春
ボディをどうしても人体ではじめ連想すると、垂直対水平という配置、しかも人体というコスモ対自然という対置もあって結構ラディカルなぶつけ方だなあと。
────────西脇祥貴

「上品」が大塚愛のヒト言葉

人名入りの川柳は興味の下限が割れやすくて無視することが多い。この句も例によって大塚愛から掘り下げる気にはならなかった。人名を人物の背景と切り離して、つまり名前を表記や音や意味に分解して句のパーツにしているかという線は一応検討したけどなさそうだった。大塚愛以外の部分で読みの回路は残るけど、大塚愛という人にもとづく、大塚愛抜きには作られなかった川柳である可能性のほうが高い。であれば大塚愛をよく知らないし知ろうともしない読み手は退場せざるをえない、というよりあらかじめ入場不可の句になる。(念のため、人名入りでも読ませる川柳はあると思ってる。名前を分解して部品化する以外にも、作者の提示の仕方によっては無縁の読者にも連絡できる。例えば西脇祥貴が長期継続している中島みゆき句はどうか。読み手にとって中島みゆきが記号に過ぎないほど作者の動機は謎として膨らみ、時を経るにつれ無視できないまでに迫り出してくる。このように人名の反復が可読域を押し広げてしまうケースはあるけれど、選句時点で作者が匿名かつ投句がシャッフルされる句会という条件下では、人名入り川柳を置く/読むことは双方にとってそれなりにハードモードになる)
────────嘔吐彗星
大塚愛をモノに貶めて「上品」と言うグロさがありますね。露悪上級で、好きな人は好きかもだけど僕はちょっと首傾げちゃったかな。
────────雨月茄子春
大塚愛はなんだと思われてるんだろうってそういえばときどき思うことあったな
────────西脇祥貴
ヒト言葉ってなに、猿真似みたいな?と思った。すると、大塚愛のわけわからない揶揄(もはやそれは揶揄なの?)になるんだけど、なんなの?
────────ササキリ ユウイチ
ネタツイとしては嫌いじゃないけど
────────公共プール

揉めているミニマリストの相撲部屋

ミニマリストって比較的争いを避けて生きていそうなのに揉めている。しかも相撲部屋で。親方がミニマリスト? ミニマリストに親方が務まるのだろうか? 心配しちゃう。
────────太代祐一
ネタツイや洒落が好きなんだね。おれもすきやで。
────────公共プール
ミニマリストは揉めてなさそう、相撲取りはミニマリストじゃなさそう、という除外の先入観で支えている。m音のおしくらまんじゅうも律儀なだけに、出来上がりの既視感が少し気になった。
────────ー
「揉む」と「相撲」は噛み合ってるし、間にミニマリストを挟んでいるのも良いと思う。ちょっと映像が浮かばなくて、この句はそれがもったいない気がする。
────────雨月茄子春

肩こりに参っちまった紅しょうが

夜更かしの好きなフクロウ、本当の気持ち隠しているカメレオン、朝寝坊のニワトリ、徹夜明けの赤目のウサギ、誰とでもうまくやれるコウモリ。そして、肩こりに参っちまった紅しょうが。「参っちまった」に加えて「しょうが」が「~でしょうが!」という向こう見ずな発話者像を生んでいて調和していると思う。
────────雨月茄子春
"っちまった"にササキリみを感じるとして、ってほんとササキリさんシグネチャーの定着ぶりははんぱないですね。これでササキリさんじゃなかったとしても、もうそろそろ「ササキリさんの引力からどう逃れるか」という視点に切り替えられそうなほどの安定感です。ごめんなさいこの句の話。紅しょうが終わりがいいです。これは前から順に紅しょうがに向けて修飾する読みでいいと思うんですけど、「肩こり」を出していることで、細切りの集合としての紅しょうがでなく、あの細切りのうちの一本を想起させるのがおもしろポイント。一本だけにこんな意識向けること、日常ないですもん。しかもそれがどういう経緯からだか肩こりを経験する羽目になり、つまりは加工後初めてじぶんに肩のあることを認識し、「やれやれ」、ってシーンを切り取った句というわけ。共感はもちろん深いし、それをまさか生きているうちに紅しょうがと共有できようとは、というミラクルを生活に与えてくれる一句。この気づきはデカい。はじめ予選も入れてなかったけど、土壇場で逆転並選入れます。
────────西脇祥貴
つぶやきですよね。川柳ですか?いや、つぶやきでしょうが
────────嘔吐彗星
私は、今回の句会としては点を入れられないんだけど、この句のつくりが好きである。教科書にのるなら、まずはこの方向がいいと思うの。ちょうど擬人法を教えるときなんだけど、擬人法の効果が先生も生徒もうまく説明できない感じ。だけど、もしうまく説明できたら教科書にのる。とかいっているけど、この句は擬人法としての効果を、教科書に足る分には奏していないと思う。これが川柳としての良さ。川柳が川柳のよさとして教科書にのることは難しいと思う。だからこの句は乗らない。そういう微妙なつけものが川柳にはたくさんある(例えば、川合大祐は漬物みたいなものに異常なほど信頼をおいていると思う)。
────────ササキリ ユウイチ

ショッパー五つ、夕食探し、控え室。

日記のメモめいた雰囲気。エコバッグではなく「ショッパー」、「控え室」のあたりで日常性から微妙にずれている。なんらかの連続性から切り取られてはいるが、任意の感情や物語を投影するには断片的すぎて無理がある。シチュエーションを展開して読むことにさして興味のない私には、その無用さに徹したところこそがよく見える。聞き手にとって無用だとしても、そもそも聞き手が必要とされていたか。淡々と修飾のない記述にとどめていることでリミナリティを感じられるのもいい。ただしこの句も私なら連作に入れて、一句出しはしなかっただろう。「ショッパー五つ」の部分が読みを開きやすそうなので句会に送り出したと憶測する。
────────嘔吐彗星
蛍光灯が暗い部屋って思いました。「夕食探し」って悲しいですね。
────────雨月茄子春
五つ、の異常性があとをぜんぶおかしくしている。収まりがいいので予選にしましたが、この効果の大きさはかなり気になりました。
────────西脇祥貴

どもる思考きらきらひかるやり直し

自信のある句だ。句全体の印象を持っていく既存フレーズ「きらきらひかる」で中七を使い切っている。その必然性はあるのか、こちらもきらきら目をひからせてみる。なるほど、きらきらがポジティブな事柄ではなく不順にかかる効果にずらされているところに読み取れそうだ。きらきらしたさにどもり直してるまである。初読ではきらきらの使い勝手に警戒したが、いい仕事をしてるんじゃないか。
────────嘔吐彗星
ブツ切りに見えて、下手っぽい。ヘタウマってあるけど、ううん、これは下手っぽい。
────────雨月茄子春

我が同志ちまたのべろはぬいたかね

「巷」っておもしろいのに使いづらいですよね。「ちまた」にすると「巷」感無くなるし。いっそ全部ひらがなにしたら、「ちまた」のもったいなさも軽減できるかもなと思ったりしました。政治皮肉っぽさ出てる。
────────雨月茄子春
いたって独裁なのがストレートに決まりすぎているような。でもちまたとかぬいたって漢字で書かないし、舌じゃ無くてべろっていうこの知能の度合いにはこわいなにかがある
────────西脇祥貴
都知事選が近いこともあり、政治的な句として読んだ。
────────小野寺里穂

全力ぶりっ子は罰ゲームじゃない

ぶりっ子にたいするコンテクストが重い読者からすると、あえて川柳に言わせるまでもないことだった。ぶりっ子は職能である。「全力」「罰」の語の強さに比べて主張が変哲もなく、拍子抜けした。
────────嘔吐彗星
ではなんなのか、というゴーギャンばりの問いかけをはらんだ句。
────────西脇祥貴
雨月茄子春は宮地すみれさんを応援しています。
────────雨月茄子春

地につける足がないのは誇らしい

シンプルな構成で僕は好きです。ビー面にときどきあるシンプルな句、場の地場もあって際立って見えるんですよね。
────────雨月茄子春
死後、おばけになった者が宙に浮かびながら言っているのだろうか。自分自身のことを「誇らしい」というのは、強がっているように聞こえなくもない。先月からおばけに対する感度が高くなっているが、このおばけはいい淀みがなく、文章がきれい。そこからどんなおばけなのか、性格も伝わってくるようだ。
────────小野寺里穂
誇らしい、だけなんか引っかかるな。
────────西脇祥貴

祝祭に間に合うために下る丘

メロスみたいなスケール感で読むような人もいるかもしれないけど。わたしは子供のときだったらそうやって読んだかもしれない。今はちがう。あえて言うと、大人になると、ハグれることができる。ハグれて、まあ大丈夫でしょう、なんて言いながら寄り道をしたり、わざわざこんなところまで来てしまったりする。ああ、やばい、絶対遅刻はするけど、とはいえ行くことはできる、という段階になる。こうしたハグれは、わたしは大人になるまで理解できなかった。むろん、ここでは大人はポジティブな意味でつかっている。
────────ササキリ ユウイチ
「祝祭」は使われ過ぎた気がする。良い言葉なんだけど。
────────雨月茄子春
目的はいいんだけど、下る丘がそれに対して素直すぎるような。
────────西脇祥貴

子の器かわいいね海に逃がしちゃお

まず「子」という言い方。自分の子供について第三者に話すとき、子と呼ぶのは恣意性を感じる。あえて名前や息子/娘とは呼ばないという選択。肯定できる。また、皿や食器ではなく「器」と呼ぶのは、陶芸作家の作品だからだろうか。そこに続くのはありきたりとも思える「かわいい」。そして海への飛躍。句のダイナミズムに揺さぶられる。器は海へ帰りたかったのか。語り手はこっそり海に流すことで、なんらかの許しを乞うているのか。内容は寓話のようでもあるが、文末の軽さがなんとも不思議な感じを残す。器が泳ぐ。
────────小野寺里穂
〈子供用自転車とてもかわいいね、子供用自転車はよいもの 五島諭〉を川柳の大きさにしたらこうなるのかな。過不足のない句、いいね。逃がしちゃお。
────────雨月茄子春
thisのこのと同じ音で子にしてしまう、その発想があるならきっと子は個にも転じうるし海に逃がしちゃうのには逃がす者のエゴもはらんでいる。
────────西脇祥貴

面の皮剥ぎ焼いていくピザ

初読でかなり成功している句だと思ったが、他の句でアンパンマンを連想させる句があり、それを読むと突飛なことでもないなと思い至った。他の回なら特選でとっていたと思う。今回、2句とも同じ人がアンパンマンの世界を発展させて川柳にしているとしたら、それは野心的な試みだと思う。
────────小野寺里穂
怒りの川柳で比較すると3より一筋縄で、24より直接行動的。イントネーションがいい。七七かつ語尾が「ぎ」と「ザ」の濁音でリズムもいい。はじめは意味がわかりやすくてスルーしたけど、怒りの出力をシンプルな作業と割り切って音で要領よく回転させてるところで面白くなってきた。爪痕まで焼き上がってる。追記:ススキノ頭部切断事件の続きを読んでから、この評の評が書けるか考えている。
────────嘔吐彗星
キッチン句、〈母にはならんと菜箸で描く 小野寺里穂〉、のセピアがかった怖さありますね。
────────雨月茄子春
面の皮そのもののかたちしたピザね。
────────西脇祥貴

撃ち落とした龍のロンダリング痕

ロンダリングってどうしても学歴に引っ張られちゃうからそう読むけど、龍でも学歴コンプみたいなのあるんだなってシュンとしちゃった。
────────雨月茄子春
あと一歩のような気がする。
────────小野寺里穂
やっぱり戦争のニュース見ててそれをなしにはできなくて。
────────西脇祥貴

掃除機もある種の乳母と言うわけか

僕が偏屈なだけかもだけど、「ある種の」と言われてしまうと「どの種の?」と尋ねたくなる。それでも、この句の「ある種の」には納得させられちゃった。下五の口調のせいだと思う。
────────太代祐一
まず掃除機と乳母車を押す姿勢が似ている前置きが句より前にあって、定型上の都合で乳母の「車」が省略されたことで掃除機が擬人化を被っている。575に従って音数を削りながらも読みの回路は複雑化している、ここに自覚的な定型への応酬を見て取れるのがいい。内容に近付いてみると性役割の再生産を認める独白とも読めるが、どうだろう。「というわけか」なら内向的な了解に見えたし、初めはそう読んだ。しかし「い」ではなく「言」であり、他者の考えをパラフレーズして(もしかすると投げ返して)いる可能性もある。だとすれば納得や確認の終助詞に見えた「か」が他責的な響きを帯びてくる。まぁ漢字一点を根拠にメタ読みの注意を促されているとまで言えるかは正直微妙なところだけど、諷刺の視野を広めにとっておいたほうがよさそうな句ではある。
────────嘔吐彗星
こういう、分析キャラの口調でぜんぜん的外れなこと言うのすごくいい。感覚は的外れって思うんだけど、意外とよく考えると掃除機もある種の乳母だなって気がしてきて不思議。掃除機に育てられたようなもんですねそういわれてみると。
────────雨月茄子春
意味がわからないが面白かった。何か意味が通るならそこまで自分の考えがいたらなくて申し訳ないが、「~もある種の〇〇と言うわけか」という構文ももったいぶっていて、一文の無意味さをサポートしている気がする。ビー面では構文の仰々しさと意味内容の無意味さで面白さを出す句が毎月あるが、これもそれの一種だと思った。
────────スズキ皐月
これはいい気づきでは。前々回の南雲さんの「どうしても主任の子機を使いたい」のような、日常から出たものが行き過ぎて、非日常を匂わせる(掃除機の擬人化?)おもしろさがあります。現代にフィットした番傘調ってこの辺なのかも。あー、でもだとすれば、掃除機を乳母に擬するってそれほど現代的じゃないか。掃除機って最近できたばかりのものでもないし。擬番傘調くらいなのかな。でも掃除機がロボット掃除機なら現代的か。でもそう言い切れるヒントも無いし、かえって言い切ると狙いすぎていやらしくなるかも。とすれば「ある種の」がわりと効いているのかも。ちなみに西脇は掃除機の音をまっさきに思い出したので、子守唄がわりのクリーナーノイズのことかな、と思いました。
────────西脇祥貴

間引かれたわたしの目玉怒鳴らない

アンガーマネジメントシリーズ。危害で応じることなく深く後悔させる。
────────嘔吐彗星
ゲ謎がプライムにあるから……?ブツ切り感があって乗れへんかった。
────────雨月茄子春
怒鳴らないとそれ以前の切れ方が気になる
────────西脇祥貴

余裕のASMRをシャクシャクと聴けろ

どうぶつの森の口調でいいですね。こういうのを恐れずに使いたいと思いました。
────────雨月茄子春
進行方向別通行区分。は置いといて、余裕のASMRの音がシャクシャクはちょっとそのまますぎない? 聴けろはわりと好きなんだけどな。
────────西脇祥貴

木彫りの熊本県はこうだよ

熊本県のかたちを調べた句。やすりをかけて木彫りの手触りを思い出す。実際に句の景を見たくなる句っていい句だな〜とわたしは思っています
────────城崎ララ
さらっとポップな顔してるけど、結構高度なことが行われてる気がする。まず木彫り→熊本県は「木彫りの熊」をハブにしてつながっているけれど、いや、なんだよ、木彫りの熊をハブにしてって。もう相当おもしろいよ。おもしろいし、たしかレーモン・ルーセル御大が小説書く時の連想の飛ばし方ってこんなだった気がする。由緒正しい飛ばし。そして飛び先が熊本県という、物質なんだけどでかすぎて概念とも思えるところなのがいい。想像がつかない。つかないくせに、「こうだよ」。どうだよ。と本来なるはずが、おそらく読み手十人十色の木彫りの熊本県を頭に浮かべているはず。この「こう」の生かし方はまあ高度なんではないでしょうか。前のガイドがいいと指示代名詞も生きるんですね。順々に笑いに火が点いていく感じ、好きです!
────────西脇祥貴
作ってほしい。玄関の小スペースにおきたいし、リサイクルショップにたくさんあってほしい
────────公共プール
一読で木製のレリーフマップを想像できてしまったのがあっけなかった。立ち戻って読み込むとしたら「木彫りの熊」と「木彫りの熊本県」のあいだに生じている干渉だけど、もしかして木彫りの熊が全身を彫り出されているように、熊本県も地表だけでなく地盤まで彫り出してみせている?それならだいぶ面白くなってくる。地下のどのあたりまでを熊本県に含むのか、私見の範囲も気になるし、木彫りでどこまで表現できるのかも謎だし。この筋を取りたいけど、するとやはり「こうだよ」の差し出し方が問題になってくる。ごく軽い口語で披露しておきながら想像し難い「木彫りの熊本県の全貌」の前で途方に暮れさせるには、レリーフマップが反射的に当て嵌めやすすぎて避けきれない。既読スルー性とでもいうか、平凡だけど明快な即答になってしまう読みをどう切り離すかが難しいケースだとは思うものの、句会じゃなければ前のめりに読まなかったのもたしか。
────────嘔吐彗星
木彫りの熊っておめでたくて好きです。
────────雨月茄子春

泥だけど松葉杖には借りがある

松葉杖には借りがあるよ。泥に限らずね。
────────太代祐一
これは逸話を感じさせる……物語読み好きホイホイですね。泥だけど、というまさかの主体「泥」スタート。舟崎克彦さんの『トンカチと花将軍』(岩波少年文庫。平易なことば・平易な展開でまじおもろいし、出てくるキャラみんな好きになれる。未読の方ぜひ)にしゃべる水たまりが出て来て、こいつの意識はどういう範囲までで限定されるんだろう、なんてつまらんことをかんがえたことがありますが、泥もあまりに不定すぎて、いきなり主体にされるとそれだけで衝撃が大きい=おもろい。だけどって。この距離感もいい。しかも松葉杖が出てくるあたり、話の広がり方がより読めなくなる。とりあえず①泥である現在のどこかで松葉杖になんらかの借りがある、②現在は泥だが前世人間で松葉杖に世話になった、の二通りは思いつきました。どっちに転んでも面白そう。というかここから始まる泥の語り、聞きたい。その引き込み力で並選です。
────────西脇祥貴
地面から離れられなかったのがなんかちょっぴりもったいないかも。「だけど」が利いていないなって思った。
────────雨月茄子春
人間だけど、なんて言わない。そこを徹底すると、これは泥の「くせに」となる。と思って最後には推せなかった、と厳しい心情のときには思った。
────────ササキリ ユウイチ

雪国を抜けてみては いかがですか

空白を挟んで前半と後半とで、発話者が別なんじゃなかろうか。一つの台詞とするといくらなんでも失礼すぎる。わざわざスペースを入れてる意図があると思えるし、日本語としては「雪国を抜けてみては」で意味は通るし。川端康成を想起するのは当然だけど、能登半島の住民に移住を促す侮辱的・差別的な発言のほうが印象としては先に来た。このような発言に対する「いかがですか」という返答を返したこの人は、静かに怒りながら嫌味を言ってみせたわけではない。何重もの誤謬に対し、そんな建設的なコミュニケーションをしたって何も伝わらないんだから。何が誤謬かというとまず、「抜ける」という語彙選択は明らかに事実無根である。故郷を抜けるという言い方は、故郷が劣悪な環境であることを前提にしているが、そんな事実は存在しない。(しかしある人にとっては事実であることが問題をややこしくしている。というのは、差別主義者にとっても「パイを寄越さずしっかりコミュニティ内で回しておいて、自分の特権性を自覚したと発信するだけでは優位性を確保しているに過ぎないことに気がつかない」系の人々にとってもウケがいいのはこういう論理だから。私たちの均衡をどう取るのか、まだ答えは出ていない)次に、移住は簡単に判断できることではない。第3に貴方にそれを言う資格はない等等。「いかがですか」は会話の破綻を装った反撃だ。雪国に住んでいない人間に、雪国を抜けてはいかがですか、と無意味な提案をしているのだから。何重にも折り重なった見当違いをする人間とは、怒りとか嫌味とか「真っ当な」対話が成り立たないことを知っている。あるいはする価値もないことを。残された手段は、不愉快な人間になることを多少は覚悟した上で放つ反撃。もちろん会話の破綻でなくたって、あり得ないくらい大袈裟にため息をついて背を向けるのでも構わない。私はそのような反撃をたまたま余っていた鍬ではなく、毎夜研ぎ澄ます刀の切先だと思いたい。
────────南雲ゆゆ
17音。読んで即川端御大の引かれ倒した一行目を想起できるのは、「雪国」だけでなく「抜けて」まで押さえてあるから。言いたいことのためにちゃんと手間がかかってる。そして、致命的な指摘だと思う。誰もが例の一行目を知っているけど、その先を読んだ人は何人いるんだろう。雪国を抜け出せていない人ばかりなんじゃないだろうか。そういうところに留まる読者、あるいは読者未満を抱える羽目になった御大の絶望たるや、ともちょっと思ったりする。いつまでトンネルを抜けたところで満足するつもりなんだろう。言うまでもなくこれは冒頭も冒頭で、本当に言いたかったことはまだこのずっと先にある。雪国に立ち入って、そこでの時間を過ごして、それから現実に帰って来る=雪国を抜けてくることのないかぎり、文学はいつまでたっても調度品でしかない。雪国、に想起されるものはほかにもあり—―ロシアとか、東北とか――その読みを重ねることももちろんできる。雪国に対するあのいにしえのひどい視線を思い出すこともできる。これはかなり激しい指摘である、はずなのに、それがすっとこちらを貫いていく(抜けていくではない)のには、間違いなく語り口の力がある。いかがですか、といういかにも川端ライクな柔らかい言いようが世界=『雪国』観を強く保っているのに加え、抜けてみてはのあとの一字空け。これがあるとないとで、句全体の言わんとすることを受け止められるかどうかが大きく変わる。ためしに続けて書き直してみて。5・6・6で後が詰まるので、だいぶ窮屈に終わってしまう。「雪国」と「抜けて」に気づける余裕もなくなる。それがこの一字空けのおかげで、いったん読み手はやはりあのトンネルを抜けることになる。抜けて、雪国に連れて行かれる。そのうえで「抜けてみては」と言われることになる。読み手それぞれの現在地でなく、雪国へまず誘導する、この演出。そこから抜けて来いよという、字面に反した強い、強い怒り。すごい。それこそ佐藤みさ子さんとか広瀬ちえみさんとか思い出しました。文句なし特選です。
────────西脇祥貴
(川端康成『雪国』を敷く読みは他の方にお任せする)詩度の高すぎる「雪国」、機能的すぎる一字空け、やんわりとした語りかけの体裁を取った指示によって心理的リアクタンスが生じてしまう。連作の中でなら読みの態度も変わるかもしれないけど、一句出しとして受け取るにはこのあたりが障害になってくる。
────────嘔吐彗星
普通に笑っちゃった(こんなの読んでハハッて声出している自分のことを幸せだと思う)。スペースがなければ、したらどう?の勧めのニュアンスでしか読めなかったと思うけど、これだと、まずトンネルを抜けたのがあって、それで何らか「雪国を抜けてみては」という文が有名な作品があるという前提があって、それでもって、いかがですか?って味を聞かれている感じになる。というのは狙ったところではないと思うけど。おもしろかった。
────────ササキリ ユウイチ
この一字空けすごくないですか。〈エドはるみ ロックを解除 ありがとう〉
────────雨月茄子春

認めにCrew夏可視がりに

「したために来る」ですよね。「懐かしがりに」。川柳の長さで掛詞的な構成にするのってうまくいかないと思ってたんだけど、これは大成功してる。なんか、すごく大切な感情があるんだろうなってわかった。伝わった。これはそういう文法なんだと思う。したためるも懐かしがるも、抱きしめるというか、うずくまるような動作で、そこにCrew=同志と、夏の憧憬が並走してくる。大切だ。大切だよこれは!
────────雨月茄子春
みとめにくるうなつかしがりに、とあえて音に開いてみたくなる。表記がすでにぐちゃぐちゃなので、この音にあらゆる文字を載せ得ることは自明である。み。身。実。と、め。目。芽。にく。肉。くるう。狂う。狂うな。夏か。懐かし。歌詞。瑕疵。貸し。ガリ。借り。狩り。句そのものの表記でないと伝えられないことはもちろんあると思う。その文字で表記されることによって呼び起こされるものをつないだ完成物が。けれどこの句はそういう読みのセオリーに腕捻りをかけているように思う。発想倒れになる危険は大きい。表記によるヴァイブスだけで読み手を浅く満たしてしまう危険もある。それを指摘したうえで、音に開いてみた結果も合わせて読めば、この賭けは成功した方だと言えると思う。ただこの読みの根拠になる何一つ句の中にないので、並選に推すのははばかられました。今回は。この中に、たったひとかけらでいい、決定的なパンチとそれへの誘導を仕込んでおいてくれたら、文句なしに推したと思う。この一句だけで見るにはつらい。
────────西脇祥貴
可視がるってやばい造語だけど、割とパンクな未来妄想における日本語圏では想像できる語法な気がする。欲しがる、言いたがる、のがる。不可視がスタンダードなんだけど、目立ちたがりみたいなのとはまったくべつに、物理的に可視がるということがありうるような世界。このように「可視がる」でまず納得する。困難は分割せよ、とデカルトはいった、とかって数学の参考書によく書かれているよなと思い出して笑っちゃった、まあいいや。で、可視がりに、っていう接続がまったくわからない。これだけで未知の文法になっている。意味は不明なんだけど、だからこれはこれで言いさし的なものだろうと納得した。この七七の響きと合わせて、最初からそう思っていたし、最初から素直にこう書きたかったんだけど、この句は読んでいる感じやリズムとしては、和歌と同じだ。旧かな、文語、ごりごりのヒノモトコトバの響きだよ。
────────ササキリ ユウイチ

自分からちぎれてくれてありがとう

きれいな句です。残酷さと諦念がありますね。素直すぎて多くを語れないけど、でも愛唱性が高くて良いと思う。そして、素敵な最終句でした。
────────雨月茄子春
切ない。線でつながっているAとBではなく、Aとつないでいる線に着目しているのがとても切ない。Aの優柔不断さへの許しだし、Bへの内心の諦めへの優しいフォローだし、線の自己犠牲だし。。。色々な要素が胸に切なさとして押し寄せる。
────────スズキ皐月
アンパンマンのある種のグロテスクさを、やさしいフィクションの世界に押し戻している。
────────小野寺里穂
ちぎりパンへの遅すぎる御礼?
────────西脇祥貴


  1. おい背景の家が伸びてる (小野寺里穂)1点

  2. ハンカチは弁が立たない格子柄 (太代祐一)0点

  3. 災厄と名乗られあ、ですよね、ですです (西脇祥貴)2点

  4. この道以外すべてが退路 (スズキ皐月)1点

  5. メーデーに生まれてメーデー行った父 (南雲ゆゆ)2点

  6. ふるまえばポピーポピーな事態です (太代祐一)1点

  7. 人一人おさまるトート (ー)3点

  8. 惰性終戦 feedsmesomebrokenwingstosweepthosebakedupnarrativesaway (西脇祥貴)5点

  9. 茎の向こうで目が醒めている (ササキリ ユウイチ)1点

  10. ボディ・アンド・水平線の再編成 (ー)2点

  11. 「上品」が大塚愛のヒト言葉 (スズキ皐月)0点

  12. 揉めているミニマリストの相撲部屋 (スズキ皐月)2点

  13. 肩こりに参っちまった紅しょうが (太代祐一)2点

  14. ショッパー五つ、夕食探し、控え室。 (南雲ゆゆ)1点

  15. どもる思考きらきらひかるやり直し (小野寺里穂)1点

  16. 我が同志ちまたのべろはぬいたかね (ササキリ ユウイチ)0点

  17. 全力ぶりっ子は罰ゲームじゃない (雨月茄子春)0点

  18. 地につける足がないのは誇らしい (城崎ララ)2点

  19. 祝祭に間に合うために下る丘 (南雲ゆゆ)1点

  20. 子の器かわいいね海に逃がしちゃお (公共プール)3点

  21. 面の皮剥ぎ焼いていくピザ (城崎ララ)2点

  22. 撃ち落とした龍のロンダリング痕 (西脇祥貴)0点

  23. 掃除機もある種の乳母と言うわけか (ササキリ ユウイチ)5点

  24. 間引かれたわたしの目玉怒鳴らない (小野寺里穂)0点

  25. 余裕のASMRをシャクシャクと聴けろ (公共プール)0点

  26. 木彫りの熊本県はこうだよ (雨月茄子春)3点

  27. 泥だけど松葉杖には借りがある (城崎ララ)3点

  28. 雪国を抜けてみては いかがですか (雨月茄子春)4点

  29. 認めにCrew夏可視がりに (ー)2点

  30. 自分からちぎれてくれてありがとう (公共プール)3点

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