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【最愛のソレが一番の敵】 #691


友達2人親友0人両親他界知人多数妻無し彼女無しペット無し

45歳フリーター
1Kのアパート家賃月5万円

そんな彼も10年前は

友達多数親友5人両親健在知人多数妻あり彼女時々あり子供無しペットあり

35歳官僚
タワーマンション月15万円返済


人間なんて弱い
もしくはとんだ勘違いで
転落していく

その後の彼は

友達0人親友0人両親他界知人数人妻無し彼女無しペット無し

55歳無職
ホームレス

転落には色んな場合がある
彼の場合は『酒』だ

官僚をクビになったのも酒
妻と離婚したのも酒
友達がいなくなったのも酒
家を無くしたのも酒
仕事を無くしたのも酒

酒に溺れなければ
酒に支配されなければ
今でも悠々自適に暮らしていただろう

酒を飲んで悪態をつき
酒を飲んで暴れて
今では手が大きく震え
幻聴幻覚に悩まされて
実年齢より10歳は老けて見えた

そんな彼を支援してくれる団体もあった
ある日彼はとうとう動けなくなっていたところ
その団体の見回りに来ていた人に救い出された
病院に入院し退院後はその団体が運営する住まいへ入居し
日中は団体の手伝いと断酒の会への参加を義務付けられた
時間はかかったが少しずつ本来の彼へと戻って行った
元々は一流大学を卒業し官僚にいた人間だけあって元に戻れば頭脳明晰なので積極的に団体の運営に関しても役に立つようになった
彼のおかげでより合理的に分かりやすく細分化して業務のミエルカを行い誰にでも分かりやすくしかも何をやるべきであるかも理解できたのでスタッフはほぼノーストレスで仕事ができるようになった
活動も多岐に渡り支援の仕方も工夫されていたのである時期からちょくちょくテレビの取材が入るようになった
最初は団体そのものの取材であったが最近ではかつては利用者であり今は運営側にいる彼の取材の方が増え出した
こうなると彼も次第にメディアの人間との関係性も出てくる
そんなおり打ち合わせと称して飲み会があった
彼は当然ながら酒は一滴も飲んでいないしテレビの関係者も彼がかつてお酒で転落した事は当然知っていた
だが1人のバカのせいでボタンが弾けた
若手の営業が酔っ払って彼にイタズラをした
彼は定員に水を頼んだ
それを彼が日本酒と差し替えて取りに行って彼の目の前に置いた
普通なら匂いで分かる
特に酒をやめている彼は敏感な筈だ
しかし彼はそれを飲んでしまった
すると彼は若い営業に
「これ日本酒だねイタズラはダメだよ」
そう言って笑った
小さなスイッチが入った

その日以来隠れてちょいちょい飲むようになってしまった
仕事はまだちゃんとこなしているし断酒の会にもちゃんと行っているが
飲んでいる事は黙っていた

だが長年の大量飲酒でもう内臓は弱り切っており
やめていた筈の酒をまた急に飲み始めた事により彼は倒れてしまった

救急車で病院に運ばれ集中治療室に入ったが虚しくも手遅れであった

彼が残したモノとは何だろう
何も残していないのだろうか

街は当たり前のように賑わい
日常が繰り返されている






ほな!

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