「私たち、すごくない?!」高校生がゼロイチで立ち上げた「食」の国際交流
高校生の社会実装支援プロジェクト「MIRAIB.」(ミライブ)。「やりたい」をカタチにしたい全国の高校生と、ビジネス経験の豊富な大人たちが集まった「部活動」です。
トキワ松学園高等学校の3年生5人は、MIRAIB.に参加し、食事を入口に子供たちの国際交流を後押しする「グローバルキッチン」をイチから立ち上げ、これまでに2回、小学生向けオンラインイベントを開催しました。
そこに至るにはどんな道のりがあったのでしょうか。メンバーに話してもらいました。(敬称略)
「GBC」が発足した背景には、播磨さんが英語の勉強を始めたころの思いがありました。
播磨:英語を勉強したのは中学校からで、周りの子の海外経験や英語学習の経験の差に戸惑いました。だから海外出身の人と話す機会があっても、緊張して何も話せなくて。なじみのある「食」を通じて、小学生の頃から海外の人と触れ合う機会があれば、と思ったんです。
担任の先生に相談すると「学生団体として活動すればみんなの意見を聞けるし実現しやすいと思う」と助言いただき、同じ志を持ったメンバーを集めて「GBC」を発足させました。MIRAIB.を知ったのもちょうどその頃で、参加を決めました。
「GBC」はトキワ松学園高等学校では初の学生団体だったそうです。播磨さんの「やってみたい」に刺激され、4人の仲間が集まってきました。
能谷:もともと寺主催の「こども食堂」のボランティアをしていました。そこでの経験を活かしたいと思って参加しました。
安部:大学進学に向けて国際交流してみたいと思っていたところに、播磨さんが声をかけてくれました。英語も最初は苦手でしたが、この活動がきっかけで「もっと英語やってみよう」という気持ちになりました。
林:途中から参加しました。調理部に入るくらい料理が好きで、子どもも大好き。将来やりたいことを考える一つの経験として、参加したいと思いました。
5人は周囲の協力を得ながら、実現へと動き出します。まずは様々な人たちに話を聞きに行ったそうです。
播磨:能谷さんが参加する「こども食堂」に行ったり、校長先生に企業の取締役を紹介してもらったりしました。「高校生でもできることがあるのかな」と思ってたんですが、その方から「とりあえず1回やってみれば、それで学ぶこともあるから」と激励されて、1回目のゲストのベトナム人の方を紹介してもらいました。
参加者を集めるためにチラシを作り、自分たちが卒業した小学校や、トキワ松学園小学校に配りました。
2021年12月はベトナム人とフォー、2022年2月にはタイ人とガパオライスの作り方をオンラインで紹介するイベントを開催しました。
播磨:本当に来てくれるか不安でしたが、無事集まってくれて開催できました。
2回目は大田区内の国際交流団体にタイ人の方をご紹介いただきました。1回目に参加した2人の小学生が、2回目も参加してくれたのが嬉しかったです。
話は本番前に戻ります。本番で楽しんでもらえるよう、参加者に共有するためのレシピや調理動画の制作を進めていきました。
村木:ゲストとは事前に作る料理や全体の流れを打ち合わせました。1回目はベトナム人の方の調理の様子をキッチンで撮影しました。家庭料理ということもあり、調味料は目分量で調理されていたのを、私たちがレシピ用に分量を書き起こしました。
播磨:2回目のイベント準備は新型コロナの感染拡大とぶつかり、すべてオンラインで収録しました。ゲストのタイ人の方から送っていただいたレシピを使って、オンライン越しにメンバーで話しながらガパオライスを作りました。
能谷:動画はスマホのアプリを使ってみんなで手分けして編集しました。シーンごとに何個かに分けて字幕を入れ、あとからつなぎ直しました。調理中の映像は私の兄がスマホを持ち続けて上から撮ってくれました。
安部:普段全く料理しないのですが、オンラインでつながって料理したのが新鮮で楽しかったです。次もやってみたくなりました。
村木:このイベントがきっかけで、初めてYouTuberみたいなことをしました笑。
「GBC」ロゴやチラシ制作は安部さんが担当。クエイエイティブのスキルもついたといいます。
安部:デザイン系はもともと好きで、経験はそれほどなかったんですが、パソコンにアプリをインストールして「こんな感じで作りたい」と手を動かしたらパッとできました。
最初はチラシも片面だけで、情報も少なめでしたが、1回目の開催後にMIRAIB.のオンラインセッションで受けたアドバイスを参考に、2回目は裏面にも情報を載せました。
イベントの参加者は子供ですが、開催情報を見るのは親なので、見た時に安心すること、子供にやって欲しいと思う情報を入れました。必要な材料やレシピも載せて、キャッチコピーには「簡単」という言葉を選びました。
温めているアイデアや企画を実現させるためのヒントを得られる場がMIRAIB.で毎週開かれる「オンラインセッション」です。企画で行き詰ったり、助言が欲しかったりする時に参加し、企業の第一線で働く「サポーター」や他のチームからアドバイスをもらいます。
播磨:的確なフィードバックをもらえる場でした。参加者の個人情報を集める際のプライバシーポリシーの準備や、集客のコツを助言してもらいましたし、開催後の反省点も明確になりました。例えばSNS広報。指摘で不十分だったと気づき、親世代に見てもらうためのSNSアカウントを作って集客に力を入れることにしました。
村木:自分たちだけでは気づけなかったアドバイスをもらえました。人生経験の豊富な大人の意見は「ここを直せばもっと良くなる」「こうしてみよう」と思うことばかりで、次につながることを教えてもらえました。
安部:他チームと「実現したいけど、どうやったらいいか分からない」という不安を共有できる場でした。「これやってみたいけど、どう思う?」と話せる相手がいることで精神的に安心したし、すごく救われました。役に立つ助言もさることながら、温かな雰囲気で何でも話せるし、やりたいことをやってみようと思える空間が好きでした。
林:MIRAIB.は精神的に大きな存在でした。実現したいことはそれぞれでも、未来をよくするとか、誰かのために何かをするとか、同じ目的を持って活動する学生たちの姿を見て、もっと頑張ろうと思える場所でした。他チームの準備のプロセスも聞けて学びになりました。他のチームから、「食」だけでなく、スポーツや音楽などでも開けるよね、とアイデアをもらいました。
5人は3月20日、MIRAIB.の実践共有会で、グローバルキッチンでの取り組みを発表しました。
村木:他チームの、それぞれの「やりたいこと」がすごく面白かったです。「認知症のおばあちゃんのことをもっとみんなに知ってもらうためにボカロ曲を作りたい」という発表が特に印象的でした。
播磨:当日別用で参加できなかったので、発表の準備を手伝いました。メンバーと電話で発表原稿の内容を相談している時間が、これまでの振り返りにもなって、自分たちが何をしたいのかを改めて考えるきっかけになりました。
能谷:食のイベントを2回開催できて充実していた分、時間内に収めるのが大変で、パワポや原稿を何度も練り直すうちに時間がギリギリになってしまいました。でも新しく得られた知識も多かったです。
林:原稿作業は「なぜ自分たちがこの活動をしたいのか」「なぜこの考え方に至ったのか」を振り返る時間になりました。また、他チームの具体的な実践内容をこの場で初めて聞けたので、自分たちの行動を決める参考にもなりました。
安部:ホームページの作り方も個人情報の取扱いも分からない段階から、助言を受けつつ少しずつ前に進んで、ついに発表にこぎつけるなんて「私たちすごくない!?」って気持ちになりました。すごく楽しくて大きく成長できました。
3年生になってもGBCの活動は続きます。すでに3回目の開催も計画しているそうです。
村木:受験で忙しくなるまでは続けたいです。2年生の3学期にカナダに留学した時、現地で知り合った小学生にオンラインで参加してもらって、英語を使った国際交流のイベントをやってみたいと思っています。コロナが落ち着いたらリアルイベントをやりたいです。
播磨:「受験が終わったら終わり、は悲しいね」と話しています。大学生になっても、できるだけ続けていけたらいいなと思います。
「やりたい」のその先を作ろう
MIRAIB.参加校募集
教育と探求社のメンバーは、ステキな「やりたい」を持つ生徒たちにたくさん出会ってきました。
「世の中にこんなサービスがあれば楽しそう」「こういう道具を作って困っている人を助けたい」「こういう仕組みがあれば便利になるのに」
でも、せっかく良いアイデアが生まれても、その多くは実現しないまま埋もれていきます……なんてもったいない!「やりたい」の、その先を作らなければ。そこで三菱みらい育成財団の助成を受け、2021年から始めたのが「MIRAIB.」(ミライブ)です。
アイデアを持つ全国の高校生がビジネス経験が豊富な大人たちがオンラインでつながり、実現へのヒントや、行き詰まりを打開する方法など、様々な視点で助言を受けながら「小さく作って試す」を繰り返し、「やりたい」のその先を目指します。参加者同士、たくさん刺激を受けられます。
プロジェクト概要
期間 2022年5月~2023年3月
対象 実現したいアイデアをもつ高校生(高校単位の参加となります)
参加費 無料
申し込み・問い合わせ 教育と探求社 MIRAIB.運営事務局 bi@eduq.jp
※学校単位でのお申し込みになります。5月の開始以降も随時参加申し込みできます。
ねらい
・探究活動を一歩進め、実社会での実践へ
生徒の活動をチーム内ディスカッションや調査のみにとどめず、実社会での実践へ。活動の基盤となるプログラムと行動に移すためのヒントを得るセッションを通じ生徒が自ら社会に働きかける、はじめの一歩を支援します。
・生徒の主体性を第一としながら、さらに一歩前へ進むきっかけづくり
生徒が自らテーマとチームをつくって活動に参加。「小さくつくってためす」アジャイルと、マイルストーンにより活動を促進。サポーターや他チームからの刺激も受けながら、目指すステージに進みます。
・実社会との関わりを通じて、生きる力を養う
社会生活が断絶されうる時代にこそ、社会に自ら働きかけるきっかけを。
ビジョンを形にし、ステークホルダーとの対話を通じて、社会のダイナミズムに触れながら、仲間やサポーターが見守る中で失敗も学びに変えていきます。
活動内容
生徒は、活動のフレームワークに沿って各自で企画の実践していきます。ビジネス経験の豊富なサポーターにSNSやオンラインで適宜相談できるほか、週1回、サポーターと対面でつながるミーティングも開かれ、必要に応じて参加できます。ミーティングでは企画実現に向けた進捗状況や相談事項を共有、サポーターや他校生徒からフィードバックを受けられます。数カ月に一度、実践内容を共有する会を開きます。いずれもオンラインでの開催です。
<年間予定>※変更の可能性もあります。
・キックオフMTG(5月15日(日)14~16時・ZOOM・予定)
・活動開始(2022年6月~2023年3月)
ープログラムに沿った企画立案・実践活動(生徒による自由活動)
ー企画の社会実装に向けサポーターに適宜相談(オンライン・SNSを想定)
ー対面での相談はサポーターセッションに参加(週1回程度、平日放課後。自由参加)
・実践共有会(8月・12月・3月の土日祝日午後を予定。活動進捗に合わせたエントリー制)
・振り返りヒアリング(2023年2月以降)
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