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【小学生観察日記】壊れかけのRadio

「壊れてもバラバラにはならないけど、痛いものってなーんだ。」

先生が手にしているのは、「1・2年生のなぞなぞ」という本。

夏休み中の学童では、朝から空き教室に集められた小学生が必死に手を挙げてなぞなぞの答えを発表しようとしている。


「おもちゃ!」「積み木!」「たまねぎ!」

「ちょっと皆、なぞなぞだよ? もっとよく考えてごらん」

「壊れる」から連想されたものをそのまま口から出している何の捻りもない回答に、先生方は皆苦笑していた。

「たまねぎ!」に関しては、全くもって意味不明である。

「(私)先生は、答え分かりますか?」


なぞなぞを出している先生から突然会話を振られ、それにつられて20名弱の小学生たちが全員こちらを向いてきたのでとても戸惑った。


しかし、私は分かっている。こんなの簡単だ。


正解はおそらく、「心」である。


私たちはいつだって、自分の「心」が壊れていく感覚を覚えながらも、状態が視覚的に見えないことに苦悩し、どう直したらよいのかも分からず痛みに耐えて来たではないか。

大切なあの人の「心」を自分が傷つけるわけがないと信じていたのに、見えないせいで気づいたら踏みにじってしまっていたことだってあった。

「心」はいつだって、見えない代わりに「痛み」で壊れていることを教えてくれるものである。


私は不敵な笑みを浮かべて、こちらを見つめる小学生たちを見返した。

先生は、答え知ってるよ。もっとよく考えてごらん。

口に出さずとも、目つきで小学生たちは理解してくれたようだった。

小学生たちは目線を黒板や自分の足元に移し、無言で一生懸命考え始めた。

「じゃあ、ヒント出してあげるね。ヒントは、皆の体の中にあるものだよ。」

問題を出している先生が、優しい声でゆっくりと話した。

一人ひとりが持つ「心」は、目に見えないけれどきっと体の中にある。

「心」が体の中にあるから、胸がキュンと痛くなったり、ドキドキしたり、体の中から涙を出したりするのだ。

果たして1・2年生にこの感覚が分かるのだろうか。

先生もいじわるな問題を出すなあ、と思った。


「あ!わかった!!!」


1年生の中でずば抜けて頭の良い男の子が、元気に手を挙げた。

君はいつも本を読んでいるからね。心動かされる本に出会った経験があれば、体の中に「心」がある感覚がもう分かるのかもしれない。

「たまねぎ!」と発言した子に比べて少し大人びた様子の彼だから、一番に手を挙げたことに納得が出来た。


「お、〇〇くん。じゃあ、答えを皆に言ってごらん。」

先生がその男の子を指名する。

男の子は誇らしげに、でも少し照れた顔をしながらその場で素早く立ち上がった。

20名弱の小学生たちの目線が一気に男の子の方に集まる。

男の子は、ゆっくりと口を開いた。


「正解は・・・。」


「お腹!!!!!!!!!」


ふぅん、

確かに。

お腹ね。

なるほど。

お腹かあ、。

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