【三人と一人】 #891
男たち三人は一緒に旅をしていた
元々は皆んな別々に一人ずつ旅をしていたのだが
ある街で三人は出会い意気投合して三人で旅をする事となった
リーダー格のワン
温厚なツー
そして一番年下のスリー
三人は基本的には飛行機は使わない
歩くかヒッチハイク
時にはバスに乗ったり列車にも乗った
大きな湖や海を渡る時は船などを使った
宿も豪華なホテルなんかには泊まらない
安宿かテント泊が基本である
食事もできるだけ現地の住人が普段使う食堂などで済ました
一緒に旅をして二年目に入った頃
アフリカ大陸を移動中ある村で若い女性に会った
この女性も旅をしていて二人旅だったのだが友達が帰国してしまい
数日間資金調達の為にたまたま昼食時に入った用品店も兼ねている食堂で働いている彼女に出会った
彼女はやたらと三人に喋りかけてきた
多分旅人と会うのが久しぶりだったからなのか
少し興奮気味に話しかけてきていた
ワンはまるで興味が無いのか無視していた
ツーはお人好しなのであいずちを打ったりして話を聞いてやった
スリーも年齢的に近いからなのか色々と話をしていた
若い女性は仕事を終えたら一緒に夕食に行かないかと誘ってきた
三人で相談するもワンは気乗りしていない
いつもそんな訳ではないのだが
どーにもあの女性が気に食わないのか
あまり前向きでは無かった
挙げ句二人で行ってきたら良いと言い出した
しかし結局は折れてくれて皆んなで夕食を食べに行った
アフリカの北東部の砂漠地帯を抜けたこの街は海沿いという事もあって
魚料理が多かった
外国人には普通にビールなども提供してくれる
ただしビールは冷えていない
若い女性はフォーと名乗った
フォーはキラキラした目でこれまでの旅の話をした
それをツーとスリーが熱心に聞いてやった
ワンは相変わらず無視していた
フォーはそんな事はお構いなしで喋り続け笑い合った
三人は明日この街を出発し南下する予定である
するとフォーは自分も一緒に旅をさせて欲しいと言ってきた
これにはツーとスリーもビックリした
今まで男三人だったから楽しく旅を続けられたのに
そこに若い女性が加わるというのは正直言って風紀の乱れを心配した
答えはやはりそれは難しいと返答した
フォーは落胆した
それとともに自分が女性である事にも納得はしていた
フォーは諦めた
三人とフォーは宿が違ったので送り届けて自分たちは自分たちの宿へと戻った
スリーは言った
最低限のルールを作って
仲間に入れてやる訳には行かないだろうかと
コレに対してツーは
ルールたってどんなルールを立てるんだい
それだったら例えば
自分たちには非接触とゴールを決めてその間だけ同行しても良いとするのはどうか
するとワンは
体力も違うしそもそも違う性なので
根本的に考え方が違う
三人で上手くやってこれたのに
乱れてしまう
俺は反対だ
ワンが反対なら仕方がない
いつも満場一致でないと特別な事はしない
普段の事は好き勝手にやっている
次の日
スリーはフォーにやはり同行するのは難しいと宿へ伝えに行った
するとフォーもあらかたそうであるのは覚悟していたようで
諦めてくれた
その上で次の目的地を聞かれたので
ダカールだとだけ伝えた
スリーは自分の宿に戻り
二人に断った事を伝えた
出発が随分と遅れてしまった
今日目指す街までは相当な距離があり
歩くには遠過ぎる
バスを選択して次の街を目指す事にしたが
直行便はもう出てしまい
今日はもう無いと言われた
途中の中間点に当たる小さな街までならこれから出るバス乗れば行けると言われた
三人は悩んだ
明日まで待って朝イチの直行便に乗るか
今日行けるところまで行って
明日目的地に改めて向かうか
旅人は自由である
自由ではあるが意味なく同じ場所に滞在するのは時間の無駄なような気がする
ワンは言った
今日行ける所まで行こう
そして三人はバスに乗った
バスで揺られる事八時間
夕方近くなってようやく中間地点の小さな街に到着した
あいにく何処の宿も満室で
仕方なくある宿に交渉して
いくらかのお金を渡して敷地内にテントを張る許可をもらった
此処は少し内陸部に入ったので
魚料理から野菜中心の料理を出す店が数軒だけあった
ビールは無かった
晩ご飯も早々にテントに戻り
手持ちのウイスキーを少しだけあおって眠った
次の日
バスターミナルへ行き
目的地の街までのバスを探した
するとバスが故障しており
今日は出ないと言う
そっち方面に行く他のバスを聞いてみたが
確かに少しだけ進めるが
チケット係の太ったお姉さんが言うには
元来た街に戻って
明日直行便に乗った方が確実だ
そう言われた
せっかく此処まで来たのに
いつなおるかも分からない状況で此処に滞在するよりは戻る方がマシだと判断し
またあの街へ戻った
よくある事だ
三人はまたあの店に行ったら
フォーが働いていた
フォーはビックリして話しかけてきた
ツーが事情を話したら
笑っていた
そして言った
あそこのバスはいつも故障中なのだと
これには珍しくワンも笑った
何か気分でも変わったのか
ワンがフォーに晩ご飯に誘った
前と同じ店だ
此処で無いとビールを飲めないからだ
ワンは言った
ツーが提案した事だが
ルールを守ってくれるなら
次の目的地までなら同行しても良いと言い出した
これにはツーもスリーもビックリした
そして小さくガッツポーズを取った
フォーはその足で少し抜け出し
食堂に辞める事を伝えに行った
戻ってきた所で次の日も早いのでお開きになった
しかしスリーとフォーはまだ遊んでいたいらしく
明日ちゃんと起きるのを約束して二人は残った
その後も二人はビールを飲んで気持ち良くなった
お店の前の海岸に行ってみた
真っ暗で波音は聞こえるが何も見えない
ルールは非接触だ
でもそのルールは明日からの旅のルールであって
今はまだ始まっていない
だから二人は繋いだ手からその手が腰にまわり
やがてスリーの肩にフォーの頭がちょこんと傾けられ
最後にはキスをした
フォーは内緒ねっ
そう言って走って帰って行った
スリーはウキウキだった
次の日
皆陽が登る前に起きた
準備を済ませて三人はバスターミナルへと到着したら既にフォーは待っていた
満面の笑みで
此処からは四人の旅だ
フォーとはダカールまで一緒に旅する事となった
今日最初の目的地までは昨日乗れなかった直行便のバスで向かう
バスの時間にも間に合い座席にも座れた
本当は海岸線を南下したかったのだが
道が無く
海岸線に戻るにしても一旦内陸部の今向かっている街までは出ないといけない
直行便は昨日の夜にならないと目的地には到着しないらしい
途中何度か休憩を挟みながらバスに揺られた
到着したのは夜の19時を回った所だ
先ずは宿の確保をしないといけない
用品店に入り宿は何処にあるか聞いてみた
ホテルが一軒と安宿が3軒教えてくれた
洋品店のオヤジはもし何処も無理だったら此処に戻ってきなと
この2階のスペースを貸してやると
それだったらもう此処でいいんじゃないかと言いだし
でも一度宿を見に行った方が良いとツーが言い出したので
一旦出かけた
宿は何処も満室だった
昨日もそうだったけど
満室ばかり続く
仕方なしに用品店に戻った
オヤジはどうせそうなるだろうと思っていたようで
奥さんに料理を手配してくれていた
なんて人情味のある人物なのだ
オヤジからはトイレはあるがシャワーは無いと伝えられた
奥さんの料理を堪能して
オヤジから伝えられた料金よりほんの少しだけ弾んで支払った
あまり沢山払い過ぎると逆にたかられる
程よさが大切なのである
次の日もバス移動だった
途中歩きも含めて一週間ほどの期間で目的地であるダカールに到着した
久しぶりに大きな街である
今日は少しだけランクを上げた宿に泊まった
荷物を置いて四人は街を散策し
昼食と早い夕食を兼ねてカフェに入った
三人は今日でフォーとお別れなのは分かっていたので旅を振り返る話が中心となった
フォーは三人出会えた事に感謝してくれた
三人もフォーに感謝した
そこで
ワンから提案があった
せっかくだから希望峰までは
四人で旅をしないか
そういう提案だった
他の三人はビックリした
あれほどフォーを否定していたのに
ツーとスリーはフォーの顔を覗き込んだ
するとフォーは満面の笑みでVサインを出した
空を見上げたら北斗七星が輝いていた
ほな!
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