バーティカル・リミット(2000)
CGとリアリティが見事に融合
最も危険な雪山での壮絶な救出劇
ハリウッドでは、1990年代後半から2000年代にかけて、CG技術が飛躍的に向上したことで、最新特殊視覚効果技術をふんだんに使った、デザスター・パニック・アクション映画が一大ブームとなりました。本作もその中の1本で、大きな話題を呼びました。
八方を急斜面に囲まれ、最も危険な山と恐れられる世界第2位の高峰K2(チョゴリ)を舞台に、決死の救出劇が繰り広げられる山岳アドベンチャー大作。
そのスケールの大きさとリアリティは保証付きです。何しろキャスト、スタッフともども実際に標高8000メートルまで登り、撮影を敢行した、というのですから。
猛吹雪、雪崩、目の眩むような断崖での闘いなど、生々しい自然の脅威を捉えた映像は身震いするほどの恐怖をもたらします。
しかし、本当に恐るべきものは、極限状態がもたらす複雑な人間心理にほかなりません。冒頭のショッキングなエピソードがそのことを雄弁に物語ります。
そして、山岳チームの救助に向かった6人の登山家たちにも、K2の猛威が襲い掛かります。体力以上に精神力が奪われ、勇気、意志、欲望、忍耐など、人間に備わるあらゆる力が限界を超えたとき、想像を絶するドラマが幕を開けます。
父親の死をきっかけに、ピーターとアニーの間には壁がそびえ立ち、兄妹が持つべき信頼と絆が分断されました。彼らを隔てる壁は、人間の肉体の限界を超えた8000メートルの雪山K2からの奇跡の生還によってしか壊すことはできません。
実際に標高8000メートルの山岳で実写撮影された、壮大な雪山のパノラマのワイド感、目のくらむような高さを立体的に映し出すキャメラアングル、ダイナミックな特殊視覚効果を駆使した雪山の救出劇は、恐怖を超えて崇高な人間性を映し出します。
主演のクリス・オドネルは『セント・オブ・ウーマン/夢の香り』('92年)
で注目され、『バットマン & ロビン Mr.フリーズの逆襲』('97年)のロビン役に抜擢され、若手主演俳優として期待されていましたが、本作以降はパッとした活躍がないのは残念なところ。
監督は『マスク・オブ・ゾロ』('98年)、『007 カジノ・ロワイヤル』(’06年)のマーティン・キャンベルが手がけています。
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