この書物は、物語作家のための手引きです。第1章「自分の文のひびき」から、初心者を寄せつけない壁があります。というか、けっこう無理なことをしています。文章を音読して文体のリズムを読み取るよう、著者が要請しているにもかかわらず、そのための例文が翻訳文であり原文ではないのです。
しかし、主旨はわかります。スピリチュアルかつ哲学的な内容です。
語り手であるためには、自分のリズムを知らねばならないのだ。
ル=グウィンは、リズムある文体の書き方について述べるとき、イギリスの小説家ヴァージニア・ウルフの考え方を、よく引用しています。
もしも、そのリズムが、哲学者ベルクソン用語の「純粋記憶」にあるなら、
語り手の「純粋持続」が、リズムを励起していることになります。語り手の内で、語る意図を設定しなければ、リズムは生じないということになる。
以上、言語学的制約から自由になるために。つづく。