見出し画像

「昇華」とは?

「昇華」とは、アンナ・フロイトが提唱した9つの防衛機制のうちの一つである。

過去にも書いた気はするが、防衛機制とは恐怖や絶望、または満たす事の出来ない欲求から自分の身を守る為の方法である。

現在では、100以上の防衛機制があるとされているが、まぁ全てを防衛機制と言ってしまえば何でもありになってしまうので、現在でも10~20くらいの防衛機制が妥当だと考えられている。

その中でも「昇華」は、アンナ・フロイトの父、ジークムント・フロイトがハインリヒ・ハイネの「The Harz Journey」という小説を読んで得たアイデアである。

この小説の中に出てくるJohann Friedrich Deffenbaughという優秀な外科医は子供の頃からサディスティックな一面を持っており、町で出会った犬のしっぽを切るのが好きだった。

そんなJohannが子供の頃に持っていたナイフをメスに変えて優秀な外科医になったのだ。

フロイトはこの話を読んで、人は自分の欲求が満たせないと、その代わりにその欲求を満たしてくれるものにその欲求をぶつけるという事を発見した。

このアイデアは昇華に限らず、全ての防衛機制に通ずることである。

自分の中の満たせない欲求を他のところにぶつけるのが防衛機制である。

例えば、「投影」であれば、自分の中に認めたくない感情があり、その感情を他人に投げる事で安心を得ようとする。

「置き換え」であれば、自分の身の危険を恐れぶつける先の失った怒りや感情を、よりリスクの少ない場所にぶつける事で発散している。

「昇華」もこれと同じである。昇華というのは自分の中に強い欲求やエネルギーだけが残り、その欲求やエネルギーの詳細を捨てた状態の事である。

例えば、フロイト曰く、昇華の根源となる欲求のほとんどは性的欲求である。

この性的なエネルギーだけは自分の中にあり続けるがその性的な欲求を発散できる場所がないので、性的なエネルギーを単なるエネルギーに変え、別のところに向けるのが昇華である。

その向ける先は様々で、仕事や勉強、アートなどがあり、過去の偉業や芸術的傑作もこの昇華によって生まれたものがたくさんあるとフロイトは考えている。

我々の日常生活の中で、昇華が見られる場所はどこだろうか?

例えば、仕事が全てというような人はそういう人が多い。特に、女性はなおさらである。

常に仕事の事を考え仕事に人生を懸けているような人ほど、恋人が見つかった瞬間ミスが増えたりする。

何故なら、仕事に向いていたエネルギーは、過去に諦めた性的なエネルギーだからである。

「昇華」は防衛機制の中でも健康的でポジティブな物だと考えられているが、僕は少し危険だと考えている。

向くべき方向に向かずに残ったエネルギーは我々を狂わせかねない。

我々の行動や考え方を180度変えておきながら、本来向くべき場所が出来れば、全てを放り投げてそちらを向く。

そうなると、おそらく我々は仕事や頑張ってきたことの意味を見失う事になるだろう。

これもまた絶望的である。

昇華とは?


最後まで読んで頂きありがとうございました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?