財政破綻論者の正論

この人(⇩)の財政破綻論・日銀破綻論には賛同できないが、下のツイートの大筋は正しい。

正しくない部分は二つ目のツイートの「そのマネタリーベースを基に民間の金融機関の信用創造で市中に出回る貨幣が供給されます」で、現実はその逆の「民間銀行が信用創造で市中に銀行預金を供給→預金引き出しや他行への送金にマネタリーベースが必要になる→中央銀行が受動的に供給」である。ただし、これは中央銀行が完全に受け身ということではなく、政策金利≒民間銀行のマネタリーベース調達コストを通じて、民間銀行の貸出行動に影響を与えている。

This fits into the old theoretical view about the credit multiplier according to which the sequence of money creation goes from the primary liquidity created by central banks to total money supply created by banks via their credit decisions. In reality the sequence works more in the opposite direction with banks taking first their credit decisions and then looking for the necessary funding and reserves of central bank money.
In modern banking sectors, credit decisions precede the availability of reserves in the central bank.

本論に戻ると、MMTはマルクス主義→新左翼の系譜に連なる思想のためか、フェミニズムと同様の信者を狂信化・狂暴化させるカルト的要素があるようで、常識や通説は誤りで、自分たちの教義だけが真実だと思い込むようになる。学生運動の時代に、マルクス主義にかぶれた世間知らずの若者が、自信満々に「権威」を否定していたようなものである。

藤巻の「中央銀行が発行する通貨の裏付け資産は国債に限らないので、国債がゼロでも通貨はゼロにならない」というツイートも、中央銀行のオペレーションをありのままに見れば否定しようがないのだが、信者になると現実と虚構が逆転してしまうらしい。

信者の大半はネットde真実系の素人なので、知識量が乏しく、読解力にも欠ける。そのため、自分が知らなかった「反証」を示されると、事実と論理に基づいて再反論するのではなく、条件反射的に誤りだと理屈付けしてしまう。

藤巻のツイートと同じ内容は『日本銀行百年史』や

新方式のもとにおける債券買入れについては昭和37年12月に政保債998億円の買入れが行われた。しかし当初から予想されていたように政保債だけでは買入れ対象債券が不足すると考えられたので、対象債券を拡大することにし、昭和38年1月、長期国債・利付金融債電力債・本行貸付担保適格地方債も買入れ対象に含めることになった。そして同年2月および3月には政保債金融債電力債が999億円買い入れられた。

『昭和財政史-昭和27~48年度』(赤羽桂「『昭和40年度における財政処理の特別措置に関する法律』の概要」からの引用部分)にも見られる。今も昔も、中央銀行がやっていることの本質は変わっていない。

前者〔市中消化〕にあっては、まず日銀が金融政策の立場から、国民経済の成長に必要な適正な通貨の供給量を見定め、その通貨供給の手段として買オペまたは貸し出しを行うのであって、その場合買オペの対象または貸出しの担保が政府債社債、あるいは手形となる場合もあれば国債となる場合もあるというにすぎない。

ところが、MMTに感化されて「国債発行は統合政府の通貨発行に等しい」と錯覚した信者は、USドルの金兌換が停止されたニクソン・ショック以前と以後では中央銀行の通貨発行メカニズムが根本的に変わったので、現在の参考にはならないと短絡的に考えてしまう。「無知の知」がなく全知全能の気分なのがカルト信者の特徴である。

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どうもこの信者たちは、銀行が裏付け資産なしに貨幣を発行することを「内生」と思い込んでいるらしい。もちろん、不良債権になるだけなので、民間銀行も中央銀行もそのようなことは禁止されている。ニクソン・ショック(ドルの金兌換停止)とも何の関係もない。

FRB議長も債券を買う代金としてドルを(デジタル的に)発行すると述べている。

We print it digitally. So as a central bank, we have the ability to create money digitally. And we do that by buying Treasury Bills or bonds for other government guaranteed securities.

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