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牧師の困りごと

 牧師という働きをしていると本が増えていきます。気が付けば本棚いっぱいになり処分する本をまとめるのですが、もっとも困るのは引越しの時です。段ボールに詰めるのも大変ですが荷解きも大変。今回の引っ越しで引越し社が持ってきた4トントラックは荷物でいっぱいになりました。(表紙の画像がそうです)

ブックレビュー&寒河江文庫の紹介

 たくさんの本の中にはぜひ皆さんにも読んで欲しいと思うものがたくさんあります。牧師だよりでは不定期に本の紹介を行いたいと思います。また教会堂の一部に「寒河江書庫」を設置いたしますので気になったものはぜひ手に取ってお読みくださり、感想をお聞かせください。図書館と同様、2週間の貸し出し期限でお願いします。今回は2冊のブックレビューをいたします。

⑴『信徒の友』2024年4月号


 教会でも有志の方が購読している『信徒の友』が創刊60年を記念してリニューアルしました。4月号で個人的に良かった記事は一般社団法人Colabo代表の仁藤夢乃さんのインタビュー記事です。Colaboは特に若い女性を「支援」するのではなく「共に」考え、行動することを大切にしている団体です。
 インタビューによると彼女はキリスト教の中高大に通われたとのこと(高校は中退)。インタビュワーからの「教会に行きましたか?」との問いに「課題で行かされて、本当にいやでした!あのウェルカムな反応が無理!みんながこっちを見ていることに緊張しちゃって。それがうれしい人もいるでしょうが、相手を見てください。」と答えていてその通りだなと思いました。中・高・大学生など若い人が教会に来たら歓迎したくなる気持ちが湧いてくるのはもっともですが、「相手をよく見る」必要がありますよね。こちらの満足を得るではなく相手の立場で「してほしいことをする」のがイエスの教えです。話しかけ欲しいのか、そっとしておいてほしいのかを察する力(見極める力)を養いたいものです。
 一方で仁藤さんはキリスト教学校で社会貢献をしている人、社会の課題を自分事として活動している人(寒河江注:おそらく中村哲さんのようなキリスト者)がいることを知り、学校でキリスト教の精神に触れたことが今につながっているとも語っています。改めて私たちがこの世界でどう生きているかが問われているのだと教えられました。

⑵『ボクはやっと認知症のことがわかった  自らも認知症になった専門医が、日本人に伝 えたい遺言』(長谷川和夫・猪熊律子著、 KADOKAWA、2019年)


 長谷川和夫さんは日本の認知症医療の第一人者として知られている方で、認知症の人への理解を広げるために尽力されました。とくに晩年は自らも認知症になり、自身の体験をこの本に記して話題となりました。この本は認知症の専門医が正しい知識を分かりやすく 私たちに教えてくれると共に、認知症の当事者として家族など周りにいる人たちに認知症患者が思うこと、感じること、その尊厳について教えてくれる内容です。長谷川さんは 2021年11月に永眠されました。

 さて、長谷川さんは先に紹介した著書の中でご自分がキリスト者であることを公表されています。著書によると20歳の時に洗礼を受 けました。第二次世界大戦の敗戦後という時代状況で長谷川さんは「なぜ生きるか」を真剣に考えるようになり、次第に考え続けるこ とが苦しくなって通学途中にあった教会を訪ねました。そこで牧師さんと出会い、関わりを続けていく中で新約聖書・ヨハネによる福 音書12章24節に記されたイエスの言葉「はっきり言っておく。一粒の麦は、地に落ちて死ななければ、一粒のままである。だが、死ねば多くの実を結ぶ。」に心を惹かれ、心の支えとなったそうです。

 長谷川さんは「日曜日は原則、教会に行きます。東京・銀座にある銀座教会に通っていましたが、いまは自宅近くの教会に行くことが増えました。かなり前になりますが、久しぶりに銀座教会に行きました。古くからの知り合いに会えるのは嬉しくて、副牧師による説教もよかった。ボクは賛美歌が好きで、聖歌隊や周りの方が歌っているのを聞くと、心が落ち着きます。認知症になってガックリ落ち込んでしまう方もいますが、ボクがあまりそうならなかったのは、キリスト教の信仰を神様が与えてくださっていることも大きいのではないかと思います。認知症にかぎらず、難しい病気にかかったり、苦難や困難に襲われたりしたとき、自分一人で考えていると気が滅入って鬱々となりがちです。そうしたとき、宗教の道に進んでみる、お祈りをしてみ る、それもよいのではないでしょうか。」 (『ボクはやっと認知症のことがわかった 自らも認知症になった専門医が、日本人に伝えたい遺言』(長谷川和夫・猪熊律子著、KADOKAWA、2019年、189ページ)と私たちにアドバイスしてくれています。特に認知症のご家族を持つ方におすすめの一冊です。その他にも寒河江書庫には私一押しの本がたくさん並べられていますのでぜひ手に取って読んでみてください。


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