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闘う必要なんて無かったんだよ本当は

こんにちは。

株式会社プロタゴワークスあかねです。

「どうして、“自分たちvs会社”みたいな考え方になるんですかね?」

組織開発で関わらせてもらっている中小企業の経営者から、素朴な疑問という感じでこんな事を尋ねられました。

その方は、何代にも亘る経営者の家に生まれ、新卒の際には他所の会社に就職したそうですが、数年して自身のお父さんが経営していた当時の会社に中途入社して、そこから数年で役員に就任して、それからしばらくして代表になり、以来二桁年数経過しているという経歴の方でした。

その方の経歴を以前に聞いていた事もありましたし、その会社の社員の皆さんに対しては“外部メンター”として関わらせてもらっていたのもあったので、冒頭の素朴な疑問に対して、社員の皆さんと組織に対する“見立て”についての話をさせてもらいました。

僕自身の経験で言えば、身近に“企業経営者”という人は一人も存在しないような環境で生まれ育ってきました。

父親はいわゆるサラリーマンで、母親は専業主婦。まだできたばかりの新しい町であるその名も“ニュータウン”という場所で育ちました。昭和の当時は珍しくも無い様々な地域に存在しているような環境でした。

ニュータウンという名称通り、まだまだ町全体は開発途中で、ところどころに空き地がありましたが、時間の経過と共にどんどん新しい家が建っていき年単位で町並みが変化していったのを今でも覚えています。近隣には“とても大規模な雇用を創出する施設・地域”がありましたので、近隣の大半の家庭の親がそこで働いているというのが当たり前の町でした。

そんなどこにでもある一般家庭(だと思っていた)我が家では、父親が仕事から帰ってくると「とても疲れた」という表情や態度や言動をする人でした。

そして、母親も子どもである僕を含めた兄妹もそんな「とても疲れた」父親に対して、(自分たちなりに)気を使ったりするわけですが、それでも「何かを刺激してしまい怒られる」なんて事はとても頻繁にありました。

そんな家庭環境が、僕にとっては“とても自然なこと=日常の当たり前”だったので、そこに対して「疑問を持つ」とか「これって普通なのかな?」と考えるという事は、そこからかなり時間が経過するまで頭の中に浮かんでくる事はありませんでした。

また、子どもだった当時“親以外に身近にいる大人”として普段から関りのある人達と言えば「学校の先生」でしたが、僕の身の周りにいた“その当時の”先生達は、子どもながらにして「この人達は尊敬できない大人だ」と明確に認識していたくらいに「自分の機嫌で子ども達に当たり散らす」という特徴のある人がほとんどでした。

とは言え、これも当時の僕にとっては“とても自然なこと=日常の当たり前”だったので、ここにも疑問を持つことができるようになったのは随分と時間が経ってからのことでした。

そうして時間が経ち、それを疑問に思うようになってから考えてみると、自分の身の周りにいる大人達が、「仕事は疲れるし大変で、機嫌が悪くなって当たり前なんだから周囲の人間が私に気を遣え」というメッセージを発し続け、それを僕は知らず知らずのうちに受け取り続けてきたという事なんだ。そう思い至りました。

そんな子どもだった時分に、僕の身の周りにいた大人が、

「世界は誰かの仕事で出来ているんだ」なんて事を教えてくれた事はありませんでしたし、「仕事の意義や意味とは」なんて話を聞いた事もありませんでした(と記憶していますが、もしかしたら、学校の授業とかでは聞いていたのかもしれませんが、それよりも先生の日常の態度の方をよく覚えています)。

覚えているのは「金を稼ぐってのは大変なんだよ」という話を多くの大人達がしていたということだけです。

そう考えてみると、確かに自分自身が「仕事をするんだ」と意識をするようになってから長い間、「仕事は大変で疲れるし、自分を雇う側の言うことを嫌々我慢して聞くことで給料をもらうんだ」なんていう風に、誰からも教わっていないはずなのにもかかわらず、そんな風に自然と考えていたような気がするんです。

それとは対照的に、件の経営者の方は、「(代々の家業としての)仕事の意義や意味」とか「社会に貢献する必要性」とか「お客さんからいただいた対価を従業員の皆さんに還元している」とか「ゆくゆくはこの会社を経営する立場になるんだ」という話を、直接的にも間接的にも受け取る機会が“とても自然なこと=日常の当たり前”として存在していたようでした。

そうなると、「仕事をする」という状況に直面した瞬間よりももっとずっと以前から既に、持っているモノも立っている場所も全く異なっているのかもしれません。

であるならば、既に何年も勤めている従業員の方であっても未だに「自分vs会社」の構図を内面化したままでいたり、もしかすると過去の僕のように、そんなモノを内面化している事にすら気が付いていないまま「vs会社」の言動を行っている可能性も多分にあるのかもしれません。

なんて話をさせてもらいました。

もちろん、現実問題として「自分vs会社」が起きているのを“全くの第三者も含めた自他共に認める状況”にいるケースがあるというのは僕も(実体験に基づいて)知っています。

だけど、現在の僕のように第三者として関わらせてもらっていると、“どうやって従業員寄りの立場で見たとしても客観的には「従業員vs会社」は起きていない”と断定できる状況というのも現実的に存在しています。

その時には、「従業員vs会社」だと考えている人達に対して、客観的な事実としての現状認識をしてもらう事が必要になってきます。

その時には、“客観的な事実”を揃えて確認してもらうのと、その“客観的な事実”がどうして存在しているのかを当事者から説明してもらう事だったり、それらを認識したうえで「従業員vs会社」だと認識していた人が今はどう感じているのか?を聴かせてもらう取り組みが重要だと考えています。

そんな取組みをしていると、「これはもうどうしようもないよね」と誰もが半ば諦めていた“社内に蔓延する「従業員vs会社」というムード”が徐々に晴れていくのを体感してもらえたりするんです。

そして、それが晴れていくと、そこに見えるのは“希望”です。

冒頭の疑問を感じるような「従業員vs会社」という考え方や価値観は、僕の実体験からも言えますが、本人が望んで獲得した考え方や価値観では無い可能性が非常に高いです。そもそも、「vs」で捉える必要性が無い場合もたくさんあります。

だけど、それは、当事者の話を聴かせてもらわないと実際には何もわかりません。ただ「こうなんじゃないか?」「どうなんだろう?」と想像しているだけでは現実は何も変わりませんし、他者の考えている事について、話を聴く事無しに塑像して仮説を立ててもそれは単なる妄想に過ぎませんし、その仮説が仮説としての役割を果たせる可能性はあまり高くないはずです。それはいわゆる“当てずっぽう”になり、それによって“何らかの対応”をされる当事者としたら、運よく“当てずっぽう”が当たった時以外は(つまり、ほぼ全ての場合において)気分を害します。

これはもう仕方ありません。

だって、僕達にはテレパシーは備わっていませんから。

だから、対話を重ねるしかありません。

時間はかかるし、手間はかかるし、労力はかかるし、なんならお金もかかります。

だけど、「わからないもの」を無理やり「わかるよ」ってしてしまっても何も良い事はありません。

本当は何の手がかりも無いのに、運とか勘とか“実際には何の根拠も無いから説明もできない「見てれば、俺にはわかるんだよ」”とかの、途轍もない“当てずっぽう”で「アイツはこう考えてるはずだ」なんてやっても、逆効果しか生まれません。

それが結局、当事者の「どうせわかってもらえない」とか「何を言ってもダメだから」という頑なな態度に変わっていってしまいます。そんな事例を本当に唸る程たくさん見聞きしてきました。

だから、件の経営者のように、対人関係で困ったり悩んだりしたら“素朴な疑問”を持って欲しいですし、わからないものはわからないんだから「問いを立てて考える」という事を、みんながしてくれたらいいのにな。そう思うんです。

「わかる」んだったら根拠があります。

「わからないもの」は、その時点の自分には何をどうしたってわからないんですから、“わかるための変化”が必要です。

それは、考え方だったり観察の仕方だったり解釈の仕方だったり言葉の選び方だったり表情だったり態度だったり行動だったりするかもしれません。

でも、一番は、「相手の話をちゃんと聴く」というところからしか始まりません。

対話って、結局それだけですし、「自分の話をちゃんと聴いてもらえた」と感じることだけで、人は大きく変化する事があるんだというのはこれまでにたくさん対話を実践してきていつも感じている事でもあります。

「相手の話をちゃんと聴く」

それだけで、世の中も変わりますし、相手も変わりますし、何しろ自分自身が一番変わるんじゃないかなと思っています。

これは、まさに冒頭の「どうして、“自分たちvs会社”みたいな考え方になるんですかね?」という問いの中の登場人物でもあった、「自分vs会社」という考え方に囚われまくっていたどうしようもなかった僕自身が、「世界は誰かの仕事で出来ている」と考えられるようになっている現在のように変化した事からも証明出来ているんじゃないかと思っています。


みんなが「相手の話をちゃんと聴く」対話的な世の中になったなら。

誰にとっても明日はきっともっと良くなる。

僕にはわかります。



あかね

株式会社プロタゴワークス

https://www.protagoworks.com/

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