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マネー・MMT

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MMTのルーツは新左翼思想
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2020年5月の記事一覧

"平成の徳政令男"の事実誤認

この記事の通りの発言なら、亀井静香も現代の通貨システムについて誤解していることになる。 「こういうときこそ大胆に国債を発行することだね。俺が(自民党)政調会長をやっていた時と違って、いまは日銀が引き受けるのだから。日銀が引き受ければ、現金を借りられて、それで経済が回るわけだよ。そして地方交付税交付金を思い切って各自治体に出し、各自治体はそれを自由に使うという2本柱だね。生活保護に何百兆か出すと思えばいいわけだ。簡単にできることだよ。俺が財務大臣だったら一発でやっちゃうね」

財政破綻論者の正論

この人(⇩)の財政破綻論・日銀破綻論には賛同できないが、下のツイートの大筋は正しい。 正しくない部分は二つ目のツイートの「そのマネタリーベースを基に民間の金融機関の信用創造で市中に出回る貨幣が供給されます」で、現実はその逆の「民間銀行が信用創造で市中に銀行預金を供給→預金引き出しや他行への送金にマネタリーベースが必要になる→中央銀行が受動的に供給」である。ただし、これは中央銀行が完全に受け身ということではなく、政策金利≒民間銀行のマネタリーベース調達コストを通じて、民間銀行

「財政破綻」の定義とリスク

積極財政派が財政再建派を揶揄しているが、両者の議論が噛み合わない主因は「財政破綻」の定義とリスクが異なることである。 当の小林氏自身も、自身が編著者となった『財政破綻後 危機のシナリオ分析』という本の中で、日本の国債がデフォルトしないことを認めているそうです。 積極財政派の定義:デフォルト 財政再建派の定義:インフレ率または名目金利が高騰して制御できなくなる(『財政破綻後』より) 金利に織り込まれる主なリスクは信用リスクとインフレリスクだが、積極財政派は「信用リスクはな

税と国債は政府の財源~MMTは「現実」ではなく「虚構」

現代貨幣理論(MMT)の「ショッキングな結論」が誤り(と言うよりも、素人を引っ掛けるレトリック)であることを論証する。 オーソドックスとMMT日本の財務省の説明(⇩)にあるように、国(中央政府)は徴税や国債発行によって行政活動の財源を調達している、というのがオーソドックスな考え方である。 国は、そのための財源として税金や国債等により民間部門から資金を調達して支出を行うといった財政活動を行っており、その所有する現金である国庫金を一元的に管理して効率的な運用を行っています。

金の裏付けのない「現代貨幣」が人々に受け入れられる理由

現代の貨幣に関するよくある誤解について取り上げる。 通貨制度というものは元々不安定なものだ。現在の金などの裏付けがない、言ってみれば「無担保通貨制度」は、1971年のニクソンショック以降に発展したから、50年ほどの歴史しかない。ニクソンショックとは、同年8月15日に米国政府が、それまでの固定比率(1オンス=35ドル)による米ドル紙幣と金の兌換を一時停止したことを指す。 その影響もあって、MMT理論のような馬鹿げた説が登場するまでになった。 お金(貨幣)とは共同幻想にしか過

麻生財務大臣の疑問「国債が増えても、借金が増えても金利が上がらない」の答え

麻生財務大臣が「国の借金が増えると金利が上がる(→だから財政再建を急がなければならない)」という警鐘を狼少年に例えた。 財務省から該当箇所を引用。 借金が増えて、200ないし50~60から1100(兆円)といえば4倍に増えたんだ。4倍に増えたら金利はもうちょっと上がるんじゃないの。何で下がるんだ。国債が増えても、借金が増えても金利が上がらないというのは普通私達が習った経済学ではついていかないんだね、頭の中で。今の答えを言える人が多分日銀にもいないんだと思うけれどもね。そこ

Forbesが片棒を担ぐMMTのプロパガンダ

Forbes JAPANがMMTのプロパガンダの片棒を担いでいたので、「騙し」のポイントを指摘する。 番組の中でバーナンキ元議長は前後の部分を以下のように述べていた。 「いえ、税金ではありません。今回救済された銀行は、ちょうどあなたが市中銀行に口座を持っているのと同じような感じで、FRBに口座を持っています。だから銀行に融資するために行うことは、彼らのFRBの口座をコンピューターを使って操作するだけです。それは借りるというよりも、お金を印刷することにはるかに似ています」 バ

アメリカのマイナス金利政策を巡る対立

アメリカではトランプ大統領とFedのパウエル議長がマイナス金利政策を巡って対立している。 マイナス金利の支持者には、「政府債務の対GDP比が90%を超えると経済成長率が低下する」という大々的に喧伝された研究が実は計算ミスをしていたことを学生に指摘されたロゴフがいる。 The big talk in the world of economics continues to be the famous study by Carmen Reinhart and Ken Rogof

租税貨幣論の信憑性

この記事の続編。 MMTの租税貨幣論だが、信用貨幣は徴税する国家が誕生する以前の社会でも使われていたらしいことを考慮すると、その信憑性を疑わざるを得ない。 中野 MMTが立脚しているのは「信用貨幣論」という学説です。 要するに、人々がお札という単なる紙切れに通貨としての価値を見出すのは、その紙切れで税金が払えるから、というのがMMTの洞察です。貨幣の価値を基礎づけているのは何かというのを掘って掘って掘り進むと、「国家権力」が究極的に貨幣の価値を保証しているという認識に至

MMTが"woke"と過激化を誘発する理由

こちらの記事(⇩)の付録だったが、分量が多かったので一つの記事として独立させることにした。 信者を攻撃的にしてしまうMMTの思想面について掘り下げる。 現行制度の理解が乏しいために、MMTでなくても説明できることを「MMTだけが説明できる」と"woke"してしまったのがMMT信者(多くがネットde真実系の素人)。 wokeであること自体は、もちろん素晴らしいことでしょう。しかし、一部ではそれが暴走して「絶対的な正義」を掲げ、自分と違う意見や大らかな意見、あるいは何も気に

スウェーデンのマイナス金利政策の効果はマイナス

スウェーデンの研究者が、Riksbankのマイナス金利政策は益よりも害が大きかったと結論している。 We conclude at this early stage that the costs of negative interest rates to society most likely exceeded the wider benefits. While the impact of the negative rates on the domestic inflati

租税貨幣論は不要

MMTの骨子の租税貨幣論(Taxes drive money)について批判的に検証する。 「現代貨幣」の大部分は、金や外貨によって裏づけられておらず、さらに、その利用を命じる支払手段制定法がなくても人々に受け入れられる。そうだとすれば、貨幣はいったいなぜ受け入れられるのだろうか? 謎は深まるばかりだ。教科書に載っている典型的な答えは、「あなたが国家通貨を受け取るのは、他人がそれを受け取ることが分かっているからだ」というものである。要するに、受け取られるから受け取られるのだ。

池上彰の「お札と国債」に関する解説は正しかった

先日の記事では池上彰の解説の誤りを指摘したので、 今回は正しい部分について取り上げる。ここでの「お札」は日銀当座預金を含むものとする。 日銀がお金を刷ってる場合は、何か価値のあるものと代わりにしないとお札を出すことはできないんですよ。 昔は金や銀をいっぱい持って「金や銀を持ってますよ」と言ってお札を発行してた。今は国債という国が出している価値のある国債を持って、その分お札を発行してますよ、というルールになっている。 銀行が預金を発行する信用創造は「無からカネが湧いてく

「日本に余力はない」という困った思い込み

元八千代証券のエコノミストはさておき、弁護士の財政分析の誤りについて取り上げる。 アベノミクス以降、借換債(国債の借り換えのために発行されるもの)も含めた国債の総発行額は年間150兆円ほど。うち5~7割ほどを実は日銀が民間銀行等を通じて買い入れるインチキをしている。日銀が手を引けば国債が暴落し、金利が急騰し、国の資金繰りがつかなくなる、つまり出口がありません。 このような論者が理解していないのは、国債金利は基本的に予想インフレ率によって決まるということである(加えて実質経