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ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔(2002)

観る価値のある作品にした
視覚効果技術で生み出された迫真の映像

 
2001〜03年にかけて、ニュージーランドの異才監督ピーター・ジャクソンがトールキン原作の人気ファンタジー叙事詩『指輪物語』3部作の映画化に取り組みました。

第1部『旅の仲間』(01年)はアカデミー賞で13部門ノミネートという高評価を受けましたが、結局、受賞は視覚効果賞を含む3部門にとどまりました。

でも、それもそのはずでしょう。映画を成功させた立役者は、最新技術を結集した視覚効果技術にほかならなかったからです。

製作者たちは技術ばかりを強調することに抵抗を感じるに違いありませんが、あえて言います。第2部『二つの塔』もまた、視覚効果技術で生み出された映像が観る価値のある作品にしています。

まずはガンダルフ(イアン・マッケラン)復活のいきさつを描いた冒頭シーン。いきなり前作の見せ場になったシーンがオリジナル以上のスケールで登場、スクリーン上を縦横自在に飛び回るキャメラワークも技巧的になり、あっという間に物語世界に引き込まれます。

長いプロローグを終えた後の本作は、キャラクター紹介やあらすじ解説のようなまどろっこしさがなく、テンポよくストーリーが展開します。

【ストーリー】
魔力の宿る指輪を捨てに行く使命を託されたホビット族のフロド(イライジャ・ウッド)と旅の仲間たちは3手に分かれて旅路を進むことに。フロドとサム(ショーン・アスティン)は密かに指輪を狙うゴラム(アンディ・サーキス)を道案内にして、メリー(ドミニク・モナハン)とピピン(ビリー・ボイド)は樹木の精エントの長老、木の鬚に守られながら目的地モルドールをめざします。
その一方でアラゴルン(ヴィゴ・モーテンセン)、レゴラス(オーランド・ブルーム)、ギムリ(ジョン・リス=デービス)はサルマン(クリストファー・リー)率いるウルク=ハイの兵が人間族の国ローハンに襲いかかるヘルム峡谷の戦いに巻き込まれてしまいます。

ますます過酷になる旅を象徴し、恐怖色が濃厚になっています。フルCGキャラクター、ゴラムの醜い姿態に身の毛がよだち、特殊メイクのオークやウルク=ハイのおぞましい形相に肝を冷やします。

残酷ながらも架空の生き物たちと戦っていた分、ファンタジーと認識させる要素が残されていた第1部とは、比べ物にならないリアリズムが全編を貫いています。

忠臣のサムとともに進むフロドは、元の指輪の持ち主ゴラムと出会い、欲望との戦いを強いられます。

フルCGキャラクター、ゴラムのインパクトは絶大で、その異様な姿を見れば指輪の魔力が思い知らされるほど。指輪を狙うゴラムは物語の秘密を握る重要なキャラクターですが、そのエピソードは第3部へ持ち越され、第2部では邪悪な魔法使いのサルマン率いる大軍と人間族ローハンが繰り広げるヘルム峡谷の戦いが軸になります。

アラゴルンら勇者たちが応戦する壮絶な戦闘シーンでは、戦争の悲惨さをまざまざと見せつけ、戦禍の大地を木の鬚エントと進むピピンたちのエピソードでは、自然破壊の罪の深さを如実に示しました。

最新鋭の視覚効果技術により娯楽性と芸術性を違和感なく融合した映像と、人道的なストーリーの完成度の高さは本作でも実証されました。

そして、最終章となる3作目『王の帰還』(03年)で、ついに!娯楽エンターテイメントとして決して軽んじることのできない迫真の映像は、ハリウッド映画史にその名を残しました。
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【『ロード・オブ・ザ・リンク』
映画シリーズ最新作の製作を発表!】

進化したゴラムに期待!


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