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【#6】Dr.タカバタケと『彼女』の惑星移民【創作大賞2024参加作品】

【本編連載】#6

【3章プリマベーラ(出会いの春)】

 《人間がまだ獣のころ、人々は本能で子孫繁栄し、本能で子を育てた。
 
いつしか知性を持った人々は、愛という言葉を生み出し、ツガイとなり子を育てた。
 
西暦3200年
時代の移り変わりは、繁殖と育成の形を変えていた、そこにはすでに恋というものは存在しなかった》

【3章-0 西暦3200年代の時代背景と価値観】


『出産』
体外受精、人工子宮を使い、出産の成功率はほぼ100%。出産による母体へのリスクも存在しない。
体外受精を行わず、人口子宮を使わず、自らの母体を使って生むことは、法令上の禁止事項であるだけにはとどまらず、人類全体のタブーとなっていた。
大きな理由は2つあった。1つは母子両方の生命リスクを減らすためであり、もう1つは、男女平等の観念であった。
 
『育成』
出生~20歳までは一貫して、各国が管理し育成・教育をした
『チルドレン』という施設で集団生活が原則となった。親との面会は可能であったが、一緒に住むことは禁止された。
世界の合計特殊出生率(以後、出生率)は2未満であり、子は宝。相互監視と国の指導を導入し、ネグレクトや犯罪などから子供を守るよう、徹底的な管理体制が敷かれた。
 
『結婚』
結婚は存在するが、20世紀ごろとは概念が変わった。3200年現在の結婚の実態は実用性を主としたチーム作りであり、セクシャル問わず、また人数にも制限が無くなっていた。
世界の一般的な法律上の婚姻は『人間同士の婚姻は、セクシャル、人数、形式を問うことはないが、20歳以上のチルドレン終了者の当人同士の同意の上、行われ、また解消される。人と物(動物・物体・キャラクター・コンテンツ・AI・ロボット)との婚姻は一切を認めない』とされた。
子供に関しては、婚姻者の遺伝子にて行うことも多かったが、優秀な遺伝子を公に取得することも同様に一般的であった。どちらかの親あるいは両方の親の遺伝子情報がない個人は、しばしば差別的な見られ方をした。
 
『仕事』
社会生活はAIと産業ロボットにより支えられている。
一次産業は完全オートメーション化。それ以外のほとんどのことも、AIとロボットで事足りていた。人に残されていた分野は、
1、新技術の研究・開発の一部
2、医療の一部
3、AI・ロボット医療の一部
5、政治
だけとなっていた。
いずれも相当な知識量や技量が必要であったが、たとえ働くことがない人も、充分に人生を謳歌することが可能であった。他者のために働く立場の人間こそが少数派であり、一握りのエリートだけだった。約1割の天才たちがAI・ロボットとともに地球を回していた。しかし、政治のみはエリートが独占しないようになっていた。
それでも個人の趣味として、人は様々な営みをしていた。そのため、人々の娯楽である料理や芸能に関しては、様々な施設や催しが、人の手によって行われていた。
 
『恋愛と出生率』
理由は不明とされているが、2200年を過ぎたころから、セクシャル間でのカップルと言う概念があいまいとなり、それまで一般的に男女のカップルによる、結婚・出産・育成とされていた一連の流れが崩れ始めた。いわゆる『恋愛による繁殖と育成の廃退』である。犯罪抑制のための性欲の脳内処理化も、その大きな原因とされている。
2300年には出生率が0.5まで落ち、数世紀内に人類が破滅するとまで言われた出産危機があった。各国の首脳と有識者との度重なる調整の結果による、〈3本柱の改革〉
1、結婚の自由化
2、出産のアウトソーシング
3、教育・育成のチルドレン一貫管理
にて、出生率は一時2.5まで上がった。0.5の危機を脱したのは、生涯出産回数の増加だった。生む人は生む。生まない人は生まない。しかし、それも一時的なことで、世界は出生率2.0を維持することはできなかった。現在でもそれは確実に落ち続けている。
その流れの中『繁殖と育成』と『恋愛』は関係性を希薄にしていた。
その結果、愛情は残り、恋という概念は消滅していった。
 
『人類忠心』
男女の恋愛が希薄になり、出生率が下がる2200年の少し前ごろから、人類は戦争・テロを行わなくなった(最後のテロは2189年と記録されている)。また、凶悪犯罪が急速に減少していった。同時に法整備、移動技術の進歩により、交通・移動事故による死者はほとんどいなくなった。また、医療体制も行き届き。人の死因は老衰と自己終了(尊厳死)の2つが中心となっていた。
つまり、寿命まで人は死ななくなっていた(3200年で平均寿命は160歳 ※自己終了含む)。
その一方で体力の少ない幼少期の死亡率が一定数ある事は、この時代においても無くなることのない悲劇の1つであった。
簡単に生まれなくなり簡単に死ななくなると、その1つ1つの命の価値が上がる。人が人として生き、人として死ぬ。そのことに、全人類が共通して敬意を払う。そういうことが社会通念上、当たり前の認識になっていた。
 
『技術革新と進歩と人口』
2100年頃をピークに、人の技術の革新の速度、つまり進歩の速度は急激に落ちていった。その時がちょうど世界人口の最大数110憶人であった。AI・ロボット問題だけではなく、今でも最大人数と進歩抑制の動きの関連性は、しばしば議論の対象になっている。
 
『人と自然』
人は、居住区と工場区(農業・酪農含・漁業含む)、自然区(開放区と非解放区=国定区)を分け、人の手の届く範囲とそうでないエリアを分けて生きていた。

#7 👇

5月29日17:00投稿

【1章まとめ読み】


【語句解説】

(別途記事にしていますが、初回登場語句は本文に注釈してあります)


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