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【#7】Dr.タカバタケと『彼女』の惑星移民【創作大賞2024参加作品】
【本編連載】#7
【3章‐1 始まりの鐘】
SIDE(視点):ノボー・タカバタケ
西暦3220年3月28日 入所式の日 地球
![](https://assets.st-note.com/img/1716816698005-aLOozGAqFq.jpg?width=800)
『西暦3220年3月28日 入所式の日 地球』にて
《名門AC.TOKYOの敷地内。
桜の古来種・ソメイヨシノが美しく咲き乱れる中、春の新学位研究員の受け入れで、敷地は大いににぎわっていた。
20歳を迎えたノボー・タカバタケは、その優秀な学力と、特殊ともいえる集中力・探求心を理由に、宇宙研究分野では世界トップであるAC.TOKYOのコシーロ研究室に召集されていた》
《シグナルがまもなく鳴ろうとしている》
僕は走っていた。
初日から、AC.TOKYOの入所式に遅刻しそうだった。
チルドレンでは集団生活だったので、時間管理には何の問題もなかったが、一人暮らしではそうはいかない。昨日も明け方まで調べものに熱中してしまったせいで、眠るタイミングを完全に逃してしまっていた。
僕は何かが気になると自分が置かれた状況や時間を忘れてしまう。もしかしたら誰かとの共同生活をしたほうがいいのかもしれない。
僕は貧弱な体に鞭を打ちながら、息を切らし走り続けた。やがて構内に入る手前の大きなゲートが見え、その奥に群生するピンク色の桜の木が見えた。
《ノボー・タカバタケが、桜の舞うAC.TOKYOの敷地に足を踏み入れたその時。彼の目に『白衣を着た、長い黒髪の女性』が飛び込んできた》
![](https://assets.st-note.com/img/1716934373037-F3EQhdOn4c.png)
それは、突然だった……。
僕の中で時間の流れが変わっていた。
ゆっくりだ。
ほとんど止まっているようにゆっくりと目の前の景色が動いていた。
その中心に白衣を着た『女性』がいた。
景色はその色を失い、距離感がなくなった。
時空が歪んでいる?
いったい、今僕に何が起こっているんだ?
《シグナルが鳴っている》
ひらり、ふわり。
目の前を桜の花びらが、スローモーションのように、ゆっくりと落ちていった。
その『女性』の周りだけ、スポットライトが当たっているかのように明るく輝き、その周辺はぼんやりとしていた。
《シグナルが鳴っている》
突然、耳元で鐘の音がガンガンと鳴り響いているように感じた。
脳に棒を突き刺され、グルグルとかき混ぜられているように、体の感覚の何もかもがおかしくなっているようだった。
僕は地面に膝をつきそうになるのを必死に耐えた。
なんだ、これは?
僕の頭は、おかしくなってしまったのか?
《シグナルが鳴っている》
ひらり、ふわり。
僕の目にもう一度、桜の花びらが映った。
僕は恐ろしくなり、足をこぶしで叩いて感覚を取り戻すと、転ばないように気を付けながら、できるだけ速度を上げ、その場を立ち去った。
心臓の鼓動が激しい。
僕の脳はバグを起こしてしまったんだろうか?
それとも脳内チップのエラー?
いや、現在の技術であれば安全ストッパーの作動で、こんなエラーが起こるわけもない。
もしかしたら、AC.だから、何かの実験装置の影響を受けたのかもしれない。
ここは世界最高峰の科学の場だ。何が起こっても不思議ではない。
AC.の広大な敷地の中、自分がどこを歩いているのか分からなくなったが、気付いた時には、その妙な感覚は消えていた。
原因究明をしたくはあったが、今は入所式に急がなければならなかった。僕は眼鏡型の外部装置を使い、自分の位置を確認して、入所式会場である施設Bに急いだ。
《このシグナルがすべての始まりである事を、ノボー・タカバタケは、まだ知らない》
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#8 👇
5月30日17:00投稿
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【語句解説】
(別途記事にしていますが、初回登場語句は本文に注釈してあります)
【4つのマガジン】
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