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ファイナンス(企業財務)の基本⑫:事業価値評価で使う「割引率=資本コスト」について、まとめてみた

前回は、事業(企業)価値評価で使う「割引率」、すなわち「資本コスト」をご紹介しました。
今回は、「資本コスト」について、もう少し詳しくまとめてみたいと思います。

まずは、前回のおさらいです。

資本コストとは(前回のおさらい)

原則としては、「その事業のリスクに応じた割引率」を「資本コスト」と呼び、それが「事業(企業)価値評価をする際に使う割引率」です。

資本コストの中身

では、前回に続いて、「資本コストの中身」をもう少し詳しくみていきます。
企業の資金調達は「有利子負債」と「株主資本」に分けられます。

資本コストの概要

有利子負債(デット)の調達コストは、金利の支払いと同一視することができます。

一方、株主資本(エ クイティ)の調達コストはどうでしょうか?

投資家の立場からみれば、株式を保有することで期待しているリターンとして、インカム・ゲイン(配当)と値上がり益(キャピタル・ゲイン)の2種類があります。

これは、投資してもらっている企業側から考えると、「企業は、投資家に対して配当とキャピタルゲインの両方を合わせたリターンを還元する責任を負っている」とうことができ、これがエクイティの調達コストになるのです。

デットの調達コストを利回りでrD[%]、エクイティの調達コストをrE[%]と表し、 rDとrEをデットとエクイティの量に応じて平均(加重平均)すれば、企業が全体として投資家から負っている資本コストを求めることができます。

このコストのことを「加重平均資本コスト(WACC:Weighted Average Cost of Capital)」と呼びます(ワックと呼ぶことが多いです)。

事業の現在価値を算定する際に使う割引率は、ここまで説明してきた理由から、実務的にはWACCが使われることが多いです。

具体的には、WACCは次の式で計算できます。

WACCの計算式

上式からも分かるように、割引率(WACC)は、rDとrEの値だけでなく、デットとエクイティの量の比率によっても変わってきます。(節税効果については、また後ほど書いていきます)

なお、簿価ベースのDとEは、B/Sの右側を見ればわかります。

今回は、ここまでにします。
次回、デットとエクイティの特徴ついて、書いていきたいと思います。

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