マガジンのカバー画像

経済

471
運営しているクリエイター

2021年6月の記事一覧

「安いニッポン」・国民国家・帝国

昨日の記事に続いて「安いニッポン」についてだが、この根本原因はグローバリゼーションである(緊縮財政ではない)。 日本が低賃金の国になったのは、産業革命期のイギリスではなくインドを目指して構造改革したためである。 インドなどでは、人件費が安く、資本の価格が高い状況でした。そのため、機械化した工場に投資するよりも、たくさん人を集めて労働集約的な人海戦術でイギリスの繊維産業に対抗していたのです。 しかし、技術はどんどん進歩します。機械化された工場で生産する方が、たくさんの安価な

日本が「安い国」になった理由

反緊縮派に典型的な誤解。 デフレは20年以上も続いていない。デフレではないので、今一番やらなければならないことは「デフレ脱却」ではない。 高井議員は外国との相対的な物価水準は為替レートに左右されることを失念している。1990年代に日本の物価が高かったのは、日本のインフレ率が他国よりも高かったからではなく、プラザ合意後のドル安とクリントン政権の円高誘導のためである。20年以上物価が変わらなくても、代わりに円高が進行していれば日本は「安い国」にはなっていない。 高井議員は日

元日銀マンの株主主権主義批判

経済失政の責任を押し付けられた日銀マンの怒りが伝わってくるような内容である。 経済産業省は、東芝に介入したことではなく、「伊藤レポート」などを通じて株主の権利が何よりも優先するかのような空気を作り出した愚かしさのほうを猛省すべきなのである。 企業経営が社会全体にとって最適な選択をするかどうかには関係なく、企業支配における株主の立場を強化することは、富める者をより富ませ、貧しいものをより貧しくさせる効果があるわけだ。 貧富の格差拡大は公正あるいは社会正義の問題だけでなく、

「朝まで生テレビ」での反緊縮派のデマ

「朝まで生テレビ」で森永卓郎と藤井聡がデマを叫んでいたので二点を取り上げる。 森永は2020年度に100兆円超の新規国債を発行しても金利やインフレ率が上昇しなかったことを根拠に、同規模(インフレを調整した実質ベースで)の国債発行と財政支出を毎年度続けられると主張していたが、問題が無いはずがない。2020年度に可能だったのは、民間需要の減少と、給付の多くが貯蓄に回ったためで、経済が平常運転に戻れば、財・サービスのインフレand/or資産インフレを引き起こすことは必至である。

少子化と緊縮財政

また例の漫画家がデマを発信している。 これまでに検証したデマの一覧。 家計が苦しいとすれば、その原因としてまず考えられるのは給料が少ない・増えないことであって緊縮財政ではないはずである。何でもかんでも緊縮財政が原因だとするこの漫画家のような論者は、株主至上主義の擁護者になっている。

クルーグマン「日本経済は悪く言われ過ぎ」

1998年にmanaged inflation(いわゆるリフレ政策)を日本に提案したクルーグマンが、バブル崩壊後の日本経済は言われるほど悪くないと書いている。 Now the truth is that Japan’s failures have, in their own way, been overhyped as much as the country’s previous successes. The island nation remains wealthy an

賃上げを阻害する二つの要因

またまた同じネタだが、よくある誤解について。 日本だけが賃金が上昇しない理由は、繰り返しになるが経済全体が成長していないからである。 経済が順調に成長していれば、その分だけ物価や賃金も上昇していくのが普通である。逆に言えば、経済成長なしに賃金が持続的に上昇することはあり得ないわけだが、どうすれば経済の持続的な成長が可能になるのだろうか。最終的には企業の生産性を向上させる以外に方法はない。 日本経済は2002年1月~2008年2月には戦後最長(73か月)、2012年11月

デフレと「国民経済」の終焉

池田信夫も当noteとほぼ同じ見解に達したようである。 こうした製造業の空洞化による国内投資の不足が、2000年代以降のデフレやゼロ金利の最大の原因である。 少々異なるのはこの部分👇で、企業の海外投資の主な原資は低金利での負債調達ではなく、内部資金である。外部資金を大量に調達していれば、企業は資金余剰ではなく資金不足になっていたはずである。 グローバル企業にとっては、2010年代は「失われた10年」ではなかった。日銀の緩和マネーで資本コストがほとんどゼロになり、大量の資

無能バッシングの前にファクトチェック

「無能が多数派」と書いてあるのに、自分を「優秀な若者」になぞらえて「無能をクビにしろ」と熱くなる無能(というより平凡)な庶民が少なくないのだろう。 「無能をクビにすれば自分の給与が上がる」という発想は、株主利益の最大化や「政府支出を徹底的にスリム化すれば日本経済は復活する」という緊縮財政・小さな政府の正当化につながる。国民総出でムダとりに熱中してどんどんやせ細っているのが日本経済である。 上級国民が下級国民を焚き付ける ↓ 下級国民同士が賃下げに尽力する ↓ 増えた利益は

消費税の影響が過大評価される理由

日本の反緊縮財政派の特徴の一つに消費税の影響力を過大評価していることがあるが、これは前後即因果の誤謬だと考えられる。 1989年4月に3%で導入→1990年1月から株価大暴落 1997年4月に5%に引き上げ→1997年11月から金融危機 2014年4月に8%に引き上げ→特に何も起こらず 2019年10月に10%に引き上げ(+軽減税率)→2020年3月からコロナ禍 と、2014年を除くと消費税増税の少し後に経済に極めて大きな変調が生じている。バブル崩壊後の不良債権問題や構造

消費税減税研究会のあまりにもお粗末な提言⑶

今回はこの記事を基にする。 山本太郎は大嘘つきか無知も甚だしいと断定できる。ゼロ成長、マイナス成長が25年間続いている」は完全な出鱈目である。 この大不況はコロナだけが原因ではない。山本太郎はコロナ前からすでに日本は大変な経済状況に陥っていたと訴える。 「日本はこの25年デフレが続き、コロナの前からそもそもGDPはほとんど伸びておらず縮減している状態でした。一方、世界各国はその間に1.5~2倍も伸ばしている。日本のようにゼロ成長、マイナス成長が25年間続いている国は他にな

消費税減税研究会のあまりにもお粗末な提言⑵

前回の続き。 5ページ 現在、日本は経済が衰退し、格差が拡大する「衰退途上国」である。長期的に見てその根本原因と考えられるのがデフレである。デフレにより賃金は上昇せず、GDPも増加しない。 デフレの発端は企業部門の債務・設備・雇用の「三つの過剰」解消である。デフレにより賃金が上昇しないのではなく、賃金が上昇しないからサービス価格が上がらず、一般物価もディスインフレが続いている。 政府は基本的方針として増税政策を続けている。増税は、貨幣を減らすということであり、財政支出

消費税減税研究会のあまりにもお粗末な提言⑴

消費税減税研究会が発表したとりまとめの内容があまりにもお粗末なので、数回に分けて検証する。当noteのレギュラー読者は既読の内容であることをお断りしておく。 70ページに掲載されている講師陣の話をそのまま羅列しているだけで、内容が整理されていない。生煮えのまま発表したことが歴然としている。 1ページの基本認識から誤っている。 長期的に見ても、消費税が導入されて30年以上が経つが、税率は徐々に引き上げられた反面、成長率は低迷し、物価や賃金の上昇は鈍く、慢性的なデフレの状況