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かくして非核化は無になりにけり

 ここ最近のウクライナ情勢を、ダチョウ倶楽部の「押すなよ」芸に例えるのはあんまりだろうか。「ロシアよ。ウクライナ侵攻するなよ。侵攻するなよ」という声を無視して、ロシアは西へ侵攻した。

 満潮の時と同じで、いつの間にか足元をひたひたと冷たい水が浸している時には手遅れなことが多い。

 さて本日早朝、北朝鮮が飛翔体を発射した。発射は平壌近郊、順安との情報があった。かつての順安空港、今の平壌国際空港が発射場所だろうか。このあたりは実にしたたかに粛々と進めている。

 北朝鮮では非常にコロナの影響が厳しく、北朝鮮もこれを認めている。最近中国とのモノの動きが再開されたというニュースも見たが経済的にも厳しい。そして、医療体制もよくないことを考えると、防疫対策も厳しいとみる。

 これをもって北朝鮮崩壊論が頭をもたげてくるのであるが、むしろそれはないとみる。70数年あの体制が持っている事実。3代の世襲が成立した事実。これは実績(というのも何かおかしな表現だが)として、事実として認めなければならないのではないか。

 そして万が一今の体制が瓦解したとしても、その後の体制は日本にとって組みしやすい相手ではない。むしろ逆だ。

 例えば拉致問題一つをとっても「それは前政権のやったこと。私たちは知らない」と平気で言ってくるだろう。そして交渉の担当者がいない。日本担当の案内員と会うと、それももう6年近く前の話になるのだが、彼らは疲れ切っていた。日本語を専攻した自身の選択を悔いていた。

 ここで日本語担当者の意地を見せてもう一度日本と交渉する。そして日本から利益を引き出す。そんな気概のある案内員、外交担当者は北朝鮮に果たしているのだろうか。日本側もどうだろう。いない気がする。

 もちろん、努力はされてきた。官民ともに。公式非公式を問わず。だが、余りにも平行線で、また北朝鮮にとって日本は相対的に順位が下がった。そして日本はこのことに気づいていない。否、気づいていても、かつての順位のままでいるだろうと高をくくっている。制裁(と言っても材料はもうほぼないのだが)で締め上げれば「ごめんなさい。ボクが悪かったです。お話させてください」と頭を下げて来ると思っている。

 今回のロシアのウクライナ侵攻をもって北朝鮮は確信したはずだ。「核を手放すからこうなったのだ」と。もう北朝鮮は絶対核兵器は手放さない。カダフィ大佐然り、ウクライナ然り。米朝交渉もバイデン政権の間は没交渉だろう。アメリカだって、ウクライナとロシアに手いっぱいのはずだ。そして中国もいる。

 北朝鮮はアメリカに期待などしていない。バイデンの次、もう一度トランプが大統領になったらということだろう。その時までひたすら手持ちのカードを磨く。飛翔体と核の開発、技術強化に努めるだろう。通常兵器の差は既に歴然としていて、核なしの戦争では北朝鮮は勝てない。通常兵器の戦力差を無力化し、通常兵器に割いていた予算を経済に回す。軍事だけでなく経済においても核ありきの国家体制が既に出来上がっているのだ。

 アメリカですらそうなのだから日本など既に眼中にない。

 拉致問題は最優先課題というが、北朝鮮にとっては藪蛇な問題でしかない。「拉致問題は終わった問題」と現地でもいわれた。否、そう説教された。反駁したが議論にならず平行線。イラっとしてメンチ斬り合っているぼくと案内員を、まあまあと日本からの訪朝団の元議員が「大人げない」とぼくの方をなだめる始末。おい、おまえはいったいどこの国の人間だ?

 認めなければならない。核保有国でもあり、交渉のカウンターパートがいない国がすぐ横にあることを。日本に比べると貧しくて、独特な体制と指導者がいて、飛翔体を発射して…。

 その存在は昼間のニュースショーでは手軽に視聴率を稼げる美味しいもの。専門家にしかめっ面で解説をさせて、何度も流された日本と比べて独特な北朝鮮の映像を流して「一刻も早い解決が望まれます」とでも司会者がいえば、時間は消費された。

 とまぁ、こんなことを書けばおまえは北朝鮮のスパイか、それとも御用聞きかといわれるわけでして。北の立場ではこう見えてますよというだけでもそうなのだからやり切れない。

 ウクライナを見ながら、ぼくは朝鮮半島情勢を見ている。ちょうど、オミクロンに感染してぼくは先週まで自宅で軟禁生活を送っていた。何周目かの「愛の不時着」の感想がTwitterのタイムラインに流れてきた。

 そういえばあの主人公ふたりは結婚したのだっけ。そんなハッピーエンドは、日朝関係において万が一にも起こりえない。ウクライナの悲劇を見ながら、日朝関係の停滞にも嘆息していた。ごほごほと咳が止まらなかった。

■ 北のHow to その137
 久しぶりの更新になります。ぼくは北朝鮮はもちろん、アメリカ、ロシアはじめあらゆる国の核兵器の存在を否定する者なのですが、残念ながら核兵器は存在し、また北朝鮮も保有しているという事実は認めないといけないと思います。「わが国は核保有国である」と現地では当然のごとくいうことでしょう。それを認めたうえで、つきあっていかねばならないと思います。念のようなもの、あるいはニフラムと唱えても核兵器は残念ながら消えないのです。

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