パール・ハーバー(2001)
アクション映画のヒットメーカーコンビによる問題作
真珠湾奇襲攻撃を舞台にした歴史大河ロマン
第二次世界大戦下の1941年12月7日(日本時間では12月8日)、日本軍がハワイ・オアフ島の真珠湾に奇襲攻撃を仕掛け、アメリカに宣戦布告、ついに太平洋戦争が開戦しました。
現在、放送中のNHKの朝ドラ『ブギウギ!』では、その当時の日本国内の様子が描かれており、家族が軍隊に駆り出されたり、食べ物や娯楽、自由が制限されたりと、戦時下で生きる人々の過酷な現実を目の当たりにし、私は、今の世に生きることのありがたさを痛切に感じています。
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本作は、日本に悲惨な未来をもたらす忌まわしい戦争、日本軍による真珠湾奇襲攻撃を題材にしたハリウッド映画です。
『ザ・ロック』(’96年)や『アルマゲドン』(’98年)など、1990年代後半以降に、娯楽性の高い典型的なハリウッド製アクション映画でヒットを連発していた、製作ジェリー・ブラッカイマーと監督マイケル・ベイのコンビが、壮絶なアクションと甘くせつないロマンスを融合した、歴史大河ロマンとして仕上げました。
タイトルになっている真珠湾奇襲攻撃は単なるシチュエーションに過ぎず、眼目となるのは過酷な戦争に翻弄された若者たちの姿であり、2人の米軍戦闘機パイロットと1人の従軍看護婦が陥る三角関係を軸に、愛と友情の物語が展開します。
「リメンバー・パールハーバー(真珠湾を忘れるな)」という言葉があるように、真珠湾奇襲攻撃に対するアメリカの恨みは相当に根深いものなのでしょう。そのため、ハリウッドでの映画化にあたっては、反日感情の再燃を危惧する日系人の反発や、巨費を投じたリアルな戦闘シーンへの批判など、製作時からネガティブな話題に事欠かなかった作品でしたが、ふたを開けてみれば、ヒットメーカーコンビの手腕が期待され、大ヒットを記録しました。
しかし、史実を無視した設定や、御都合主義だらけのラブストーリーは批判の的となり、ヒットメーカーの2人に“汚点”を残す作品になってしまいました。
気の毒なのは、俳優たちです。当時、旬の若手俳優として期待されていたベン・アフレックとジュシュ・ハートネットの傷は浅いけれど、ヒロインを演じたケイト・ベッキンセールは世の女性の反感をかうであろう役回りでした。
やはり見せ場は当時の最先端のCG技術で実現した、40分間にわたる怒濤の奇襲攻撃シーンなのですが、リアル過ぎる戦闘シーンは正直言って、観るのが辛くなってきます。
これまで、数多の戦争映画が製作されてきました。21世紀にも関わらず、戦争が急速に身近になっている今、戦争映画の存在意義について改めて考えてしまいます。悲惨な歴史を見せることで、「二度と戦争を起こさない」という抑止力になることが、戦争映画の使命なのではないでしょうか。
再び12月7日(8日)がめぐってくる中で、平和の尊さをしみじみと感じます。
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