「朝まで生テレビ」での反緊縮派のデマ

「朝まで生テレビ」で森永卓郎と藤井聡がデマを叫んでいたので二点を取り上げる。

森永は2020年度に100兆円超の新規国債を発行しても金利やインフレ率が上昇しなかったことを根拠に、同規模(インフレを調整した実質ベースで)の国債発行と財政支出を毎年度続けられると主張していたが、問題が無いはずがない。2020年度に可能だったのは、民間需要の減少と、給付の多くが貯蓄に回ったためで、経済が平常運転に戻れば、財・サービスのインフレand/or資産インフレを引き起こすことは必至である。

森永「100兆出し続けて何の問題が起きるんですか」
小林慶一郎「そらインフレになりますから」
森永は「インフレになってないじゃないですか」

これに関しては、明らかに小林が正しい。

藤井も「不況・デフレが続くことの悪影響を過小評価してはならない」「不況が続いて成長率が低ければ企業は投資しない」と力説していたが、これも事実ではない。

藤井はこれまでも、1997年4月の消費税率引き上げからデフレと不況が続いているかのように主張しているが、デフレは第二次安倍政権発足とほぼ同時期に終わっている。

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マクロ経済も、バブル崩壊、金融危機、ITバブル崩壊、世界大不況(リーマンショック)、コロナ危機で落ち込んだものの、トレンドとしては成長を続けている。

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藤井は「日本経済の成長率は世界最低」と喧伝しているが、それも明明白白なデマである。人口を調整すると、日本の実質成長率は決して低くない。

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経済が低迷しているように感じられるのは、経済の金融化とグローバル化、宮崎義一の言葉では「国民経済の枠組み」から「トランスナショナルな枠組み」への構造変化によって、所得が国民に満遍なく分配されなくなったためである。従って、財政支出拡大は「経済問題」の解決の決め手にはならない。

19世紀的な国民国家の枠組みが崩れていくことを、私は『ボーダレス・ワールド(国境なき世界)』(1990年刊)という本の中で「物理的必然」と論じた。国家は国境という地理的ボーダーで規定されている。しかし交通網が発達し、金融が発達し、通信が発達していくと人、モノ、カネ、情報が軽々と国境を飛び越えるようになる。従って企業は国境を越えてオペレーションできるようにしておかないと、狭い国家の枠の中にとどまっていたら死に絶えるしかない――。というのが私のボーダレス・ワールドの基本概念だ。
思考の枠組みをトランスナショナルな経済にまで拡大したとき、ケインズがかつて「国民経済」の枠組みの中においては解決可能であると確信していた「経済問題」(貧困、分配不平等、不況)がにわかに巨大な難問としてわれわれの眼前にその実体を現すだろう。

財務省のプライマリーバランス黒字化路線の批判が正しいからといって、デマをばら撒いてはいけない。目的は手段を正当化しない。

なお、藤井とアトキンソンはこの点👇では一致している。

付録

国は永続的存在→国債は借り換えを繰り返して元本の完済をいつまでも先送りできる→利払いが持続可能であればよい。つまり、国の財政負担の大きさを表すのはストック(国債残高)ではなくフロー(利払費)である

利払費とインフレ率の動向は、財政引き締めを急ぐ必要が無いことを示している。

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