きょうも思い出させてくれるな
年末の追い込みで1分1秒を争う日に、仕事をサボってここにきた。
人生で忘れられない人たちがいる。その多くは、会うことも連絡を取ることもなく、ただどこかで生きているという情報をそれとなく確認するだけで、ちゃんと頭の片隅に存在し続けている。
その中に、一年に一度ほど、ふとメッセージを送りたくなる人がいる。今年も遠慮なく送ってしまった。
返事が欲しいわけでも無理に会う約束をするわけでもない。「わたしはきみを忘れてはいないよ」ということを一方的に伝えたくなる、そんな人。
彼女は、きっと今日も笑っていない。たとえSNSに載せた写真が笑っていても、笑っていない。そのことをわたしは知っている。知っているだなんて烏滸がましいことも十二分わかっている。
人間の、「生きる」の意味をわかりあってくれたその人は、前にこんなわたしの幸せとその裏側すらも表裏一体としてそっと抱きしめ、やさしい言葉をかけてくれた。わたしはそれで満たされて、今日まで満たされ続けている。
わたしの甘えなのかもしれない。思いやりを投げかけたように見せかけて「ちゃんと生きてるよ」って言いたいわたしのエゴなのかもしれない。遠くにいて、でも頭の片隅で甘えさせてもらってるなんて、これは素敵なことね。
そうした何人かの思い入れのある人たちが、入れ替わりたち変わる。誕生日をお祝いしたり、近況に一喜一憂するほど器用ではないくせに、頭の中の彼ら彼女たちに時折想いを馳せて、わたしは目の前の誰かに依存することを避けているようにも思う。
いつだって、たくさんの人を愛している。それは本音で、わたしが旅をしてきた、泳いできた世界には抱きしめたいものたちがあまりにも多すぎる。
そんなものたちに、時々こうして足止めを食らう。思い出すことをやめさせてくれない幸福は、わたしが培った人生の最高のプレゼントだ。
31年を背負って、今年も2023年を終える。またね、今日の愛。
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この世に絶望するくらいなら考えるのをやめて自分を愛せ