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イギリスのお菓子vol.11「アップル・クランブル」

この「イギリスのお菓子」シリーズを始めてからというもの、以前と比べるとイギリスの伝統的なお菓子についてかなり知識が深まってきた気がします。「イギリスのお菓子なんて、バリエーションなさすぎてたいしたことないでしょ」と、はじめは正直ナメていたのですが、調べれば調べるほど各菓子の歴史や作りなどに感心し、愛着が深まりました。

特にイギリス菓子の好きなところは、名前がユニークな点です。名前を聞くだけではお菓子だとわからないものもかなり多いですが、その点今回トライした「アップル・クランブル(apple crumble)」は比較的ストレートな名前に、見かける頻度の高さで、来英当初からかなりなじみのあるお菓子でした。

イギリスの「プディング」とは

アップル・クランブルとは、アップルパイの中身のようなリンゴの具の上に、クッキー生地をポロポロにしたような「クランブル」をのっけて焼くという、シンプルな「プディング」です。

この時点ですでに私は違和感を持ったのですが、以前ご紹介した「スティッキー・トフィー・プディング(関連記事)」もしかり、イギリスのプディングはわれわれ日本人が想像するプディングと、かなり異なります。

アメリカでもそれは同じで、プディングといえば日本同様甘いデザート、それも多くはカスタード・プディングなど牛乳やクリームベースのものを指しますが、イギリスでは「ゆでるか蒸したものすべて」(参照記事:Buttery, Neil. “What is a pudding?”British Food 2011)なので、豚の血やラードが入ったブラック・プディングや豆のプディングも同じ「プディング」です。

ところが、そういっておきながら一部例外はあるようで「焼いてあるもの(baked)」(とくにドライフルーツなど、フルーツが入ったもの)も指すので、アップルクランブルも「プディング」なようです。

食糧難の時代に生まれたクランブル

なお、クランブルの下の具材はリンゴに限らずどんなフルーツでもよいようで、総称として単に「クランブル」ともいいます。そのクランブルですが、歴史はそう古くなく、食料が不足がちだった第2次世界大戦の時代に、パイ生地の代替品として発明されたそうです。

パイ生地にはたくさんの小麦粉と砂糖、油脂が必要でしたがクランブルであれば、それらの材料すべてをパイより少量でまかなうことができるので、節約のために、そしてより簡単なので広まったといいます。

なお、アメリカの一部の地域では「クリスプ」と呼ぶそうですが、イギリスではクリスプス(関連記事)ですとポテトチップスになってしまいます。

具材はリンゴが代表的ですが、以前ご紹介したルバーブ関連記事)も人気です。

実際に作ってみて

アップルクランブル自体、作り方は簡単ですが、クランブルといえばスコーンの作り方と同じ「冷やしておいた角切りバターを小麦粉に混ぜ、でパン粉状になるまでこねる」という工程が若干面倒です。すでにでき上がった市販のクランブルもこちらでは売っているのですが、ポロポロ状のかたまりがかなり細かく、粉状に近いという記述を見かけ躊躇しました。

今回のレシピでは小麦粉と同量のオートミールも入れるのが珍しいなと思いましたが、アメリカではこのオートミール入りをクリスプと呼ぶようです。もちろん、イギリスでは関係ないので単なる風味づけ、食感を出すためのようで、レシピではほかにスライス・アーモンドでもよいと書いてありました。

クランブルをのっけるときに、ギュッと手で上から押さえてまとめるのか迷いましたが、そうするとせっかく「ポロポロ状」を維持したのに平坦になって意味がないかなと思い、ふんわりのせました。「押さえる」と書かれたレシピもありましたが、結果的には押さえないで正解かと。

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ちょっと表面を黒く焼きすぎたとも思いましたが、子どもたちからは「アップルパイよりイイ!」と好評でした。今度はルバーブでトライしたいなぁ。アップル・クランブルといえば、バニラアイスが定番ですね。

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