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【ちぎれ雲】 #879



普通に生まれて
普通に学校へ行き
普通に就職をし
普通に働いていたつもりだったのだが
普通な他の人と違い
僕は普通の状態では無く
精神の病いにかかり
普通の生活が送れなくなってしまった

同じ職場の人は
普通に今も出勤し
普通に仕事ができているのに
どうして自分だけ
普通では無い状態になってしまったのか

分からない
分からない
いくら考えても
分からない

不公平さを感じる

他の人より
むしろ頑張って
働いていたつもりなのに
なぜ神様は僕に
ご褒美では無く
病いという
難題を吹っかけてくるのか

パニック障害?

人の集まる所に出られなくなった

仕事も長期休暇を頂いたが
一向に改善が見られず
ウツ病にもなってしまった

薬を飲み
家の中でゴロゴロし
妻や子供たちに
しめしのつかない毎日を送る

特に上の娘など
パパっ子だったので
学校から帰ると
真っ先に僕の所へ来て

「今日は気分良く過ごせてる?」

毎日気にかけて話しかけてくれる

ニコニコして答えてやりたいのだが
そんな気分にもなれず
なんとなく時間を無駄遣いしている自分に苛立つ

「ああ
いつもありがとう
学校はどうだった?」

精神の中の
ポジティブを探し
脳に汗をかいて
言った台詞がこんなもんだ

大した事のない言葉なのに
それすら苦痛に感じる

「今日はねぇ
面白かったの
社会の先生がねぇ
授業中ずっと
社会の窓を開けっ放しで
授業をしてたの
皆んな我慢するのが大変だったの」

「社会の先生だから
窓も開けたくなったのかな」

つまらない
とても
つまらない返しをしている

すまない

「そうかもね」

そう言って自分の部屋へ行った

僕はリビングで一日中
何をやるでもなく
ただボンヤリと過ごしている

猫のミィちゃんは
そんな僕にくっついたり離れたり
時々遠くから
ミャーミャー呼びかける
でも
しんどくて聞き流していた

基本
何もしない
何もできない
妻からも
家の事はやらなくて良いから
そう気遣ってくれる

最初はテレビなんかも見ていたのだが
普通に元気にしている姿を見ていたら
恨めしく思い
テレビは見なくなってしまった


何もせず
ただ息を吐いて吸って
ご飯を食べ
お茶を飲み
決められた薬を飲み

それだけをして存在していた


数ヶ月経って
ようやく先の方に光が見えるようになってきた

前より笑えるようになったし
ネガティブな思考が減りつつあった

家族との会話も増え
これならばもう少ししたら
社会復帰もできる

病院の先生もそうおっしゃって
薬も軽めの物に変わった

もう大丈夫だ



そう思っていたのに
いつもならば
病院も妻の運転で行き帰りしていたのに
調子が良くなったと過信していた僕は
1人で病院に行き
帰りの駅のホームで
通過する特急列車に吸い込まれた


何故そうしたくなったんだろうか





ほな!

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