見出し画像

うつ病の渦中に出逢えてよかった五冊の本

うつの渦中にいるときほど苦しかった経験はないなぁと、今になっても思う。なにをしても楽しくない、涙が出る、布団から出られない、じぶんはダメな人間だと感じる、働けていないという罪悪感、将来への絶望、お金もどんどん無くなっていく。

 

もうどうしていいのかわからないんです。だったらもう、死んで消えてしまった方がいいんじゃないか。そういう思考回路になる。

 

精神科に通院しても、薬を飲んでも、たくさん眠っても、いっぱい休んでも、適度な運動をしても、おいしいものを食べても、友だちに話を聞いてもらっても、本を読んでも、映画を観ても、お笑い番組を観ても、お風呂に入っても、旅をしても、心の闇はずっとずっと僕のそばにいた。そして隙あらば、僕を死へいざなった。今でも油断すると、その闇は影響力を強くして襲いかかってくる。だから、通院と薬は欠かせない。

 

ここで僕の過去のことを話してもあんまし意味ないし、みなさんもあんまし知りたいと思っていないと思うので本題に入ります。もし興味を持ってくださっている方がいらしたら「風が渡る」というマガジンや、Twitterアカウントに簡単な自己紹介を載せているので、参考にしていただければと思う次第です。

 

うつの渦中はなにをしても、なにをしなくてもつらいものでした。ただただ時間だけが膨大にあった。元気があるときはいろんなことを調べる日々。じぶんの病気のことや、治療法について知識を集めるのが主でした。その媒体としては圧倒的に「本」が多かった。仕事ができないわけですから、昼間は暇です。ふらーっと書店や古本屋に入ってメンタル系の本が置いてある棚を見ていくんです。意識していなくても、ついそっちの棚に行ってしまう。楽天市場で本を探して注文することもありました。とにかく「早く病気を治したい」「同じ境遇の人たちの体験談を知りたい」と思っていました。メンタル系の本とは言っても、自己啓発本から病理学的なもの、エッセイや体験談など、種類はさまざま。んで、なぜかわからないんだけれど、「うつ病をきっかけに人生変えて今はバリバリ儲けてます!」的な、結局は上昇志向的思想の本が多いんです。そういった本にあたってしまったときはだいぶしんどかった。「ぼくはとてもこの人のように考え方を変えたり性格を変えたりできない。じぶんはダメな人間だ。なにをやってもうまくいかないんだ」ってなっちゃう。著者はなんのためにこの本を書いているんだろうというものも多かった。詰まるところ、精神疾患で落ち込んでいる人たちとじぶんは違うんだって、マウントを取りたいだけなんじゃないかと思ってしまうような本も多かった。だから今でも「うつ病をきっかけになんちゃらこうちゃら」っていう本も人も、ぼくはあんまし好きくない。

 さてさて。

思わず投げちゃいたくなるような本ともたくさん出会ってしまったのだけれど「ほんまに出会えてよかった!」と心から思える本もありました。言葉がやさしく、文体がていねいで、おしつけがましくなく、どこか独り言のようにふわふわしていて、不器用で、でも生きるヒントをしゃきっと忍ばせているような、そんな本たち。その中から、今回はどうしても紹介したい本を五冊選びました。こうして並べてみると、ぼくはゆるい本が好きなんだなという傾向がわかります。でも、ゆるく見えても、中身は案外そんなにゆるくないのかもしれない。ぜひみなさんの心にもとまってくれるとうれしいなと思います。

ここから先は

3,582字 / 8画像

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?