イングリッシュ・ペイシェント(1996)
不倫の愛を壮大な文芸ロマンへ昇華させた
演技派レイフ・ファインズが魅せる名作ラブストーリー
灼熱のエジプト・サハラ砂漠で燃え上がった禁断の愛。第2次世界大戦時代の北アフリカとイタリアを舞台に、人妻を愛した男の運命を描いたドラマチックなラブストーリーです。
イギリスの文学賞であるブッカー賞を受賞した同名小説を、アンソニー・ミンゲラ監督が脚本も手がけて映画化。米アカデミー賞では12部門にノミネートされ、作品賞を含む9部門でオスカーを獲得しました。
描かれるのは、“イギリス人の患者”の過去と現在の物語。患者を襲おうとするカナダ軍諜報部隊のカラバッジョ(ウィレム・デフォー)が修道院に現れたことから、患者は徐々に過去の記憶を取り戻していきます。
患者の正体はハンガリー人のアルマシー伯爵。1930年代後半、アルマシーはリビア・エジプトでの考古学調査団に参加。そこで仲間のジェフリー・クリフトン(コリン・ファース)の妻キャサリン(クリスティ・スコット・トーマス)と出会い、愛するようになります。
始めはキャサリンにつれない態度をとっていたアルマシーですが、それは秘めたる愛の裏返し。キャサリンはアルマシーの気持ちをつかめず、戸惑っていましたが、サハラ砂漠で発掘された「泳ぐ人の壁画」が描かれた洞窟でのロマンチックな体験や、巨大な砂嵐に襲われた恐怖の一夜を経て、2人は激しく求め合うようになります。
過去のシーンでは、レイフ・ファインズ演じる“ツンデレ”なアルマシーが本当に魅力的です。独身貴族の優雅さ、キャサリンを一途に思う純粋さ、許されぬ愛に突き進む強引さ。アルマシーのさまざまな内面を巧みに表現するレイフ・ファインズにほれぼれしてしまいます。
現在のシーンでは、緊迫した戦禍で、静かに育まれるハナの愛が描かれます。患者が話す激しい愛の物語に耳を傾けるハナは、修道院で黙々と地雷処理を行うシーク人のキップ(ナヴィーン・アンドリュース)に惹かれていきます。そして、キップも献身的なハナに心を開いていきます。
北アフリカとイタリアでの2つの愛の物語を丹念に描いていくため、たっぷり2時間42分の長尺です。
不倫愛にはまっていくアルマシーとキャサリンは、昨今のSNS社会なら思い切り炎上してしまいそうですが、許されぬ愛の切なさと一途な愛の美しさに圧倒されます。
熱気あふれるアラブの街並みや、太陽が照りつける広大な砂漠など、エキゾチックな北アフリカの光景が魅惑的で、激しい愛に身をゆだねたくなるのも分かる気がします。
自信家のアルマシーが、なぜ名もなき“イギリスの患者”として死の淵にいることになったのか。その理由が描かれる壮大なクライマックスが圧巻です。
ストーリー、キャスト、映像すべてが秀逸。非現実的な愛の世界へと誘う文芸ロマン映画の名作です。
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