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ブランドのあり方って、経営理念のこと??

Voicy No.0096 2021年12月27日放送
ブランドのあり方って、経営理念のこと??


思想、哲学、スタイル、センス。


ご質問を頂いています。

コテツラジオは、コメントを入れていただいたら必ず見せてもらっています。いい質問が多くて、ほぼ全部答えたいぐらいの感じです。今日は複数の方から頂いていて結構共通点がある内容に対して、触れさせてもらいます。

まず1つめの質問がケンタウロスさん。

これは『どうあがいてもいい雰囲気にはかなわない。という残酷な事実』という話について頂いたコメントです。

「毎回、興味深く聞かせて聴かせていただいております。よい雰囲気、大事ですよね。
私は地方在住でサラリーマンですが、妻がトリマーで自営をしています。自分がお客様として行ったときに気分が上がる。そんな店をイメージしてトリミングサロンをオープンし10年目になりました。
その店にいくことで気分が上がるという要素はブランドとして不可欠ではないでしょうか。それはそのとき、お客様にライフスタイルを提供しているのと同じだと考えているからです。コテツさんのご意見を頂けたら幸いです」。

今日は徐々にメインテーマに寄っていくので、最初はご質問を1つずつお話しさせてほしいです。

コメントでも返信させてもらいましたが、奥様がトリミングサロンをオープンして10年目になったのはすごいことです。店舗ビジネスの10年というのは素晴らしいと思います。本当にいいお客様との関係が築けているブランドですよね。

ブランドというのは、めちゃくちゃ有名だとか規模が大きいとかではないので、おそらくケンタウロスさんの奥様がされているトリミングサロンは「ここじゃなきゃダメ」という方がいるということです。ファンがいないと10年続かないので、これはブランドですよね。

ケンタウロスさんが言われるように、「自分がお客様として行ったときに気分が上がる」というのをイメージしているは、めちゃくちゃ的を射ている狙い方だと思っています。

正直、残念ながら素人には技術の差がわかりません。それはトリミングに関してわからないのではなくて、ほかのものも全部わからないんです。トヨタ車がいいと言っているけれど、トヨタ車とマツダ車とダイハツは、目をつぶっても区別が付きませんよね。

なので、「なんかよかったな」という裏付けとしてとか、選択する上でちょっとだけ技術的なことが気になったりしても、おそらく購入に至るまでの下限があって、その購入ぎりぎりラインの下限を下回ってなければ、そこから上は正直そんなに変わらないんです。

今は、まずい料理屋さんって本当にありません。ミシュランで星を取ったところのものもおいしいし、コンビニの弁当もめちゃうまくなっている。コンビニのチャーハンとか、味のクオリティーがすごいですからね。

だからコンビニのチャーハンを持ってきて、「三つ星のところのチャーハンだよ」と言って、そのまま出して、どれぐらいの人が「これ、違うだろう」と言うか試したら、いろいろわかってしまうと思います。

ですから、どの世界でも技術はあって当たり前です。技術の見分け方がわからないので行ったときに気分が上がるというのが大事だし、ご質問にあった「ライフスタイルを提供するのと同じことだと考えているからです」というのもその通り。

自分のかわいがっているワンちゃんと一緒に、特別なお出掛けをする中の一シーンじゃないですか。ですから非日常なのです。

それは豪華にしたらいいということではなく、そこへ来たときに、おそらく奥様が接し方と店の雰囲気づくりを含めて、非常にうまくやっていらっしゃるんだなと思います。

「ライフスタイルを提供している」というのも、そのものズバリです。全てのブランドは今、ライフスタイルブランドにならざるを得ないので。

一回コメントでお応えしたらケンタウロスさんから返信がさらに来まして、「厚かましくてすみません」と書いてあるけど全然いいです。

「返信ありがとうございます。気分が上がる店を目指しているわけですが、私が店にいる限りはそこへ向かうことができます」。

ケンタウロスさんはサラリーマンと書いてあるんですが、手伝って夫婦で力を合わせてやっています。

「でも、店を人に任せる場合は、それを共有することが可能なのでしょうか。それっていわゆる起業理念というものになっていくのでしょうか。言葉にすることは難しいと思いますし、その言葉を同じビジョンに合わせることはさらに難しいことと感じます。あつかましい質問、申し訳ありません。それを可能にする方法があれば、ぜひご教授いただければと思います。どうぞよろしくお願いいたします」。

ここで経営理念という言葉が出てくるんですが、確かに10年やっていらっしゃる場合、次の展開は2店舗目を出すか、あるいはビジネスとして別の領域にちょっとスライドして、関連領域で展開するというのももちろん考え得るし、10年やっていれば信頼してくれる方がいるので協力者の方がいっぱい出そうです。

ほかの方に任せるなら経営理念が必要かということです。

さらに経営理念に関して、豆社長さんという方からご質問いただいています。

「会社のブランディングに興味があって拝聴しました。コテツさんのおっしゃるあり方とは、経営理念のことを指すのでしょうか。気になったのでコメントさせていただきました。ほかの回も聴いていきます」。

豆社長さんは『ブランディングってどういうことか??』というので初期のを聴いてくださいました。この後も連続して聴いてほしいです。豆社長さんから、もう1個質問いただいていますが、これはあとでお答えします。

豆社長さんとケンタウロスさんの「ブランドのあり方は経営理念なのか。人に任せるのに共有するのは経営理念なのか」に関してですが、ブランドのあり方と経営理念は全く違います。

まず経営理念というのは何のために用意するかというと、組織や複数の人をまとめていくために必要なので、経営理念を置いているわけです。ブランドのあり方というのは、突き詰めるとブランドオーナーに全て立ち戻ることになります。ブランドの大本はブランドオーナーなので、ブランドオーナーが何を考えて、どういう思想哲学を持っているのかというのが、ブランドのあり方なのです。

ブランドのあり方というのは、ブランドオーナーが持っている思想・哲学・スタイル・センスのことです。これはそのブランドオーナー固有のものです。

もっと突っ込んだ言い方をすると「価値観の押しつけ」です。赤も青も黄色もいいよねではなくて、私は赤が好きだというのがブランドオーナーのスタイル・価値観・哲学で、それぐらいはっきりしたものがあるかないかということです。

経営理念というのは誰もが納得して付いていきたくなるもので、最大公約数的なまとめ方をするのが経営理念。最小公約数どころか、個人に特化したものをまとめていく。そこから出発するのがブランドのあり方なのです。


スタバって排他的で頑固


例を挙げます。

フェラーリにしても、エルメスにしても、とらやにしても、無印良品にしても、スタバにしても、非常に排他的です。決して大勢の人に合わせようとしていません。マーケティング的にとか、お店でお客様に丁寧というのは全く別です。ブランドのあり方としては、めちゃくちゃ排他的です。

「いやいや、コテツさん。スタバはめちゃくちゃ伸びてるじゃん。
スタバの数は多いじゃない?」

数が多いか少ないかではないんです。スタバというのは喫煙室もつくらずに、タバコの方を排除しているから排他的なのです。

さらに
「グランデって何?」
「フラペチーノって何ですか」
「SMLでやってくれよ」
「フラペチーノって何なのか、もっとわかりやすい言葉にしてくれ」。

そうスタバに申し入れても、絶対にのんでいただけない。
これは、これである理由があるからです。

スモールじゃないんです。ショートなのです。
スモールでいいじゃん。
いやいや、ショートなんです、スタバは。

これは、めちゃくちゃ物わかりが悪くないですか。
スタバが展開するところには、おそらくマクドナルドが先に展開しています。先進国の食べ物が入ってきた流れからいくと。Sだったらスモールにしてくれよ。なんでショートなんだと。

あれで恥をかいた人は、いっぱいいると思う。
「スモールで」
「あ、ショートですね」
みたいな。

めちゃくちゃ独善的だと思いませんか。

自分のスタイルと理由があること、哲学があることは、全く変える気も合わせる気もないのがブランドなのです。

経営理念というのは、多くの人が1つになって進んでいくために共同で大事にできるものを設定しようというもので、ブランドのあり方と経営理念というのは、ちょっとつくりも目的も活用も真逆かなと思います。

シャネルはココ・シャネルっていう女性がつくったんですが、黒が好きらしいのです。女性の解放ということで出だしは頑張ってやっていたので、メンズをつくらないらしいです。

これをシャネルに入った社員が、「マーケティング的に、男性もシャネルを着たいじゃないですか。僕が署名活動をして、男性顧客の可能性を探って署名を持ってきます」と言っても、シャネルはやりません。

それは、ココ・シャネルの哲学に基づいているからです。これがあり方です。思想・哲学・スタイル・センス。つまり、合わないんだったら、合わないでいい。フェラーリにしても、赤い車ばっかり出していて非常に排他的というか、頑固なやり方ですよね。

ブランドのあり方の話をしたときに「経営理念ですか」となるのは、日本人には「和をもって尊し」という考えがあって、大勢の人が納得するかしないかから考えをスタートするというカルチャーがあります。

やっぱり大皿料理みたいなアジア特有のというか、アジアがもともと持っている文化と個室文化。子どもと一緒に寝るなんていうのも、ヨーロッパでは早々にやめる国もある。子ども部屋とかお父さんとお母さんの部屋とかね。

日本は居間で古くはちゃぶ台があり、ちゃぶ台を片づけて1つのお部屋に今度は布団を敷いて、今度は寝室に変えてというやり方ですが、ヨーロッパ的な考え方からいうと、個人も1つずつ部屋を持つみたいな考えです。強い個人主義です。

自分はいい悪いを言いたいのではありません。そうやって子どものころから部屋を与えられてくるから、スタイルが出てくるのです。

思い出した。

東京にフランス大使館がありまして建て直しをします。2008年に新フランス大使館が横の敷地にできて、旧フランス大使館で一般の人を入れてアートのイベントをやって、その後壊すことになりました。

フランス大使館に入ると、全部見られるわけです。旧フランス大使館に行ってびっくりしたんですが、全部個室なんですよ。フランス大使館はオフィスなのに個室だらけ。廊下があって小さなお部屋がいっぱいあります。

日本は島型に机を並べて、5~6人でまとまってというのは定番です。ああいうふうにやらないんだよね。これでどうやって情報共有しているのかなというぐらい、集まるところはラウンジしかない。ラウンジはもちろん、レストランとかカフェとか全部を見られたのです。

旧フランス大使館の大使のお部屋も現代アートが置いてあって、新大使館で業務が始まっているときに、旧大使館にはどなたもいらっしゃらないんですけど、見てみたらほとんど個室でびっくりしました。

話は戻ります。

では、ブランドのあり方が思想・哲学・スタイル・センスだといっても、日本人にはほとんどわかりません。特にスタイルというのがわからない。これは本当に、俺もどうしようかと考え続ける日々です。

ブランドのあり方というのは経営理念ではありません。みんなで共有することを目的にしているのではなくて、「私のブランドは、かくありたい」というのが、独断と偏見とセンスと好みによって、まずつくられています。

ある程度組織が大きくなったときに、それを使いやすくアジャストすることがあっても、あり方が変わることはありません。スタバだからルーツなんか変えたくないんです。何十万人がわからないといっても、フラペチーノとかグランデがわかりにくくても、変えたくないんです。もう慣れているからみんなはいいかもしれませんが、俺も最初は困りました。

ちょっと戻ります。

スタイルを考えるときに、日本人はTPOに合わせてとか、年相応とか、自分の所属している組織相応の格好をします。スタイルというのは、自分がどこに行ってもスーツを着ているということ。例えばサヴィル・ロウというオーダースーツの店が集中する通りがありますが、スーツが好きな人はずっと着ていたりするんです。革ジャンが好きな人は、若いときからずっと、じいちゃんになっても着ているわけ。

自分が一緒に仕事しているフランスのショコラティエはフランスの名門一家ですが、60歳超えてピアスして革ジャンを着て、しかも香水を付けてチョコレートをつくっています。これも日本の職人と全然違いますが、まあいいかと思いました。でも、日本人ではあり得ません。

日本人は高級なレストランに行くときに香水は付けません。レストランに匂いがするものをつけて来るなんてと言うけれど、フランスとかイタリアに来るとびっくりするけれど、高級レストランでもめちゃくちゃ肌を露出している服を着ていたり、みんな香水を付けていたりします。

なので、スタイルがブランドのあり方なので、思想・哲学・スタイル・センスをまとめて、ブランドのあり方をまとめる。働いている方と共有したければ、経営理念をまとめることです。

質問に答えます。

ケンタウロスさんの「お店を人に任せる場合は、それを共有することは可能なのでしょうか」ですが、経営理念は親切・丁寧・安心とか、お客様のために全力をということです。これを共有しようとすると、大体みんな「いいですね」と言うんです。

ブランドのあり方はある種先鋭化していないと成立しないので、それだけを共有しようと思っても無理なのです。


新規事業の相談


では、何を共有するのか。

ケンタウロスさんと奥様が持っている価値観の共有が絶対に必要です。ブランドのあり方を説明します。私たちのやっているトリミングサロンというのは、こういう思想・哲学・考え方です。あとはスタイル・センスでやっている。

だからスタイルの面、哲学の面、思想の面は口に出さなくてもいいですが、「ごめん。あなたの好みはいったん置いておいてもらって、いったんこのブランドのスタイルでやってほしい」みたいなことです。

業務上の改善について話しているけど、ブランドのスタイルについては、みんなが言ったから変えることはないですからね。大事なのは価値観を共有することです。

ブランドのあり方をもう少し攻めたら価値観になってくるんですが、価値観は=美意識です。何をいいと思って、何を嫌だと思って、何をダメだと思うかの価値判断だけは共有したほうがいい。スタイルはそれでやっていただく。ブランドのあり方については、その方向性でやっていただく。

お店をどなたかに任せて、先々は独立制度とか、のれん分け制度をつくるのであれば、そのときに個性を出してもらうことです。価値観が合う人というところです。

ケンタウロスさんと豆社長さんの経営理念についてのお答えは、ここまでです。

豆社長さんがもう一個質問してくれて、面白い質問なのでお答えします。

「ダメ元で質問させてください。30期ぐらいを迎えるオーナー法人会社の後継予定です。ほぼ家族経営。商社業みたいなことをしていて、製造メーカー様向けに材料を卸したり、製品の製作請負をしたりしています。(ほかにもありますが省く)新たな付加価値の創造といった中で、僕自身が好きなアニメ漫画イラストといったものと商社を掛けて、新しい価値を作り出せないか模索しています。
 コテツさんならどんなことを考えますか。もしよかったらアドバイスを頂けたるとうれしいなと思ってコメントしてみました」。

こういう勇気が大事ですよね。答えます。

まず、発想や着眼点はめちゃくちゃいい。今はノンカテゴリーの時代なので、「うちは何々業なので」みたいなことを言って、その道だけでやっていければいいです。でも、ノンカテゴリー・クロスジャンル、異種格闘技戦なのです。もうどの領域も「うちの業界」に関係ないところが、ばんばん参入しています。

豆社長さんが付加価値の創造というところで、「好きな漫画・アニメ・イラストと商社を掛けた新しい価値をつくり出せないか」という出だしも、めちゃくちゃいい。最初に現実的なことから考えたら、アイデア自体、つまらないことしかできなくなってしまうんです。

俺はこういうご相談が来たら、実現する方法をいったん全部ぶっ飛ばして、理想からいきます。この豆社長さんは迷ったと思う。製造メーカー向けに材料を卸したりしている会社を継ぐ可能性が出てきているのに、アニメとか漫画とかイラストという。これってズレてるのかな。角度に迷っているなぐらいの感じだと思いますが、これがとても大事です。

自分はアニメ・漫画・イラスト・商社を掛けて新しい価値をつくり出すことは、できると思います。できる前提で俺はいきます。

アニメ・漫画・イラストは、おそらく好きでいらっしゃるのであれば詳しいかと思うんです。釈迦に説法的なところはありますが、今一番ワールドワイドに日本が場所を越えていけるものは、アニメと漫画だったんです。

俺が子どもときなんて、「漫画ばっかり読んでないで」「中学生になったら捨てるわよ」とお母さんに怒られて、大事にしていた漫画をいつの間にか捨てられて親子けんかになったりしました。

それぐらい漫画というのは子どものもというか、「たかが漫画」という感じでしたが、結局、世界を席巻しているのは、日本の漫画・ゲーム・アニメですからね。

商社と今やっている業態を無理やりくっつけたほうがいいかはわかりません。しかしビジネスの形態として、漫画とかアニメ、イラスト的なものを仕入れて卸すことだけに固執しないほうがいいと思います。

というのは、アニメとか漫画とかイラストで一番強いのは、ITといって、大本の権利自体を所有して展開することがビジネスを大きくするためにものすごく大事なこと。ほかの方が描いたもので権利が全然ないものを商社的に仕入れて卸すというのは、ビジネス的にあまり儲からないかもしれません。

会社の規模とか、豆社長さんがやりたいスケール感が全然わからないので、理想からいけば、自分のところでITを保有します。ITでアニメや漫画自体のキャラクターを保有して、それを展開できれば、ビジネスの展開としては一番望ましいと思います。

やれそうか、やれなさそうかを考えるよりは、「これがやれたら、ものすごく変わるんだけどな」から入って、こういうふうにプロとか、その辺に知見のある方にどんどん話に載ってもらったほうが、実現の可能性が高い。そうやったらいいんじゃないですか。

自分のところに来るクライアントで代替わり案件と僕は言っています。代が替わるときにうまく会社を引き継ぎたいというのでご相談が来て、今も3つか4つ、代替わりをやっているんです。

機械の卸商社だったところがアニメとか漫画のビジネスを急にやると、周りが理解してくれない場合が結構あったりします。その場合は別会社でやるという手もあるので、その始め方のときに、世の中から批判や疑問が来ないような工夫はしたほうがいいですが、めちゃくちゃ面白いと思います。

今比較的安くYouTubeアニメもつくれるので、ノンバーバル(言葉のない)アニメをつくれば世界中の人が見てくれるので、そういうのを自分のものでやるのはありです。もちろん、どなたかに描いていただいて権利を共同所有します。

これからも皆さんから頂いたご質問等にも、できる限り答えたいと思っております。

以上、久々野智小哲津でした。

本文は
コテツがVoicyの「ブランディングと商売の話」で語った
内容を文章化し加筆したものです。
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上のVoicy音声は
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