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吉岡 元気
2024年1月4日 07:58
この春、男は大学生になった。残念ながら当初の希望であった都会にキャンパスを持つオシャレな大学ではなかった。それでも、某県の緩やかな丘陵地帯に立つその大学に男は満足していた。キャンパスにはおよそ平地と呼べる部分はなく、一部のグラウンドや道路など人口的に整備した土地を除き、建物は緩やかな斜面の上に立っている。そうした平地の少ない事情もあってか建物同士は離れて建築されていることが多い。各建物がまるで独
2021年9月8日 13:44
「ここはどこだろう。」ぼんやりとあたりを見渡すと、ここは花畑のほとりだ。ゆるやかに流れる小さな川の側に僕は立っている。河原はない。水が花畑のギリギリまで流れているような小川だった。北海道で見たような景色だなと考えていると、突然背後から声を掛けられた。「お疲れ様です。さぁ、こちらへどうぞ。」ギョッとして振り向くと、そこには笑みを浮かべた老婆が立っていた。まるで日本昔ばなしに出てくるお婆さ
2021年9月4日 07:35
「何味がいいかな?」まるでコンビニでガムを選ぶようなトーンで、彼はのんびりと尋ねてきた。その時、僕は一体どんな顔をしていたのだろう。どうやら僕は今から二回目の死を受け入れることになるらしい。ここは死術室。死を受け入れる部屋だ。もちろん「死術室」なんて言葉を最初から知っていたわけではない。++++「それでは死術室に向かってください。あちらの通路を進み、つきあたりの部屋です。」黒縁
2021年9月3日 06:51
「なぁ、淫行条例義務違反って法律なかったっけ?」深夜二時。大学時代の仲間たちと楽しく盛り上がった鍋パーティーは数時間前の終電をきっかけにお開きとなり、間接照明で薄暗くてらされた部屋には、この部屋の主で幼馴染でもある田中と私の二人だけが残っていた。すでに話すことも無くなっていたが、旧友との久しぶりの再開だ。このまま話を終わらせて眠ってしまうのも惜しい。田中もそんな空気を感じたのか、ソファに寝っ転