新薬の開発について思うこと

臨床開発の仕事をしていた私は、いくつかの新薬を世に送り出すことに関わり(もしくは絶賛申請中)、毎日の膨大なタスクに追われながら仕事をしていた。薬がいち早く承認されれば、助かる患者さんもいるなんてことは、充分わかっているつもりであったが、毎日のto doに追われすぎて、何の為にこの仕事をしているのかなんて考えることなく毎日が嵐のように過ぎ去っていた。

患者さんのためにとか言うけれど、製薬会社だって民間企業である。稼がないと、営業利益をあげないといけないのである。そのためには、開発費を抑え、開発期間もグンと前倒しにして利益に繋げる、また承認された後にも病院に薬を使ってほしいから、キーとなる権力のあるドクターのいる病院で開発する等、この世界に数年いると様々なことを学ばざるをえない。
※一般的に使用する「開発」と、臨床で使う「開発」のイメージは異なると思う

開発部門の多くはブラック労働だと思う(個人的偏見)。土日も携帯は手放せない、緊急事態があったらすぐパソコン開いて、報告書やメールして〜とかやることは色々ある。平日も殆ど寝てない人や、働きすぎて倒れた先輩もいた。精神的に追い詰められ、辞めてった人もいる。そして、todoのむちゃぶりは半端ない、自分で解決出来る問題だけならいいけれど、医療機関を相手にする仕事であり、医師やその他病院スタッフが動いてくれないとどうにもならないことも多く、コントロール力が試される仕事でもある。ここに関しては、正直どこの病院担当するかの運もあると思うけれど。臨床開発に携わる人達は、かなりのストレスを抱えながら仕事してる率が高い。故に他の業界に比べて、退職や転職する率も高いのである。

仕事の愚痴になってしまったが、ここで明記したいのは、一刻も早い新薬を待ってる患者さん及び家族が待っているということ。治療法のない難病ならなおさら、切実に。臨床開発の仕事をしていても、何の役にも立たない自分が申し訳なくて、しかも介護のストレスで怒ってばっかりで八つ当たりもしてしまって、病気は患者だけでなく家族までもボロボロにする。

患者さん及び家族のストレスに比べたら、仕事のストレスなんてかわいいもんであると身を持って体感した。

早く新しい治療が確立してほしい、早く薬が承認されてほしい。そして、早くお母さんに元気になってもらって、毎年行ってた海外旅行に行きたい。