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明日から社長するってよ

明日から社長で。

転職に失敗して約1ヶ月。

環境を変えるのではなく、
自身を変えるようにしている。
本当に気持ち程度だけれど。

積極的に人と会うようにして、
こまめにコミュニケーションをとり、
そして感謝の言葉を伝える意識をしている。

能力が上がったとは思えないけれど、
仕事を頼まれることが急激に増えた。

以前の僕も決して嫌な顔はしていなかった。
と思う。

頼まれたことは全力でこなしていた。
と思う。

だけれど、ここ数日の間で、
僕と接する人たちが明確に変わった。

「話だけ聞いてもらえない?」とか、
「ここ変えたいんやけど良いかな?」とか、
愚痴を交えた相談が相次いで殺到する。

そして、そんな日々を過ごしていたある日、社長に突然呼び出された。

「明日から社長で」と社長が一言。

「ん?」と思うと同時のタイミングで、
「分かりました」と返事。

やれやれ社畜が身についている。
社内でどんな無理難題も、
「分かりました」で済ませてきたツケだ。

厳密に言えば、
明日から社長を引き継ぐための業務をして、
向こう2年くらいで僕を社長にするらしい。

僕を選んだ理由は
咀嚼して聞いていくと、
お客さん評価がそれなりで、
人格が崩れていない人物は
社内に僕しかいないから。

そして、社長は今年で60歳。
色々と転換期として考えているらしい。

外部の人に社長を委任する案もあったけど、
信頼できる人は社長の中で僕だけらしい。

「つい1ヶ月前は転職を考えていたのに?」
「そんな人間を信頼して良いの?」
頭の中でグルグルと渦巻く。

それから社長の引き継ぎが始まった。

まずは業務内容の整理と把握をするため、
週に2回ほど社長と打ち合わせをする。

まずは現状の利益確認。

10人足らずのクリエイターが在籍していて、
今はそれなりの利益があるようだ。

だけどコロナ期以降は、
緩やかに下降していてギリギリの状況。

「そんな時にバトンタッチするなよ」
とは思うけれど、
自分で動ける未来に少しだけワクワクする。

会社をリニューアルするために、
社長に幾つかの案を提出して、
「進めてみよう」だったり、
「これをこう変えよう」だったり、
少し前までは歪みあっていたのに、
今はまるで文化祭前の学生のように、
夢中になって会社を纏めようとしている。

それはまさしく僕が求めていた夢だった。

自分が変われば、周りが変わり、
そして未来が変わる。

数年前までは会社を呪っていた。

呪って、呪って、呪って。

そんな物語の脚本を作ったこともある。

「見返してやる」と、
必死にもがいて掴んだ幾つかの広告賞。

会社の誰も関心を持たなかったけど、
その時の箔は自分のためではなく、
いずれ会社のためになりそうだ。

なんとも皮肉なストーリーだ。

でも形はどうあれ、
未来に繋がるなら良いか。

あぁ、お仕事ください。

メガッパ

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