見出し画像

思い出がブランドを創る。わざわざ足を運ばせるファンづくり。

Voicy No.0102 2022年1月10日放送
「思い出がブランドを創る。わざわざ足を運ばせるファンづくり。」

聖地があるのがブランド。


ブランドは「これじゃなきゃダメ」というような、相対比較を超えて選んでくれる方との関係です。ですから宗教はブランドなのです。

比較して、損得で「得があるから、この宗教を信仰する」という方はいません。キリスト教にしても仏教にしてヒンズー教にしても、完全に比較を超えて「私にとっては、これじゃなきゃダメ」ということで、信者になって信仰していると思います。

地球上最強で最もファンが多いブランドはキリスト教です。宗教に関しては、ブランドづくりの観点からまあまあ研究をし続けていまして、いいブランドの構造とかあり方と宗教というのは、ほぼ一致するのです。

その中で、宗教でもすごく大事なポイントがあります。

まずブランドには「聖地がなければダメ」です。聖地があるのがブランドで、エルサレムでは聖地の取り合いで戦争が起こるくらいです。

聖地というのは例えば教会とか神社とかお寺といったところになりますが、人が自分の好きなものを表明し確認するためには、聖地があったほうがブランドは強くなります。

ですから最近BtoCブランドやネット専業のところも、リアルな場所を持とうとしているのは、聖地化してブランドを強めようとしているからでしょう。

ZOZOが聖地としてのリアルの場所を持っていないのは弱点だし、ユニクロとZOZOが戦ったら絶対ユニクロが勝ちます。お店という聖地があるからです。

聖地というのは、ずっと常設されていなくてもいいのです。

アニメとか漫画とかゲームのキャラクターを元に、それを漫画や商品にして売る「コミケ」というものがありますが、コミケは、そういう漫画好き、アニメ好きの聖地です。年に2回ぐらいやっていて、それに行くことで自分の「好き」を行動として表明しています。


五感を使い、思い出を重ねる。


ここまでが先に説明しておきたかったことで、今日の話というのは「思い出がブランドを創る。わざわざ足を運ばせるファンづくり。」です。

何が言いたいかというと、思い出がブランドをつくる際に、「効率とか便利さを追求するところ」と「非効率やコストをかけるところとか、無駄さが価値になるところ」の見極めを間違ったらダメという話です。

今はスマホがあるから何でも指一本で買えますが、思い出は五感全部を刺激するからこそ残るわけです。ですから簡単だと五感が全部刺激されなくて、出来事として体に刻み込まれないから思い出が浅くなります。するとブランドとの思い出が浅くなるので、ブランドを強くしていこうと思ったら、思い出をつくってもらうために本当はちょっと手間を掛けてもらったほうがいい。

今はやりのOMO(オンライン・マージズ・ウィズ・オフライン)という言葉があります。オンラインとオフラインの融合のことです。

ネットショップがリアルな場所を用意して、リアルな場所で見ていても、そのままスマホで買うというECと店舗という分け方ではなくて、それが連動しているような売り方が2020年ぐらいから話題になっていて、アメリカからb8ta(ベータ)というお店が日本に入ってきています。

お店では見るだけ(ショールーミング)で買うのはスマホということで、規模が大きくないBtoCブランドが商品を店舗に置いて、店舗で見た人が店員の接客よりもネットでの情報を見ながら実際に触ってみて買うことが、OMOという概念を実践していると最近表現されているのです。

このリアルとECの融合を販売手法やテクニックとして見るのか、それともブランディングというファンづくりとして見るのかで見方が変わってきます。

ネットで売れているものやネットを通して情報提供しているものこそ、OMOのようにリアルな場所を定期的に用意して、直接肌に触れて、匂いとか音とか感性も含めた五感で思い出づくりをやったほうがいい。

炊事遠足のカレーは、おいしいと思いますよね。オレは料理ができないから、炊事遠足のときは「コテツ君は火起こしやって」みたいなことで火起こしをやる。火起こしするなんて効率が悪いでしょう。ガスコンロなら一発で火が付くのに、わざわざ薪を引っ張ってきて、みんなで時間をかける。炊事遠足のカレーとはそういうものです。

でも、みんなでかけた時間とか、火が付いたとか付かないとか、ジャガイモを洗いに川まで行ってくるという意味不明の手間を掛けながら、鳥のさえずりが聞こえ、夕暮れに夕焼けが沈んでいくところでたき火が燃えている感じを含めて思い出が深くなるから、炊事遠足のカレーが刻み込まれるわけです。

だって、ただのカレーだものね。

そういう五感全部を使ってもらうような状況をつくることが思い出になり、思い出を積み重ねていくことがブランドとしての強さになります。


わざわざ足を運ばせる。


ジャニーズは本当にすごいビジネスだとオレは思っていて、東京ドームの横を通ったりすると、コンサートの前の日からお客さんが並んでいます。大行列で並んで何千人という人がグッズを買っているのです。

グッズは、うちわとか、タオルとか、ペンライトとかです。「ネットでいいじゃん!」という時代じゃないですか。でも、そうではないんだな。その場でしか売ってないから、もちろんそこに買いに来きます。

ネットで買えるなら来ないけど、それをわざわざ友達とかファンの皆さんと集まって買うところが思い出になるのがわかっているのです。ジャニーズのブランドのつくり方は、ものすごく考え込まれています。

ユニクロとか無印良品は、ECの比率を頑張って上げています。

ECには店頭受け取りがあって、クリック&コレクトともいわれます。それにはデータがいろいろあって、ざっくり言うとECの3分の1とも5分の1ともいわれているのです。ユニクロで買った何十パーセントの人は店頭に取りに行きます。

これはどういうことかというと、店頭に取りに行くと、ほかの商品も見てくれるだろうということです。聖地に足を運んでもらうことで体感してもらう機会をつくっているから、便利にしたらダメなのです。

「便利にしたらダメ」という話は、別な回でしようと思います。

思い出をファンの方とつくっていくことが、ブランドの熱さにおいてはとても重要です。わざわざ足を運ばせるとか、便利じゃないところで手間がかかることをやるとか、そういうのも一緒にやっていったらいい。そうすると、そのプロセス自体が商品になるというところです。

久々野智小哲津でした。

本文は
コテツがVoicyの「ブランディングと商売の話」で語った内容を
文章化し加筆したものです。
Voicyアプリをダウンロードして『コテツ』で検索、無料で聴けます。
上のVoicy音声は
こちらからどうぞ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?