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深くて広い溝をどうにかして渡りたい

こんにちは。

株式会社プロタゴワークスあかねです。

ウチの会社が、組織開発で関わらせてもらっているとある中小企業の経営者の方は、積極的に学びの場に赴いて“経営”について様々な事を学んでいて、そこで学んだ事を自社に持ち帰って、何とか自社で活かそうと孤軍奮闘していたそうです。でも、「なかなか実を結んでこなかった」という事を話してくれたことがありました。

その企業に外部から関わらせてもらって、経営者や社員の方々の話をたくさん聴かせて貰って感じたのは、「経営者が学んできた事をそのままダイレクトに自社で使おうとしても、現状では深くて広い溝があるから、なかなか難しかっただろうなぁ」というのが率直な感想でした。

経営者の方が話してくれた「なかなか実を結んでこなかった」の実態も詳細に聴かせてもらった後に、「学んだ内容はその通りなはずなのに、なんでウチではうまくいかないんですかね?」なんていう質問を受けたので、僕が考えていることについて話をさせてもらいました。

「社長が学んできたモノは、経営学をベースにしたとてもレベルの高い内容なので、その内容が社員の皆さんにしっかり使いこなせたら目に見える成果に繋がると思います。ただ、その“学んだ内容”を学ぶ事も、理解することも、伝えることも、使うことも、これはかなりレベルの高いことだと思います。もし、今いる社員の皆さんが、社長と同じように考えて同じように学べて同じように使う事ができる力を持っているなら、きっと“学んだ内容”をそのままの状態で社員の皆さんに伝えるだけでOKなんじゃなかなと思うんです。でも、実際にはそうなっていませんし、なんなら、“社長がまた訳分からないこと言ってるよ”なんて思われちゃうんじゃないかなと(社長、頷く)。ということは、言葉を選ばずに言うと、社長と社員の間にはかなりの差があるのが現状です。それは、業務の技術レベルという話ではなくて、いわゆる“仕事の哲学”とか“仕事の考え方”みたいな普遍的なモノについてです」

こんな話をさせてもらったところ、その経営者の方からは「確かにそうです」という反応をもらいましたので、更に理解してもらう為に、こんな例え話を入れました。

「例えば、社員の方々がずっと“汎用工作機械”で仕事をしてきて、「俺たち、汎用機はめちゃくちゃ使いこなせてるし、これさえあれば何でも作れるよな」ってなっていたところに、社長がある日突然「あのさ、今日からこの機械使ってやってくれ」って“5軸マシンニングセンタ”をいきなり搬入するみたいな話です。“汎用機”から“5軸マシニング”に移行するのはあまりにも飛躍し過ぎてて、せっかくそんなハイレベルな機械を入れても誰も使いこなせないどころか、そもそもプログラミングという新しい概念の習得から必要になるわけですし、宝の持ち腐れになっちゃいますよね。汎用機から自動機に移行するのであれば、きっともっと簡単な機械からになるはずです。しかも、「自動機を導入したら、俺たちの仕事ってもっと幅も広がるし面白いんじゃないかな?」って社員の方々からそういうアイデアが出てくるようになれば、更にスムーズに自動機に移行できるんじゃないですかね?」

なんていうニュアンスの話をしたところ、

「すごくよく理解できました」と言って、反省をしながら、これから先の事を色々と考えを巡らせて話しをしてくれました。

これは、経営者の方がこれまでに一生懸命取り組んできた「正しいこと」から、「役に立つこと」に切り替えてもらえた分かりやすい事例だったなぁと感じています。

そして、これがかなり多くの中小企業で起きているのを、僕たちはとてもたくさん見聞きしています。

経営者の方々は、どうしたって“学び”の場をたくさん経験します。それによって、「もっと良くしていこう」となってそれを自社で実践しようとするのは当然ですし、それはどんどんやっていく必要があるとは思います。

ただ、“学んだ内容”をそっくりそのまま自社で展開しようとするのはちょっと難しいんじゃないかなと、うまくいっていないケースの話を聴かせてもらうと必ず感じます。

だって、“経営者と従業員との間に確実に横たわっている深くて広い溝”の事をほとんど気にとめずに、まるで「従業員が経営者である自分自身の考え方を全て理解して行動してくれるだろう」と言わんばかりの“渡し方”をしているケースばかりしかないんです。

そこにあるのは、“学び”を得ている経営者自身への過小評価と、自社の従業員への過大評価があるような気がしてなりません。

たくさんの“学び”を得ている経営者の方々は、そもそも能動的に学びの場に出て行くわけです。そうなると、“学び”によって得られるモノが増えてきます。もちろん、そういう場に従業員にも出席の機会を与えている場合もあるようですが、そもそも能動的に学ぶ人と、受動的に“学びの場”に来ている人とでは、同じ内容を受講しても学べるモノには大きな差が出てきてしまいます。

しかも、その時の状態は、新しい“学び”を持って帰ってきて伝えたとしても、「社長がまた訳の分からないこと言ってるよ」という冷ややかな反応をする状態です。

そりゃあ、“汎用工作機械”と“5軸マシニングセンタ”くらいの溝になってしまっているのも無理はありません。

でも、実際の金属加工の話として受け取るのであれば、“汎用工作機械”の進化系統の延長線上に“5軸マシニングセンタ”があるというのはわかってもらえたと思うので、であれば、実際の現場では“汎用機”の次に扱う自動機の入門編がどんな段階の自動機なのかは、その業界の素人の僕がするような話でもありません。“金属加工の仕事として”は、汎用機しか使った事の無い人達が、ハイレベルなツールを使いこなせるようになるためには、明らかに段階が必要であることは、もう既に痛いくらいに、体感を伴ってわかりきっているわけです。

そんな痛みくらいの体感を伴って理解できているモノとのアナロジーだったからこそ、この経営者の方には、加工機での例えがバチッとハマったんじゃないかなぁと、今は自画自賛している状態です。

こんな時に、過去の自分が「俺って本当にダメなヤツだな」という自責の念にかられながら、様々な職業を転々としてきた時の経験が生きてくるわけです。

今この仕事をするようになって、ようやく「色んな場面で生きてくる過去の経験」となりましたが、周囲からは“職を転々とするダメなヤツ”というレッテルをバッチバチに貼られながらこれまで生きてきましたし、自分でも「そう言われるのもまあ仕方ないよな」と思って生きてきました。

だけど、それらの仕事を“自分の体験”として持っていますし、それをベースにすると中小企業の組織開発に役立つことが山ほどあるのを実感しています。

だから、今は、胸を張って「僕は、転職経験山ほどありますよ」と堂々と話が出来るようになりました。だって、今はその経験がめちゃくちゃに「役に立つこと」として使えているので。

この経験があるからこそ、この企業の中の経営者側で起きていることも、従業員側で起きていることも、結構ハッキリと理解できる部分がありますし、事実、1対1で話をすると大抵は見立て通りの事が起きているのが確認できます。

そうなると、逆に言えば「何をどうすると整っていくのか?」の手法の部分については、的を外すことの無い案をかなり容易に見つけることが可能です(まあ、そこから先は適応課題の話になるので、ここからは大変だったりしますけど)。

だから、今の僕はこんな事を確信として持っていますし、声を大にして言っていきたいんです。

「“ブラック労働を数多経験して、痛い目に遭いながらも生き延びてきたジョブホッパー”を、ほんの少しだけ角度を変えて捉えると、とても社会の役に立つことができますし、その経験が無い人には到底思いつかないアイデアを生み出す源泉を持っているんですよ」って。

これは、気休めでも励ましでも誤魔化しでもなく、単なる“事実”としてここに明言しておきます。

そう考えると、“人材”の考え方や捉え方が、今までとは全然変わってくるんじゃないかなという気がしていますし、そう考えた方がやっぱり「役に立つこと」に繋がる道が増えるよなぁって思うんです。

となると、ここに″深くて広い溝”を埋めるための、その溝に橋を架けるための、大きなヒントがあるだろうなと思えて仕方がありません。



あかね

株式会社プロタゴワークス

https://www.protagoworks.com/

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