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IBARAKI 『Rashomon』レビュー / Black Metal

ついにやって来ました。5月6日に発売されたMatthew Kiichi HeafyTRIVIUM)のBlack Metalプロジェクト、IBARAKIのデビュー・アルバム『Rashomon』のレビューです。

すでに、数回に渡っての記事が書かれています。最初は、Black Metalの記事を書くことを命題にnoteをスタートさせての、第1波は映画『ロード・オブ・カオス』でしたが、一旦、Black Metalバンド系としてVenom、Behemothが名前が少し程度での紹介でした。今回、Black MetalプロジェクトのIBARAKIが確立したことから、この一連の記事になりました。

初めてBlack Metalを聴こうと思うメタルファンでも、今に出現した、IBARAKIならば、わかり易い、入りやすいのではないかと思います。

IBARAKI、第一回はファーストMVが完成した直後でした。MV2本の紹介、Black Metalレジェンド、EMPERORIhsahnの現在の活動、ポーランドのBehemothNergalの紹介記事でした。

IBARAKI、第二回はMVの紹介、EMPERORIhsahnの現在の活動、My Chemical RomanceIhsahn&Nergal&Kiichiのコラボ動画の紹介でした。

そして今回の予告です。前日のYOUTUBEプレミアムでのプロモーション配信の紹介でした。

では、長くなったのでレビューに行きます。


01. 零 Hakanaki Hitsuzen 儚き必然
02. 一 Kagutsuchi 迦具土 - featuring Paolo Gregoletto (Trivium)パオロ・グレゴリート [トリヴィアム]
03. 二 Ibaraki-doji 茨木童子
04. 三 Jigoku Dayu 地獄太夫
05. 四 Tamashii No Houkai 魂の崩壊 - featuring Ihsahn (Emperor)イーシャン [エンペラー]
06. 五 Akumu 悪夢 - featuring Nergal (Behenoth) ネルガル [ベヒーモス]
07. 六 Komorebi 木漏れ日- featuring Corey Beaulieu (Trivium) コリー・ビューリー [トリヴィアム]
08. 七 Rōnin 浪人 - featuring Gerard Way (My Chemical Romance
) ジェラルド・ウェイ [マイ・ケミカル・ロマンス]
09. 八 Susanoo No Mokoto 須佐之男命- featuring Ihsahn (Emperor)イーシャン [エンペラー]
10. 九 Kaizoku 海賊

https://gekirock.com/news/2022/03/ibaraki_ronin_mv.php

今回、あえて日本盤を購入しましたので日本語歌詞対訳・解説ブックレット+Obiつきです。解説・対訳はBlack Metalのレジェンド、SIGHの川島未来さんです。日本盤も豪華というしかありません。ありがたや。

では、お待たせしました。1曲づつレビューします。

01. 零 Hakanaki Hitsuzen 儚き必然

イントロということで序章のような小曲からスタートです。このような曲を最初に収録するようにというアイディアはIhsahnかららしいそうです。どこか懐かしいバイオリンとコーラス。これから始まる予兆として、ゾクゾクが寄せて来ます。

02. 一 Kagutsuchi 迦具土

序幕からの1曲目から重厚なサウンドです。7分の曲に動と静寂、そしてまた動という大曲です。輪唱なコーラスと万華鏡のような映像のマッチング、
音を刻むギター、荘厳な展開です。1曲目から聞き応えあります。プログレ・シンフォニックの音が好きな方も聴けるのではないでしょうか。例えば、King Crimsonとか、Linkin Parkはありです。因みにMVにはKiichi本人が登場です。

03. 二 Ibaraki-doji 茨木童子

早速のドラムのロール感や手数の多さに引き込まれます。地の底からの声という感じで、童子の悪と動乱の表現が歪んだギターとドラムサウンドで表現されたBlack Metalです。流れるような中間部の弦楽部分が静かに不気味に進行し、再びの騒乱への突入です。茨木童子が都を恐怖の坩堝と化すように、音を畳み掛けて来ます。

04. 三 Jigoku Dayu 地獄太夫

ギターのアルペジオから始まる室町時代の伝説の遊女「乙星」物語。己の悲運を地獄絵の衣を身にまとい念仏を唱えながら客を迎える、美しき遊女「地獄太夫」。一休宗純との出会いの歌の内容はかなりスリリリング。二人は師弟となりますが、美しさ故の怖さを表現しております。呪文のような、抑揚のない単語のみの念仏のような歌詞の洪水は地獄太夫の呼び込みであり、まさに地獄の入り口といえましょうか。


四 Tamashii No Houkai 魂の崩壊

そして、ファーストMVだった、EMPERORIhsahnとの共作、これぞBlack Metalという曲です。スタート音はお馴染みのゲーム音、任天堂の「マリオブラザーズ」のサンプリングからだそうだが、ゲーム好き・Youtube配信までする、Black Metal侮れない。このアイディアはIhsahnからだそう。


06. 五 Akumu 悪夢

そして、この曲。EMPERORIhsahnとの共作で、BehenothNergalがポーランド語のヴォーカルとしてスペシャルゲストとして参加している、超豪華なBlack Metal作品です。Nergalの歌声は地の底から、恐ろしい悪夢を呼び起こします。「Tamashii No Houkai」と「Akumu」は日本の伝承からインスパイアされたものとは印象が違い、今ならではのサウンドで、「Akumu」はBehenothNergalの持ち味を活かしての危うさの曲です。


07. 六 Komorebi 木漏れ日

Matthew Kiichi Heafyのバンドである、TriviumからギタリストのCorey Beaulieuをゲストに迎え、再び、IBARAKI Worldです。実は「木漏れ日」という漢字を見て「おや」と思った人もいるのではないでしょうか。この漢字・言葉は日本特有の表現で、こうした言葉は海外ではほぼないそうです。Black Metalを創るにあたり、Old School Black Metalの北欧神話からではなく、日本古来のもの、伝承からという事から生まれたIBARAKI。木漏れ日などの言葉の小ネタのようなものが散見できますが、深いです。


08. 七 Rōnin 浪人

9分もの大作で、My Chemical RomanceGerard Wayが参加しています。このクレジットを見て「Gerard Way!」と思いましたが、Gerard Wayはちょっとした「こだわり」がありそうなアーティストなので、Black Metalにも造詣が深い気がします。意味深なショートストーリーのMVを見ながら、奇妙で不安な世界を堪能できる、そんな、世界観が広がっていきます。


09. 八 Susanoo No Mokoto 須佐之男命

叫び、叫び、荘厳な曲や歌い上げは、ゴシックやシンフォニックから、北欧メタルに多くみるあるボーカルスタイルです。須佐之男命は『古事記』に記された日本創造の神話の神様のことです。北欧神話ではオーディンならば、日本書紀は須佐之男命。「俺はスサノオ」と日本語が出てきますが、洗練された、シュッとした曲調でアルバムの終焉を迎えます。因みに解説文からによりますとKiichiは日本語が喋れない(Steven Aokiみたいですね)そうですが、日本語はすぐに歌えたそうです。

これだけ古事記や日本書紀、伝承を知っていたら、今の日本人でも知らない人は多いと思います。ゲームをやっている人の間では、伝承や古典は設定として描かれていることもあるので、意外に抵抗のなく入れるような気もします。


10. 九 Kaizoku 海賊

どこでこういう曲を聴いたのでしょう(笑)。リズムはスウィング調で、昭和・戦後すぐのSPレコードみたいな(あくまでイメージですので聴いてないです)、海賊が歌うテーマソングみたいな、マーチングっぽい曲です。この辺はルーツ的にはゲームのような気がします。



まとめ

このIBARAKIのRashomon』は、ある意味、2つの側面を合わせた、ちょっとしたコンセプト作品ではないでしょうか。はるか昔の『Queen II』『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』まではいかないにしても、1つのアルバムで日本の伝承をテーマにし、新たな解釈とともにBlack Metalのレジェンドが自ら挑戦する若い世代とのコラボ作品ということです。

単にゲストが入った曲は、凝ったMVがあり、現代的なサウンドで、参加しているゲストによって、その人達の風合いが楽しめる、面白い試みの作品と思います。

Old School Black Metalの焼き直し的なものではなく、過去有名曲のカバー集でもなく、Matthew Kiichi Heafyという一人の若者が長くフリークであったBlack Metalを自己解釈によって、創られた、プロジェクト作品。

政治・思想といったイデオロギーから脱却し、今の時代と日本の伝承を組み合わせる試みは、あまりこれまでないものと言えるのではないでしょうか。

因みに『羅生門』は芥川龍之介の小説で有名ですが、羅城門は城下町に入る門のことで、朱雀門はお城入口。茨木童子は平安時代の物語ですが、門は何度も破壊されているそうで、平城宮朱雀門は復元はされています。

さて、このIBARAKIプロジェクトのKiichiのバンド、TRIVIUMのファンから見ると、このIBARAKIプロジェクトはどう映るのかと思って調べてみました。ネット上では大方、好意的なコメントが多く、特に以前からMatt KiichiEMPERORのTシャツを着ているのは、相当ファンの間では有名な話で今回のIhsahnとのアルバム作りは夢が叶った的な素敵なエピソードとしてファンは抑えているようです。

長く進行していたプロジェクトなので、「Kagutsuchi」、「Ibaraki-Dōji」は2010〜2011年に作曲収録、「Rōnin」、「Susanoo No Mikoto」までは2016〜2017年に作曲収録されていると以下の記事にあります。


長年の未完成だった作品がこうして公に公開できたことは、非常に喜ばしいことだと思います。今後もMatthew Kiichi HeafyIBARAKIを始めとし、多彩なゲストのMy Chemical RomanceBehenoth、EMPERORをはじめとしてBlack Metalレジェンド達からの動きも非常に活発で、これからも期待できるのではないでしょうか。私も今後、フォローしていく予定ではあります。


IBARAKI、公式サイト↓


以上、今回のIBARAKIRashomon』レビュー / Black Metalの回を終了させていただきます。

次回は80's90'sQueenがあるか、もしくはBeatlesMetal、時事ネタのどれかです。

ご清聴ありがとうございました。




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