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【白い僕と車椅子】 #743


色素が薄く日光にも弱い僕
何をするにも自信が持てない
学校に行っても他の子とは距離を感じる
イジメられた事は無いけど友達は居ない
なんだか触れてはいけない生物みたい

お母さんはとっても優しい
お父さんも優しい
でも1番の味方はお兄ちゃんだ
お兄ちゃんは僕より2つ年上
一番最初にイジメられそうになった時にお兄ちゃんは僕を守ってくれた
ちょっとやり過ぎて逆にお兄ちゃんは先生に叱られていた


僕はお兄ちゃんが居ないと何も出来ないのかしら
本当に自信が持てない


そんな僕たち家族に大事件が起こった
僕のヒーローのお兄ちゃんがバイクの事故で病院に搬送された

急いで家族皆んなで病院に駆けつけた
手術中で病院には警察の人が居た

話によると誰かと接触して事故を起こしたのでは無く単独事故だった
バイクに乗ったまま国道横の川に転落
近くに居た人が警察と救急に連絡をしてくれたそうだ


手術が終わり集中治療室に運ばれた
お父さんとお母さんが先生から色々と話を聞いていた

後になって教えてもらったのは頸椎を痛めてしまっていてもう二度と歩く事ができない

僕はそれを聞いて涙が溢れ出し止まらなくなった
お母さんも泣いている
お父さんは下を向いている

僕は学校帰りに毎日病院に行った
大抵お母さんが居た

お兄ちゃんは僕と会っている時はいつも笑って話をしてくれた
学校の事やテレビの話
病院での出来事

本当は辛いのに

お母さんも笑ってるけどどこか寂しそう

お父さんはちょっとだけ無口になった

お兄ちゃんの回復力は凄いらしく看護師さんがびっくりしていた
リハビリにも前向きで一所懸命やっている

それを見て僕は思った
僕はアルピノだけど皆んなと違うし体も弱いけど心だけは強くなろうって

僕も僕を全力で生きた

家はお兄ちゃんが戻る前にリフォームしてもらいバリアフリーになった
手すりもいっぱい付いた
お兄ちゃんの部屋は一階に引っ越した


お兄ちゃんが家に帰ってきた

皆んなでお祝いをした
おかえりって

お兄ちゃんは笑ってる
凄いなって思う

僕も笑っていよう


僕はその後大学まで進み卒業して今は別の大学で院生をしている
SNSで知り合った同じアルピノの女の子とお付き合いしている
遠距離だけど

お兄ちゃんは車椅子のバスケットボールのチームに入ってパラリンピックを目指しているんだ


ひとつだけ残念な事がある
お父さんとお母さんが離婚してしまった
お父さんは僕たちに家とお母さんを残し出て行った

その後鬱状態になり自死(自殺)してしまった
お父さんだけは強くなれなかった





ほな!

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