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【月想】あなたのいない春がくる

당신이 없는 봄이 온다

あと3日後に会える予定だったあなたは、ある日突然、会えない人になりました

 訃報を聞いたあの日の朝を一生忘れることはないし、あの日からまだ夢を見続けてるとしたら、はやくあなたのいる世界で目を覚まして、今すぐに会いに行きたいです、怖い悪夢を見たと言ったら、いつもの温かい笑顔で、「大丈夫だよ、心配いりません」と一瞬にして空っぽの心を満たしてくれると思います。あなたの笑顔が恋しいです。あなたの声が聞きたいです。

 アイドルという職業に強い責任感と誇りを持っていたあなたは、時に自分を苦しめたかも知れません。あなたは今のままでも十分素敵だと、足りない部分があるならそこもあなたの魅力だと、私たちを幸せにしてくれているのは今そこにいるあなただと、そう言葉にして伝えれていたら、いまあなたは目の前で笑ってくれていたのでしょうか?

 そんな後悔や罪悪感を背負いながらこれからも生きていく。それとも、まだまだ短い人生のなかであなたと出会えたことに感謝し、良い記憶も悪い記憶もすべて忘れずに一生を過ごす。 ビニはきっと後者を願っているでしょう?私たちもまた、あなたがずっと言っていた「いつも幸せでいて欲しい」という願いを叶えるために、あなたのいない世界も愛せるように、そして幸せになれるように努力をしています。ムンビンという儚くて素敵なひとがいたということ、これからも記憶し続けてもらえるように。
 時に後悔や罪悪感で押し潰されそうになる夜には、たくさん泣いてしまってあなたがより恋しくなるから、夢で会えたらと願っています。今もきっと忙しく過ごしてると思うけど、私もいつも、あなたが夢に訪れるのを待っています。

 私たちを隔てるものが、広い海から遠い遠い空になって、まもなく1年が経ちます。時間が解決してくれる、という言葉を聞いたことがあるけれど、毎日毎日会いたくなるこの気持ちと、それなのに会えないこの状況があまりにも苦しくて、どうせなら時間が止まればいいのにと思ってしまいます。あなたが遠い過去の人になることのほうが恐ろしい。いつか私があなたの年齢を越してしまうことのほうが恐ろしい。あの温かい春が、あなたとの別れを思い出し、冷たい春へと変わりそうで、こわい。あなたはいまどこにいるのでしょうか。私たちのことは、見えているのでしょうか?月を見る度にあなたを思い出します。夜空の月や星に、あなたの姿はあるのでしょうか。いつか私があなたの元へ行った日には、それまでのことをいつものように楽しそうに話して欲しいです。

 私たちが最後に会えたライブ「IDOL RADIO」であなたが言った言葉が、いまも頭から離れません。

「大丈夫、次また会えばいいからね。」

 明日も会える、来月には単独コンサートもある。これから会える予定がたくさんあった。 あなたが言った言葉に、憶測で意味を裏付けて考えるひとがいるかも知れない。あなたが辛く苦しいなかで絞り出した言葉だと考えるひともいるかも知れない。本当のことは分からないけれど、きっとあなたが感じたままに、伝えたい言葉を届けてくれていたと、私もそう思います。私たちはあなたがくれた言葉をそのまま真っ直ぐ受け取ることが、あなたを守れるのではないかと思います。いつも素直で温かいあなたという人を形を変えず記憶してもらえるように。

 まだ少し辛いけど、あの日の自分を思い出して書いてみます。人にはずっと苦しまないように「忘れる」という機能がついているそうです。完全に忘れるということではなくて、毎日泣いてしまう日々からすこし笑える日が増えていくような、こころの中心から片隅に移動する。そんな感じで。

 あなたの出棺の日、私は韓国にいました。あなたを少しでも近くで感じたいという想いと、本来なら会えていた日をただ泣きながら過ごすのは辛かったから。ひとりで向かう韓国。あの日の自分がどうやって飛行機に乗って、入国審査を終えて、あなたの元へ会いに行ったのか、、。ただ流されるように、ただただ時間が過ぎていたのかも知れません。 運よく日本で買えた、あなたの好きな三ツ矢サイダー。そして韓国で偶然見つけた、素敵な店主さんがつくってくれた花束。これが私にとって最初で最後のあなたへのソンムルになりました。

 あなたの事務所には数えきれないほどの花束が手向けられていました。ここに行きたくて韓国に向かったのに、事務所までの道のりは足が重かった。きっと現実的で、あなたの不在をより目の当たりにする。ちょうど1か月前にも行った事務所は、同じ場所とは思えないぐらい、多くの花束や手紙、あなたの好きなもの、あなたの写真で溢れていました。
 立ち尽くすしかなかった。泣き崩れているファンのひとを見てもなにも感じれないくらい、私も自分がいま何処にいて、なにを見ているのか分からなかった。たまにさっき買った花束をぼーっと眺めて、紫色の花が綺麗だなあと、そんなことを感じた。いつもなら良い香りのする花なのに、あの日はそれすらも感じ取れなかった。冷たい春の日の始まり。
 それでも事務所を去るときにはすこし温かい気持ちになっていました。事務所には韓国のひとだけでなく、たくさんの国のひとが訪れていたし、ご厚意で「たくさん泣いたらしっかりお水も飲んでね」って書かれたメモとお水が用意されていたり、ビンの文字になるよう小さなろうそくが灯されていたり、、、あなたがどれほど愛されていたか。どれほど素敵な人たちに囲まれていたか、間接的に感じることができたからだと思います。泣いてるわたしに背中をさすってくれた韓国人の子は、今では大切な友達になりました。ビニが繋げてくれた縁です。


 あれから私は定期的に献血に行ったり、メンタルヘルスマネジメント検定の資格を取得するために勉強をしたり、あなたの出来事がただ悲しいものだけで終わることのないように努力をしています。少しでも誰かを救う存在になりたいと思えるようになりました。これも全部、ぜんぶビニのおかげです。ビニが残してくれた言葉や行動が、いまの私を救ってくれています。いつかまた会えたら、そのときに誇れる自分でいられるように。疲れたなあと思った1日の最後に「今日も1日良いことで満たされていますように」と言ってくれたあなたの温かさを一生忘れません。ビニと過ごした短くて永い時間は、本当に夢のようだったけど、でも全然夢じゃなくて、あなたが目の前でしっかり生きていたことを、綺麗に鮮明に記憶しているし、同じ時間を過ごせていたことを、いつまでも絶対に忘れません。ビニの「いつまでも記憶に残る歌手になりたい」という願いを叶えられるのは私たちだけだから。こうして文章を書いてみました。ここまで読んでくれたひとは本当にありがとうございます。ウヌくんも言っていたように、この出来事は一生背負っていくものだと思います。ファンとアイドルという関係はこんなにも遠くて近い存在だったんだと、初めて知りました。こんな文章を書いておきながら言うのもなんだけど、私はビニに会えて本当に幸せだし運が良いと思います。この悲しみを抱えて生きていけることも、出会えなかった人生を考えると、今のほうが良い。本当に楽しくて幸せな思い出がたくさん作れたから、その記憶だけで強く生きていけると思います。でも、また必ずいつか会いたい。いつか私にもまた、温かい春がきたら、「季節を耐えて 春が訪れる日 素敵な夢で あなたを 待っています」この曲がビニが私たちに向けた最後の曲なのも、なんかビニらしいね。お疲れ様、ビニたん。歌手になってくれてありがとう。


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