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【ブスの映画の】 #714


私は正真正銘の「ブス」です
なのに何故かアイドルを経て今は女優として活躍しています


私は「ブス」なのに国民は私に対して「エロ」感じ興奮するようです
あおった事も無いし自分では全く気が付いていない


私は何故アイドルになったかって?
それは高校のクラスメイトが悪ふざけでオーディション番組に応募したからだ
誰も最終選考まで残るとは思って無かった
少なくともこの田舎街では


私は東京という大都会に呼ばれた
お母さんは「ついてこか?」と心配したが子供だけどもう子供じゃないと断った
初めての東京


私はオーディションで何か得意な事かアピールしたい事をやって下さいとスタッフの人に伝えられたので5円玉を輪ゴムで鼻に付けマメシボリの手ぬぐいを頭に巻き
かなり露出度の高い水着を着用しお尻にウサギ尻尾を付けて腰をクネクネさせながら「どじょうすくい」の舞を披露した


私はオーディションで準グランプリとなった
ブスなのに…
大手の芸能事務所と契約しアイドルユニットでデビューが決まった
お母さんもお父さんも弟もおじいちゃんもクラスメイトもみんなみんな驚いた
この街初の芸能人


私は東京の高校に編入した
此処は芸能人御用達の高校
行かなくても卒業できる
クラスに何人の生徒が居てて
その内何人が芸能人で何人が普通の生徒なのか卒業するまで知らなかった


私は晴れてアイドルとしてデビュー
私の役割は引き立て役
私以外はみんな可愛い
デビューして1年くらいしたら馴れ合いのようなダラけた関係になってくる
グループの中にチカラ関係の序列が生まれる
私は「ブス」だけど最下位では無かった
5人グループで3番目
これは私が決めたのでは無く自然とそうなった


私はグループ内で初めて映画に出演が決まった
1番と2番はもっぱらバラエティ番組に引っ張りだこ
4番はグラビアやモデルが多い
5番はこの頃は大して何も無かった


私は映画で更に開花し特殊な役が増えていった
この頃1番と2番の序列が入れ替わり焦ったのかある時イライラして私は元1番に「ブスのクセに出しゃばってんじゃねぇよ」ってキレられた
この事件が引き金となり元1番は週刊誌にすっぱ抜かれ一気に5番へと落ちた
誰も彼女を使わなくなった


私は2番に昇格した
元2番の1番は得な存在で衣着せぬもの言いでサバサバしている
だから敵も多いが味方も多い
嘘が無いから
元1番は最初で最後の「ブス」発言で自爆したが
新1番はグループ結成時から頻繁に「ブス」と連呼するが何故か腹が立たないし憎めない
そして彼女は叩かれない


私はアイドル活動より女優業の方が好きだ
とても自分に合っていると思う
アイドルとして舞台に立つより映画の舞台挨拶の方が好きだ
事務所的には後1年は持たしたかった
だが元1番の芸能界引退宣言と元4番の結婚発表とでグループとしてアイドルとして存続は不可能と判断した
解散ライブはドームツアーで締めくくった


私はついに本当に女優となれた
「ブス」だけど「エロ」だけど女優だ
元2番はバラエティにも出るが最近はニュースのコメンテーターとしての活動の方が目立ってきている
元5番はバラエティと並行してセクシー女優としても活動の場を広げた
とても面白いと思う
元4番はインスタフォロワーの数だけで行ったらダントツI位だ
いわゆるママタレである
本も出したりしている
元1番は誰も知らない


私はいくら人気が出ても自分がキレイだとか可愛いだとかは思った事は無い
元1番や元2番が言うように私は「ブス」だ
それで良いそれで
そういう私に一定数の需要があるわけだから
ただ不思議だったのが撮影の為に地方に滞在していた時
そこに集まったファンの女の子に「キレイですね」と言われた事だ
これは芸能人=神々しいモノと勝手に捉えて歪んだ解釈により
うっかり私が奇跡的に美人に見えてしまったのだろう


私は時々バラエティ番組にも出る
新作映画の宣伝の為に出るのが殆ど
沢山のカメラは緊張する
まるで監視されているようで怖い
やはりバラエティ向きじゃ無いしテレビ向きでは無いと確信した
ブスの上に挙動不審な行動でお茶の間の人はきっと変な生物を見るようにテレビを見ていた事でしょう


私は「ブス」だけどコッソリ数人の俳優やミュージシャンやアーティストなんかとお付き合いした事もある
人からは「エロ」で見られるけどあまり好きでは無かった
どちらかと言うと一緒に居るという事の幸福感に包まれたい
そちらの願望の方が強い
どの人も素晴らしかったけれどピンと来る人は居なかった


私は気が付くともう45歳の誕生日を迎えていた
ありがたい事にまだ女優業をさせて頂いております
他のメンバーで芸能で食べて行ってるのは私と元5番くらちだった
元2番は政界に進み今は議員さん
元4番はSNSでの活動のみで基本的には家庭第一で過ごしている


私は結局この「ブス」と「エロ」という武器で生き抜いてこれた
誰かが敷いてくれたレールの上を走ったに過ぎない
あの時クラスメイトが悪ふざけでオーディションに送って無かったら
オーディションの自己PRの出し物をお母さんが考えてくれ無かったら
事務所が私を選んでくれ無かったら
アイドルユニットを作ってもらえ無かったら
自分は何もしていない
その場その場を一所懸命に生きる
それだけだった
自分として世の中に唯一アウトプットできるものがあるとしたら「ブス」でも「エロ」でも幸せになれる
という事を伝えられたと思う



私はいよいよ還暦という手前で奇跡が起こった
神様は「ブス」にも優しいようで
最高で最後の男を私の目の前に落としてくれた
彼は映画の撮影監督
それ以外にも写真家としても活動されている
昔は世界中を飛び回り子供たちを撮影していたが
今はもっぱら日本というくくりで人や建造物や自然と多岐に撮影し美と闇を氷結している
有名な人だったのたがなかなか一緒に仕事をする機会も無くこの年になって初めてお仕事をご一緒させてもらった
出会ってしまうと可笑しなもんで地球と月みたいな間からになったのよ
まるで昔からのパートナーみたいに
自然と手を繋げたわ


私は感謝している
独りぼっちじゃ無いって
いつも地球が宇宙が側に居てくれる 
そう思えたのも彼に出会えて彼のフィルターを通して見た地球の様が美し過ぎ愛を感じざるを得ない


私は死がそこまで迫ってくる年齢になった
まだ女優はさせてもらっている
パートナーも現役で写真を撮っている
映画は体力的に厳しいので引退した
人から見たら華やかな人生
でも私にとってはささやかな人生
笑顔でこの世とおさらばできる私はラッキーです

さぁそろそろお別れの時となりました

ありがとう






ほな!

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