海馬 umiuma

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『類題別番傘一万句集 第四集』より31句選、および鑑賞

大正期からの歴史をもち最大の川柳結社と知られる「番傘」の基幹企画である『類題別番傘一万句集』の第一集は1963年に創元社から出版されました。その後、1983年に「続」、2003年に「新」が同じく創元社から出版されています。20年ごとに「番傘」誌掲載の川柳から秀句を選ぶ、「本格(伝統)川柳」の粋を示すものとして編まれたアンソロジーです。 ここでは、2023年に出版された第四集掲載の「一万一千余句」より、私の考える秀句31句を選び、順次コメントをしていこうと考えています。31句

    • 「朗読とトークの会 2023」@日本現代詩歌文学館 朗読作品

      2024年2月18日に、日本現代詩歌文学館(北上市)の「朗読とトークの会 2023」というイベントで、詩人の小島日和さん、歌人の小原奈実さん、俳人の斉藤志歩さんとともに自作を朗読する機会をいただきました。文学館のYouTubeチャンネルで朗読とトークの動画が公開されています。https://www.youtube.com/watch?v=UilyuiYUeFE&t=5454s ここでは、朗読した自作のテクストをあげて、少々の解説をします。 〈句集『そら耳のつづきを』(書肆

      • 虎の子渡し 川柳13句

        令和には寅のパンツはひるがえり くちぶえを吹いて「雷ちゃん、どこかしら」 もののけの父子も見ゆるひがしやま されかうべキイスの指を切るたんび 旅に倦んで玄武に影として残る MuRaKaMiとして塗り分ける鼻の穴 白虎の子だから白とはかぎらない 朱に交じる龍の白目に朱をさして 花として溶けん獅子の子の舌へなら やっぱりね 瞳に 鍵がかけてある ぐろーばる斬首のごとく花が跳ぶ 右手なら揚げる左手ならグリル とーちゃん、古都はおカネの匂いがするネ ー「村上

        • うずまく京都 川柳連作集

          つくづく 川柳7句 あて先を忘れたあおく薄い手のひら マツモトの顔つけ走るプログラム ガス室でのたうつ洛中洛外図 つくづくの野郎が薔薇を抱きしめた 人が死ぬはなし儲けの出るはなし 鴨川のみず絶えずして髪を混ぜ込んで あのひとは遊びつくして消えました 追伸 川柳7句 舌打ちだけで追伸にまでたどりつく 追伸の追伸くちびるひび割れる バイブルはぜんぶ追伸だというしね 追伸のギャングスタ・ラップのあたたかさ すこし迷って犬の尻尾をつけて出す ピチャピチャと

        『類題別番傘一万句集 第四集』より31句選、および鑑賞

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        • AI
          2本

        記事

          中・後期柳多留より

          川柳の元は『誹風柳多留』(以下、柳多留)だが、近代以降の川柳ではその内、初代柄井川柳選の川柳点前句付から句を選んだ初篇から二十四篇までを評価し、以降は「卑俗で言葉遊びの狂句に堕した」というかたちで切り捨ててきた。 となると、気になるじゃないですか、以降の柳多留が(笑)。 というわけで、中・後期柳多留から、注釈は少なめでも楽しめる句を選んで読んでみました(Twitterで呟いていたのをまとめたものです)。 世の中よかごに乗る人かつく人/横月 『誹風柳多留』 八六・4

          中・後期柳多留より

          プニヨンマ(仮) 川柳24句

          弥次喜多の瞳の奥のプニヨンマ 浜松は六枚切りのプニヨンマ ひとしきり泣いてプニヨンマになった 司馬史観によるとマプニヨンです F#の代替コードはマンヨプニ プニヨンマ×リゾーム×春ですね ニヨンマの風の中なるプニヨンマ ピノキヨの旧雪崩式プニヨンマ プニプニの偽ニップルの雪ヨンマ プニヨンマ柄の下着がその証し プニヨンマしか出てこない改札機 髪よ髪よ汝われをプニヨンマ 水仙咲くきつとプニヨンマも咲くだらう プニヨンマ名実ともにプニヨンマ 寒山拾得&

          プニヨンマ(仮) 川柳24句

          春の鳥

          春の鳥 11句 雀交る川遡る波がしら 一握の花 沖にかがやく一処 ふざけたような長い防潮堤を歩く 吾の死と彼らの生と春怒涛 防潮堤を越えれば重機の音がする 記憶は階段のはしに溜まる砂 わだつみが柱に触れた跡がある 俺らは飛んでけるしという春の鳥 ない町を見るある町の音を聞く 波を記憶し大地がせり上がり家は沈む 海沿いの道が途切れて赤いバスは空を走った  ※ 埋められた土地には個人的な思い入れがある。 私が幼年期を過ごした家は南北が下に落ちくぼん

          川柳句会ビー面 2023年1~11月より 抜き書き

          引用元はササキリユウイチさんのnote (https://note.com/sasakiri) 資本家がまだ食べてる途中でしょうが/雨月茄子春 2 「コインランドリーぴえろ」に本名聞きにいく/同 3 奥の目で見てきたふわふわだったのに/同 4 僕たちを友達たらしめている縄/同 5 忙の日々さよならドミノさようなら/同 5 ゴリラって言ったのに笑わなかった/同 6 賭場より先に崩れ落ちそう/同 7 裏を返せば牛の筆箱/同 8 すべて遊び まさにCECIL McBEE/同 8

          川柳句会ビー面 2023年1~11月より 抜き書き

          #大晦日108句チャレンジ より自選20句

          ソクラテスがコップをもっているところ ベースは人間の神の酩酊がまた始まった 死んだ魚の目 ポプラの葉が舞って世界はあからさま 驚いて叫んだことが社名になる 二歳児が鏡のうらを覗くとき スノウドロップこれから吐く嘘の数 マスオさんを魔改造した罰ですよ おむすびに佐藤雅彦的不安 あきらめてへそを中心に回りなさい 特攻隊員に着せる龍のスカジャン イヤホンジャックのほうが正直だ 物真似はすべて神への導火線 ひょっとこはある種のメルクマールです 罫線があったが

          #大晦日108句チャレンジ より自選20句

          Red Star & Blue Moon – 7 senryu

          赤い星と青い月 川柳7句 松山・ロシア兵墓地にて At the Russian Soldiers‘ Cemetery, Matsuyama, Japan ヤーコフ・クライマン、君は柿が好きかい Jacob Kleiman, do you like persimmons? 死んだ昔むかし海がここから見えた頃 yes, we died long ago, when we saw the sea from here 露と霜ちらちらと地上の星と月 the Star an

          Red Star & Blue Moon – 7 senryu

          川柳カード百句解題――「生」でどうぞ

          詩誌『Lyric Jungle』17号(2014年6月)の「特集1:詩人たちよ、短詩型文藝の伝統に学ぼう!」のために書いた文です。   同じ575音字形式の川柳と俳句。どうしても比較されるが、どこが違うかと考えると、知っている人ほど困るだろう。俳句側から「川柳には季語と切れがない」という見方があり、川柳側にも同見解の人達もいるが、実際のところ、川柳も季節の言葉を使うし、切れだって一つの技法としてあり得る。では、区別は無いかというと、俳句として、川柳として提出される作品をしば

          川柳カード百句解題――「生」でどうぞ

          「川柳を見つけて-『ふりょの星』『馬場にオムライス』合同批評会」についてのノート

          「川柳を見つけて-『ふりょの星』『馬場にオムライス』合同批評会」のアーカイブを何度か聞く。出てきた論点について、私が過去に書いた文で私なりに答えているもの、また他の方が書いているのでヒントになりそうなものをノートとしてリンク。 * 穂村弘さんの川柳観 「現代川柳とは何か?―「なかはられいこと川柳の現在」を読む―」 https://sctanshi.wordpress.com/critici/ron2/ 2001年刊のなかはられいこ『脱衣場のアリス』(北冬舎)所収の座談会

          「川柳を見つけて-『ふりょの星』『馬場にオムライス』合同批評会」についてのノート

          海馬万句合第三回、各賞発表

          海馬万句合第三回の各賞は、以下の句・方々に決定いたしました(敬称略) 〈海馬万句合第三回大賞〉 水族館 歴史はいつもかわいそう/スズキ皐月 〈コメント大賞〉 ラジオポトフ(今田健太郎・高澤聡美) 〈川合大祐賞〉 どらやきのかいわいなかだししちゅえいしょん/藤井皐 《 選評 》 〈海馬万句合第三回大賞〉、今回は悩みました。初回、第二回はこれだ!という句に自然に決まったのですが、今回はZoomの「しゃべり倒す会」をした後もずっと決まらないままでした。 その原因を

          海馬万句合第三回、各賞発表

          「海馬万句合」第三回 選評 目次

          「海馬万句合」第三回、選評発表です。題ごとに記事が分かれていますので、以下の目次からご覧ください。題①~③が海馬選評、題④は川合大祐選評です。 「海馬万句合」第三回 題①「くりかえし」選評 「海馬万句合」第三回 題②「Straight No Chaser」選評 「海馬万句合」第三回 題③「小町が行くぼくは一本の泡立つナイフ/石田柊馬」選評 「海馬万句合」第三回 題④「界」選評(川合大祐) ひきつづき各句へのコメント、Twitter(X)でご投稿ください。また、選評へ

          「海馬万句合」第三回 選評 目次

          「海馬万句合」第三回 題④「界」選評(川合大祐)

          「界」選評                川合大祐  兼題「界」と聞いて、ひとは何を想像するだろうか。 「世界」を連想するひとはおそらく多数を占めるだろうと思う。だが、「界」は世界では無い。世を境界として区切る、まさにその「区切り」が「界」ひと文字としての本義である。  そこのみに拘ったわけではないが、基本「境界」をあらわしている句を主に選んだ。これは何かと何かの境目こそが短詩型のうまれる場所であり、読み手にも書き手にもスリリングであると思われるからだ。  あくまでわたし

          「海馬万句合」第三回 題④「界」選評(川合大祐)

          「海馬万句合」第三回 題③「小町が行くぼくは一本の泡立つナイフ/石田柊馬」選評

          今回の海馬万句合では、この題でもっとも自由な作句が見られたと思う。前回の鶴彬の句の場合もまたそうだった。川柳は何よりもまずは他の川柳との対話によって生まれるのである(ジャズが先行フレーズのアレンジによって成り立つように?)。これは川柳に関わらず文化的表現というもの一般にも言えることだが、とりわけ短詩、その中でもとりわけ川柳でそうである。 「小町が行くぼくは一本の泡立つナイフ」が石田柊馬の代表句であるかどうかは議論のあるところだ(たぶん違う)。ただ一句の評価の問題は、句歴の長

          「海馬万句合」第三回 題③「小町が行くぼくは一本の泡立つナイフ/石田柊馬」選評