MMTが"woke"と過激化を誘発する理由

こちらの記事(⇩)の付録だったが、分量が多かったので一つの記事として独立させることにした。

信者を攻撃的にしてしまうMMTの思想面について掘り下げる。

現行制度の理解が乏しいために、MMTでなくても説明できることを「MMTだけが説明できる」と"woke"してしまったのがMMT信者(多くがネットde真実系の素人)。

wokeであること自体は、もちろん素晴らしいことでしょう。しかし、一部ではそれが暴走して「絶対的な正義」を掲げ、自分と違う意見や大らかな意見、あるいは何も気にしない人々を強く非難するような人も出てきています。

MMTは債券市場から「財政規律からの逸脱を警告する役割」を奪う、政府の無謬性を前提とした反市場主義・統制経済の理論。その証拠に、教祖は政府の情報隠蔽(反グラスノスチ)を支持している。

もしかすると、国の借金に関するデータを一切報告しないことが賢明かもしれません。有益な情報ではなく、人々を不安に陥れるだけだからです。情報提供のあり方を変えるか、全く提供しないかのどちらかにすべきです。

中野が22:05~で話しているように、西洋のMMT支持者は主に左派である。

「アメリカとかでMMTを支持しているのは実は若者が多い」
「いわゆる社会主義者と言われる人たちがMMTを担いでいるんだけど」
「アメリカの今若い人たちって社会主義って別にそんなに抵抗がないんだって」
中野氏は「コロナ危機後の世界秩序は、コロナ危機の下で社会主義化を決断し、実行した国が生き残り、社会主義化できなかった国が凋落する」と述べた。

MMT信者の上から目線と完全一致を求める不寛容性は、MMTがマルクス主義→新左翼→progressiveの系譜の思想であることと関係する。

“The reason Marx is where I think you should start” (if you want a deeper understanding of economics) “is because he outlines the difference between the fundamental relations of capitalism and the superficial exchange relations,” he says.
私が担当する、ミズーリ大学カンザスシティ校の大学院マクロ経済学ゼミで、長い学期の終わりに、一人の学生が風変わりな方法で最後のプレゼンテーションを行った。彼は参加者一人ひとりにレンズがゆがんだ奇妙なメガネを配り、それをかけるように頼んだ。我々がゆがんだピントをしばらくの間調整しようとしていると、「学期が始まったころ、私にはマクロ経済学の世界がこんな風に見えていました。しかし、今はまったく違って見えます。ゆがんだメガネをはずし、物事をはっきりと見てください」と彼は言ったのである。

これは逆で、MMTによって世界観が歪むと、

❶本来、政府はゼロコストで通貨発行できる。
❷しかし、現状では国債投資家に利息を支払っている。
❸これは、国債投資家が「寄生階級」であることを意味する。
❹国債投資家から不当な利潤を取り上げる「革命」が必要である。

「マネー権力」を市場から取り上げて国家管理にする社会主義化が必要という信念を持つようになる。

MMT suggests that the policy interest rate should be maintained at zero, which means there is no need to have stocks of public debt in the hands of the non-government sector.
It is in this context that I use the term corporate welfare in association with the issuance of public debt.

MMT提唱者の目標はJob Guarantee Programによる失業ゼロ――全員が働いて自由になる――社会の実現であり、そのプログラムの一つが「現代の資本家階級=国債投資家の打倒」だという認識が必要である。

念のために書いておくと、国債の利息には、インフレによって没収される国民の購買力を補償する意味がある。銀行や保険会社、年金基金等が受け取る国債利息は、預金の利息や保険や年金の給付の原資となって国民に還元されている。

レーニンはこう語ったと伝えられている。資本主義を破壊する最善の方法は、通貨を堕落させることだと。政府はインフレを継続することで、密かに、気づかれることなく、国民の富のうち、かなりの部分を没収できる。この方法を使えば、国民の富を没収できるだけでなく、恣意的に没収できる。その過程で、多くの国民は貧しくなるが、一部の国民は逆に豊かになる。

Kelotonが

any interest paid on bonds it *chooses* to offer is a policy variable

と書いていることに注意。

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