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EP.5 刃物が枕元に⁉ケアマネ事業所立上秘話‼

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介護無資格、未経験の元部品メーカー研究者の無謀な挑戦!上場企業の理系研究者からリスクしかない起業をしたナラティブです。

訪問介護事業開始から1年、お客様支持率が上がって来た時にぶつかった壁。方針転換と理念共感採用と未経験者育成へとつながるエピソードです。



◆お客様からの要望に応えるための方針転換

すったもんだのドタバタ劇を日々繰り返しながら訪問介護事業も1年が経ち、有難いことに仲間も20名を超え、仕事も順調に軌道に乗りました。そんな最中、一本のお電話がありました。

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「いきいきらいふさん?〇〇さんのとこに行ってるわよね。よくやってくれる若い子が来てくれてるって、〇〇さんに聞いて。うちにもお願いできる?」

「はい、喜んで。ところで、介護認定は出てますか?」

「役所で申請はしてきたわ、まだこれからだと思う。」

「では、ケアマネさんを探す必要があるので、役所からもらった事業所リストから問い合わせてみてください。よければ、私たちのお付き合いのあるケアマネさんに声かけてみますけど」

「お願いするわ。」

「かしこまりました。では、お時間頂きます。また、ご連絡しますね。」

と、こんなやり取りの後、私たちが懇意にしているケアマネさん10名くらいに声掛けしてみました。

介護保険制度は複雑な仕組みでなかなか要介護高齢者やご家族様が理解するには難しい為、介護プランを作成するケアマネジャーと言う専門家がいます。介護サービスの相談や要介護認定の申請代行、医療従事者・サービス事業者との連絡調整や保険点数管理、保険の代理請求業務のほかに介護プランの策定を行ってくれる人たちです。

起業当時の介護保険制度の導入初期は、このケアマネ事業所(居宅介護支援事業)と訪問介護事業所の併設開設がトレンドでした。理由は簡単、ビジネスとして集客窓口がケアマネでサービスをつなげやすいからです。しかし、私たちは、思いをもって起業したので自社にケアマネを置くことは自分たちの活動の幅が狭くなると考え、地域のケアマネさん達と繋がる為に居宅介護支援事業は行わない方針をとっていたのです。

知り合いのケアマネさんにプランの依頼をお願いしたところ、全滅・・・。「よくやってくれてるから、引き受けてあげたいんだけど・・・、空き(余裕)がなくて、ごめんね。」ほぼ、この回答。

介護保険制度の導入初期は、とにかくケアマネ不足。ケアマネさん一人で70~80人担当するなんてザラでした。(今は概ね30~40人に抑えられている)

なくなく、お客様に事情を説明し、引き続き探すことをお約束。こんなケースが2,3回立て続いた時に友人である当時の社長が、「おかしい!!なんで希望されているのに引き受けられないんだ!!」となり、解決するために方針転換して社内にケアマネ事業所立ち上げることにしました。

◆未経験ケアマネジャーの限定採用⁉

こうなったら動きは早い。認可指定申請の準備と共に求人応募です。新聞折込求人中心の時代ですので、出せばそれなりに問い合わせが入ります。

が、「新規の立ち上げなんです。どうでうすか?」この一言が悪魔のワード。「私には無理」「立ち上げは荷が重い」「他にケアマネはいないんですよね」「介護1年しかやってないんですか⁉」「あなた達、大丈夫?」とまぁ、ネガティブ、マイナスワードのオンパレードにつながりました。

そこで、友人から「知り合いのケアマネ、引き抜くか?」と言われたのですが気乗りしませんでした。確かに手っ取り早く立ち上げるには、私たちのことをよく知ってくれているケアマネさんに協力頂くのが最善だったのかもしれません。ただ、私としては1年訪問介護でお付き合いしてきたケアマネさんが私たちの目指す介護や方針で動くイメージが持てなかったのです。

「いや、俺は素人がいい。出来れば資格取り立て未経験者!!」

友人からは「でもどうすんだ、誰が面倒みる?」と訝し気でしたが「俺が一緒にやるから」と未経験者限定で押し切りました。採用は難航しましたが、介護福祉士として介護キャリアの長い資格取立ての50代女性のお一人だけが「私でよければ、協力します」と申し出てくれました。おおよそ立ち上げには向かない心優しい穏やかな女性でした。

「是非!、私が全て一緒にやりますのでお願いします!!!」

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と採用が決まったところで、すぐに本屋へ直行。【居宅介護サービス計画書の作り方】の書籍を購入し、ケアマネの勉強を始めることになります。何にもわからなかったので・・・。

◆居宅介護支援事業の顧客第一号は困難ケース⁉

そんなこんなで、何とか事業認可をもらい訪問介護の現場も行いながら、ケアマネさんにべた付き同行。挨拶回りや営業含めすべてをサポート。ケアプランの文言チェック(赤ペン)などもロープレで行いました。介護経験は浅いですが、文章校正や表現の指導は前職でスパルタトレーニングを受けてきたので、こんなところで役に立ちました。

そんなある日、記念すべき第一号顧客となる方からお電話が!

「もしもし、お宅にケアマネいる?俺は、寝たきりなんだけど、うちに来ていたヘルパーさんがもう来れないと言って、来なくなって3日も経つんだ。」

「えっ!?寝たきりなんですよね。動けないってことですか?ケアマネさんは?」

「そう、動けない。ケアマネももう支援はしないと言われて、連絡つかなくなった。」

「すぐに、お伺いします!!」

住所を聞くと事業所から徒歩3分程度の場所で、当社のケアマネさんとすぐ訪問しました。入口でお声をかけると、内から「鍵は開いているから入っていい」と言われお邪魔することに。古びたアパートの1室1Kで6畳の和室に布団が敷いてあって、寝ておられました。

「〇〇さん、先ほどお電話頂いて、お邪魔しました。大丈夫ですか?」

すると、その男性はむくっと起き上がったのです!!布団の上に胡坐をかいて座りこちらに向かって「おう、困ってんだ、急にヘルパーもケアマネも来ないっていいやがって。」 寝たきりじゃないじゃん!!!!と心の中でツッコミながら周囲を見渡すと

錆びかけた包丁が3本⁉ 枕元に・・・。

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絶句、ヤバいところにきた・・・。当社のケアマネさんが怖がらないように、相手を刺激しないように包丁の理由を聞くと護身用においてあるとのこと。なんでも大家が家賃の取立てにくるから、これで脅してやるんだと言われ、「護身ではなく犯罪ですよ」とは言えず、刃物があると話ができないと説明して片付けさせてもらうことにしました。

その後の状況を聞かせてもらい、寝たきりの意味は、いつも布団にいるということらしく年相応ではありますが歩行も確認。改めてケアマネとしてお引き受けする契約を交わして支援をすることになりました!!この後の支援も波瀾万丈の出来事があるのですが、それは想像にお任せします。

後日談で、この方が生活保護を受けていることが判明し、保護課のケースワーカーに挨拶しに行ったら「なんで勝手に引き受けてるんですか!!あの人はもうほっといていいんですよ、どうなっても知りませんよ」となぜか大目玉を食らうことに・・・。そんな理不尽な。

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お困りであれば、何とかするのが私たちの使命。ケアマネさんとの二人三脚の始まりです。いろんな人の人生が見え、その経験が自分の人生を豊かにしていく。刺激たっぷりの在宅支援は、同じものは2つとないビックリ箱を開けに行く感じです。メチャメチャ面白い!!

さぁ、皆さんはこの話から何を感じますか?

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