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2020年11月の記事一覧

介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑯

介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑯

 自分が今過去に戻りたいと思った事はないし、戻った所で良い大学に行って有名になりたいとも思わない。
 映画では過去に戻ったり未来へといくSF映画が流行っているが、僕には理解できなかった。

 この介護の仕事をして、未来には行きたいがこの人が認知症になる前はどんな人だったのかと気になる事がある。

 昔を知っているのは、その人の友人や家族などだけだからである。
 職業、性格や趣味などはアセスメントを

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介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑮

介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑮

 初任者研修が終わり社長が、
「どうだった?」と聞かれたので
「とても勉強になりました」というと
「良かった。これで、介護士として一歩全身ね」と笑顔で言ってくれた。

 確かに初任者研修に行くだけで、自分の中で”何故”という疑問が頭の中で産まれるようになった。
 この言葉を発するのはなんでなのか?
 トイレが近いのか?お腹が減っているのか?水が面白いのか?

 まるで、赤ちゃんの鳴き声に何かしら意

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介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑭

介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑭

 初任者研修は午前中に終了し、平田さんが僕たちを最終日に、自分のマンションで打ち上げをしないかと、1週間前から声をかけてくれた。

 平田さんは、普段からこういった飲み会などをしていると、研修の休憩時間に話していた。
 僕自身はお酒も飲まないし、タバコも吸わないので飲み会とかはコンビニのバイトで少しいったくらいだった。場所も大衆居酒屋で自分はソフトドリンクを飲みながら空気みたいな存在で、たまに愚痴

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介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑬

介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑬

 初任者研修もいつの間にか最終日を迎えた。
 現場で働きながら通えたおかげで、とても為になった。最初は知らない人ばかりだったが、良い先生のおかげもあり有意義な時間を過ごせた。

 何気なく人と付き合ってきたデジタル化した僕の生活だったが、アナログ的な生活は産まれ変わったみたいに新鮮だった。

 最終日にはテストがあった。難しいかなと思い解いてみたが授業とレポートをこなしていたので合格する事ができた

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介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑫

介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑫

 初任者研修に通いながら、訪問介護(以下ヘルパー)で実践する事は凄く為になった。コンビニという仕事はコンビニの上司に習うだけだが、介護という仕事は、介護を熟知した先生に習うので面白かった。

 勿論、井上さんに聴くとがあったが、自分自身が何が不得意なのかもわからなかった。学校の試験でも何が不得意という分析など自分自身に何が必要という事を考えなかったからかもしれない。

 授業を受けた事で、井上さん

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介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑪

介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑪

 介護の実習でベットメイキングの仕方など、今迄にやった事が無い事を教わった。シーツはシワがないように伸ばす。これは床ずれ(以下、褥瘡(じょくそう)を防ぐ為でもある。
 褥瘡と聴いて、仕事でもお尻に褥瘡が出来ている人がいて、アズノールという薬を塗る事がある。

 その経験もあり、最初は小さな傷がお尻に出来るだけだと思っていたが、写真を見せられてグロテスクな後に少々ひいてしまった。
 重傷の褥瘡の人は

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介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑩

介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑩

 初任者研修当日、僕を含め受講者は7名だった。介護士として現場に居る人は3名で他は介護士ではなく。福祉に携わる人だったり、介護を経営したい人など一人一人目的が違っていた。

 初日は自己紹介が始まり、授業にはいった。
僕は自己紹介では「訪問介護をやっています」くらいしか覚えていない。他にも何かを話していたのは確かだが。
 隣の僕より少し歳上の人では、
「介護施設を経営したい」
 と自己紹介をしてい

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介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑨

介護小説《アリセプト〜失われる記憶》⑨

 利用者さんによっては、オムツ介助やご飯や買い物の援助など様々だったが。
 利用者さんと一緒に住んでいるご家族さんの中には、ビデオやテープレコーダーを設置している所もあり、利用者さんにしっかりとサービスをしているかなど見ているご家族さんもいた。

 これは、高齢者が虐待されているのが、ニュースで流れていたりするからでもあるらしい。防止をする事だろうか?
 
 産まれてきた中で1番、集中して物をこな

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