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新卒がサクサク成長する"水道方式"という考え方

算数の教え方に"水道方式"という考え方があります。

水は蛇口をひねれば、水道を通って流れます。途中で逆流することはありません。これと同じように、基本の計算をまず教えて、それが自然に流れていくような順番で少しずつ応用を教えていくことで、子どもたちは自然に算数の計算順序を覚えることができる、という考え方です。

2桁同士の足し算を教える場合…

①まずは繰り上がりのない数同士(0は含まない)の足し算を学ぶ(13+24、35+62 etc…)

②次は0を含む繰り上がりのない数同士の足し算を学ぶ(10+36、77+20、30+20 etc…)

③次に1の位だけ繰り上がる数の足し算を学ぶ(25+37、17+58 etc…)

④1の位が繰り上がり、0になる数の足し算を学ぶ(37+43、11+69 etc…)

⑤十の位だけが繰り上がる数の足し算を学ぶ(35+73、16+91 etc…)

この後も何手順か発生すると思うが割愛。要するに、いきなり全パターンの方式をまとめて教えるのではなく、順序だてて理解できるところから教える。ひとつクリアできたらそれの応用(例外パターンとイメージしても良いかも)を教える。それをクリアしたら次、というように進めていく。

出来ないことはさせない、順番を逆戻りさせない、ワンステップずつを繰り返し繰り返しやることで定着していく。

この"水道方式"は、子どもだけでなく大人にも通用する考え方だと思うんですね。

実際に今担当している1年目の子には、レポートの分析の仕方や提案書の作り方などを教える際、この水道方式を意識するようにしてみました。結果、彼が他のメンバーよりも比較的早く分析や運用の一人立ちをしたことを考えると、一定の効果が見込めるんじゃないかと考えています。

以前、社会人一年生は何も出来ないのかという記事で触れたように、新卒であってもその子は全く何も出来ないわけではなく、なにかをググってまとめるくらいは、きちんと体系化して教えれば、すぐ自然に出来るようになりました。

"水道方式"の基本は出来ることの積み重ね

まずは相手がなにが出来るかを見極めることと、そのスキル、能力を身に付けるまでのプロセスを順番に体系化します。

次に、それぞれのステップにおいて、出来るようになったかどうかを見極めるための準備をします。テストのようなものを用意してもいいし、指導者の中でなにかしらの基準を設けてもいいし、とにかく出来るようになったかどうかをきちんと見極められないと、次のステップに進めなくなってしまいます。出来るようになっていないのに次のステップにいってしまうと、前段階で水道が詰まり、水は流れません

"レポートの分析"という課題設定は、ある程度までは正解があるので分かりやすかったので同業の方にオススメです。

例えば、全体に一番影響を与えている"媒体"はどれかを見つける、という課題を設定します。
CVの増減が大きい媒体を見つけるくらいは、本来一瞬でできるはずです (実際はなぜか間違ったりするんですけど…)

「数字上で最も変動幅が大きい媒体を指定できればOK。論理の確からしさを確かめるために、口頭でそれに至った経緯を報告してもらい達成度を計る」という条件を設定していれば、そのステップをクリアしたかが明確です。

他にも例えば、"ググってまとめる"のように、なにかをまとめて報告するスキルを身に付けてほしいときは、いきなりなにかをまとめさせて指導→修正を繰り返すのではなくて、必要な情報を適切なフォーマットで書くこと、からはじめます。これが蛇口をひねった状態。わかりやすいものから始めることで、成果物を評価することはそれほど難しくなくなると思います。

とにかくきちんと順番に出来ることを増やしていくことが大事。ステップを飛ばしたり、焦って次にいってはいけません。

一個出来たらそれを応用して次に

出来るようになったら速やかに次のステップの課題を用意します。時間が空くと課題と課題の繋がりが見えにくくなり、水が流れにくくなります。スピード感があるほうが、ゲームを進めていくような感覚を味わいやすいような気もします。

報告スキルの場合なら、何度か同じフォーマット、同じポイントをまとめてもらい、次はフォーマットの指定はしない、という具合です。そうすると通常であれば、なにも言わなくても同じようなフォーマットで成果物が提出されるはずです。これが水が流れ始めている状態

ここまできたら、次はうまく水を流すための課題を与え続けます

フォーマットが出来たら、まとめるポイントも指示しないようにしてみるとか、検索するワードを指定していたのを一度自分で考えてもらうとか、とにかくそれまでの過程でやっていた手順を応用すれば解決するであろう課題を設定していくようにします。

その場その場でやってもらうことを考えるのではなく、必ず1つずつ順番にステップを踏むことが大事です。新しいことはさせているけれど、前のステップと関係ないことをさせてしまう、あるいは全く違うやり方でさせてしまうこともよくあるので、気を付けてください。

また、途中で間違うようであれば、最終のアウトプットは必ず間違いますし、仮に最終は間違ってなかったとしても、それは再現性のないあてずっぽうで、評価すべきではありません。途中で水が止まっているようであれば、少し戻ってきちんとケアすることを徹底するほうがいいと思います。

最大の利点は理解の加速度の違い

水道方式の一番の良さは、実は指導の後半にあります。

人間は同じ事を何度も繰り返せば、自然とパターン認識をして、次もこうでしょ?と予測をたてられるようになります。子どもでも自然と出来るのだから、大学を卒業した大人が出来ないはずがありません。

やってみるとわかるのですが、はじめこそ時間はかかるものの、着実にできることが増えていくし、後半は同じこと・似たようなことばかり指示することになるので、指導される側も「それってこうですよね?」みたいに、むしろ先に察して対応してくれたりすることが増えます。これは新人でも中途でも同じでした。

そうなるまでは我慢して時間をかけたほうが、結果的にその子が戦力になるのは早くなると思います。

注意点:一度に教えすぎない

もちろん指導の途中ではうまく水が流れないときもあります。適切な課題設定はとても難しいです。

僕の場合は、うまく作業が進んでない、水が流れてない原因は、一度に色々教えてしまっているパターンがほとんどでした。

説明中に、あれ?自分ばっかりしゃべってるな、、と思ったら要注意。おそらく話のはじめのほうのことは、指導される側・指示される側は全く覚えてないし、頭に入っていないはずです。

そういう時は、潔く指示を2つ(あるいは何段階か)にわける。一度やれば、二回目からは「同じ順序でやってください」の一言で済むようになるので、これもはじめは時間をかけるほうが良いように思います。

まとめ

基本的な考え方は2つ。

①やるべきことを分解し、体系化する
②それぞれのステップを適切な順番でクリアしていく

指導する側が曖昧な指示を出したり、毎回違う手順で指示したりすると、理解はどんどん遅くなるし、土台がしっかりしないのでミスの増加に繋がります。新人であっても、ミスをしたくてミスをする人はいません。

はじめは指導に時間をかけないといけませんが、投資だと思って、適切な時間を適切な指導に当てるべきではないかと思います。

ぜひ一度試してみてください。

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※補足

水道方式という考え方は、TOSS(学習指導法の研究団体みたいなもの)の向山洋一さんが提唱された向山式算数がベースになっています。教育大学時代に学んだ考え方です。

しかし、学校現場での実指導ではブロックを使って学習するモデルなため、ADHDの子などがブロックでうまく学習できないことから、最近はあまり採用されていないようです。

僕はTOSSの信者でも向山式算数の信者でもなく、物事を理解するプロセスとして、水道方式は面白い考え方だなと、学生時代に感じたことから、新人教育に応用してみています。

本気で勉強したら、それだけでいくつも参考書があるようなものなので間違った解釈になっているところもあるかもしれませんが、そんな考え方もあるのか~くらいに捉えていただけると嬉しいです。

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