イルマーレ（2006）

大ヒット韓国映画のハリウッドリメイク版
『スピード』の名コンビが紡ぐ、美しくも切ないラブストーリー

ハリウッドスターの本領発揮！ 撮影時の実年齢は40歳を過ぎた中年なのに、文通で始まるウブなラブストーリーがこれほど絵になるなんて。

アクション映画『スピード』の名カップル、キアヌ・リーブスとサンドラ・ブラックが12年ぶりに共演を果たし、姿の見えない相手を愛する男女を情感豊かに演じきっています。

【ストーリー】
女医のケイト（サンドラ・ブロック）は、湖畔に立つ一軒家を引っ越す際、郵便受けに次の住人への手紙を残します。誤配された彼女宛の手紙の転送願いや、家にある犬の足跡や箱のことなどの伝達でしたが、新たにそこへ引っ越してきたアレックス（キアヌ・リーブス）はその手紙を読んで不思議がります。
著名な建築家であるアレックスの父が建てたその家は、全面ガラス張りの構造から買い手が付かず、長年空き家でした。さらに犬の足跡も箱もありません。アレックスは「家を間違えている」という返事を郵便受けに残します。しばらくは互いの正しさを主張した手紙のやり取りが続きますが、ある日ふたりは気付きます。ケイトがいるのは2006年、アレックスは2004年を生きているということに。

やがて2年の時を超えた文通を始めたふたり。初めは現実の心の隙間を埋めるように幻想的な文通を楽しむものの、ほんのいたずら心で、2004年にふたりが出会う仕掛けをしたとたん、運命の糸が複雑に絡まります。

2004年のケイトはアレックスを知らず、しかもケイトには恋人がいるという現実に直面し、複雑な心境になるアレックス。さらに2004年のケイトの誕生パーティーに招かれて……。

両者の現実に、文通をとおした見えない相手の力がさまざまな影響を及ぼしていく過程は時空ファンタジーの面白さが存分に味わえます。2人がすれ違うばかりのもどかしい展開は、甘酸っぱい少女漫画のようながらも、しっとりとした大人のラブストーリーに仕上げたのは、主演俳優2人の力技でしょう。

絶品なのは、先述の誕生パーティーのシーン。アレックスはすでに愛しはじめたケイトに触れたいという気持ちを抑えきれず、ついにケイトをダンスに誘って思いを遂げます。

しかし、ケイトを抱きしめるアレックスの顔には一方通行の愛の辛さが色濃く浮かびます。時間という不滅の壁を実感した男のやりきれなさや切なさ。キアヌ・リーブスの熱演が不思議な時間の流れる映画世界へと一気に引き込みます。一方のサンドラ・ブロックは豊かな包容力を見せ、終始、落ち着いた演技でキアヌをしっかり受け止めます。

大ヒットした韓国映画『イルマーレ』のリメイク版。美しいストーリーを美しい人々が語り継ぐことに何の不満があるでしょうか。リメイク作への不信感を吹き飛ばす会心のハリウッド版です。

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