明日から社長するってよ
明日から社長で。
*
転職に失敗して約1ヶ月。
環境を変えるのではなく、
自身を変えるようにしている。
本当に気持ち程度だけれど。
積極的に人と会うようにして、
こまめにコミュニケーションをとり、
そして感謝の言葉を伝える意識をしている。
能力が上がったとは思えないけれど、
仕事を頼まれることが急激に増えた。
以前の僕も決して嫌な顔はしていなかった。
と思う。
頼まれたことは全力でこなしていた。
と思う。
だけれど、ここ数日の間で、
僕と接する人たちが明確に変わった。
「話だけ聞いてもらえない?」とか、
「ここ変えたいんやけど良いかな?」とか、
愚痴を交えた相談が相次いで殺到する。
そして、そんな日々を過ごしていたある日、社長に突然呼び出された。
*
「明日から社長で」と社長が一言。
「ん?」と思うと同時のタイミングで、
「分かりました」と返事。
やれやれ社畜が身についている。
社内でどんな無理難題も、
「分かりました」で済ませてきたツケだ。
厳密に言えば、
明日から社長を引き継ぐための業務をして、
向こう2年くらいで僕を社長にするらしい。
僕を選んだ理由は
咀嚼して聞いていくと、
お客さん評価がそれなりで、
人格が崩れていない人物は
社内に僕しかいないから。
そして、社長は今年で60歳。
色々と転換期として考えているらしい。
外部の人に社長を委任する案もあったけど、
信頼できる人は社長の中で僕だけらしい。
「つい1ヶ月前は転職を考えていたのに?」
「そんな人間を信頼して良いの?」
頭の中でグルグルと渦巻く。
それから社長の引き継ぎが始まった。
*
まずは業務内容の整理と把握をするため、
週に2回ほど社長と打ち合わせをする。
まずは現状の利益確認。
10人足らずのクリエイターが在籍していて、
今はそれなりの利益があるようだ。
だけどコロナ期以降は、
緩やかに下降していてギリギリの状況。
「そんな時にバトンタッチするなよ」
とは思うけれど、
自分で動ける未来に少しだけワクワクする。
会社をリニューアルするために、
社長に幾つかの案を提出して、
「進めてみよう」だったり、
「これをこう変えよう」だったり、
少し前までは歪みあっていたのに、
今はまるで文化祭前の学生のように、
夢中になって会社を纏めようとしている。
それはまさしく僕が求めていた夢だった。
自分が変われば、周りが変わり、
そして未来が変わる。
*
数年前までは会社を呪っていた。
呪って、呪って、呪って。
そんな物語の脚本を作ったこともある。
「見返してやる」と、
必死にもがいて掴んだ幾つかの広告賞。
会社の誰も関心を持たなかったけど、
その時の箔は自分のためではなく、
いずれ会社のためになりそうだ。
なんとも皮肉なストーリーだ。
でも形はどうあれ、
未来に繋がるなら良いか。
あぁ、お仕事ください。
メガッパ
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?