音よりも歌詞、歌詞よりも音
CDが売れないこんな世の中じゃポイズン、とゴールデンボンバーが歌い、テレビでの演奏中に同楽曲のダウンロード用QRコードを提示して、タダで楽曲を入手できるように仕向けるという前代未聞のパフォーマンスを行っていたのも、もう5年も前のはなし。
もはや現代の若者はサブスクで曲を聴くのが主流になり、コンパクトディスクという存在は遠くなりにけり。
かくいう自分も、Spotifyに月980円を払ってその恩恵に授かっており、そうこうしているうちに、学生時代にさんざんお世話になった、神聖かまってちゃんのボーカル、の子さんのように、昔のロックンロールのCDを借りたけど何がいいんだか全然わからなかった、そんな駅前TSUTAYAさんは閉店してしまった。
大阪の梅田の繁華街にドデーンと構えていたクソデカTSUTAYAですら消え去ったのはびっくり。少し離れた場所に同じ母体による蔦屋書店ができましたが、完全におしゃれカフェ路線へと移行していて、レンタルショップの面影はまるでない。
まあ、寂しくはあるのですが、時代は刻々と進んでいくもので、それに準じて変わっていくものも多々ある。過去を懐かしむことは気持ち良いですが、現在を否定しながら年老いていっても仕方がないというのがここ最近の自分の考えなので、別にCDの文化をもう一度、とは思いません。
そもそも、CDというものは扱いにくい。指紋をできるだけ付けないように、わざわざ指を拡げて端っこを持たないといけないし、そうやって気を付けていても、多少は指紋が付いてしまう。
ほとんどの場合はプラスチックのケースに納められていますが、このケースがまためんどくさい。材質が脆いのか、落としたらすぐに割れてしまう。
一時期のGLAYのシングルは厚紙で梱包されていましたが、全部あれにしてほしいと思っていました。いわゆる紙ジャケ。洋楽の名盤の廉価版とかだとよく見かけますが、見映えが安っぽくても、落としても割れない紙にしてほしい。
そういう煩わしさから解放され、検索ひとつで最新のヒット曲も懐メロも聴けてしまうサブスクは発明だと思う。昔は何千円、何万円と音楽に費やしていたのが、今は980円で済んでしまうのだから凄い。
そのぶん、作り手であるミュージシャンの方々の儲けは大幅に減っているという話も聞くし、それは対処しないといけない問題ですが、それでも、高額なCDやDVDなど買っていられないと、違法にアップロードされたものが当たり前にダウンロードされまくっていた時代よりは、アーティストに少なくとも還元されるぶん、マシになったのではないかと思う。
表だって言えるようなことではないけど、2000年代後半にパソコン環境があって、ちょっとインターネットに詳しい人であれば、無料でいろいろと入手する方法は知っていたはずだし、自分も多少なりとも黒いゾーンに足を突っ込んでいました。その黒いやり方を書いた本がコンビニの本棚で堂々と売られていましたし……。
YouTubeやTikTokから音楽を知っていく現代っ子のほうがよっぽど健全だし、真摯な姿勢で音楽や映像に触れているとさえ思う。
ただ、歌詞カードを見ながら曲を聴くという感覚は、なかなかに乙なものだったように思います。今は歌詞が字幕で出るPVも多いし、字幕がないものでもググればすぐわかる。
そのほうが遥かに便利なのだけど、そのぶん、歌詞を文章として読み取ることが少なくなったような気がする。
昔はもっと歌詞が重要視されていた覚えもある。アニメのオープニングにテロップがないほうが珍しかったし、ノートに好きなアーティストの歌詞を綴るみたいな文化もあった。
というか、ある一定の年齢層は、音楽の話をしろといったら、自分が泣いたり励まされたりした歌詞の話をする。
もちろん歌詞に感動するのは素敵なことだし、自分だってそういう体験は何度もあるが、それは歌詞の話であって音楽の話ではないよなあ……。
じゃあおまえは音楽の話ができるのかと問われれば、まあできないのですが……。楽器が弾けないし、拍子の取り方もわかんないし……。
「タン・タン・タン」と足踏みしてリズムを取りましょうといわれても、その「タン・タン・タン」の足踏みのスピードがわからんかったのでギターを挫折したのである。
まあ最初に買ったスコアがB'zの『ギリギリchop』だったせいもあるが……。なんでフォークギターしか持っていない奴がそんなゴリゴリにハードロックな曲をやろうとしたんだ。
などという昔話はどうでもよく、以前に比べて歌詞を捉えきれていないということは、ポジティブに受け取れば、音として感じて覚えている部分が多いということでもある。
歌詞というのは重大な要素ではあるけど、音楽というのは音の重なりが基本のはず。そもそもクラシック音楽なんてみんなインストゥルメンタルだもんな。
……ここでいうクラシックとは小学校の授業で習う程度のところなので、実際にはお前が無知なだけで歌入りのクラシック音楽なんて腐るほどあるわと言われたら、グウの音どころか、Fコードをちゃんと押さえられていない時の、猫が障子を引っ掻いたみたいな音が出てしまいますが……。
というか、音楽に言語を乗せるということを最初にやったのって誰なのだろうか。さっそくググってみたのですが、どうググっても誰かの歌詞が出てくる。
歌詞が好きすぎるだろ日本人。いやGoogle先生はアメリカ出身か。なぜか上の方に筋肉少女帯『高木ブー伝説』が出てきたんだが……。
なんなんだ。CDについても音楽についてもまともに語れていない、まるで無力な俺は、まるで、まるで、高木ブーのようじゃないか……。
でもブーさんはウクレレの名手だし、それも畏れ多いな。さて、Spotifyを開くか……。
サウナはたのしい。