高尾歳時記 2024年8月11日
去る8月7日は、二十四節気の立秋。暦では、秋を迎えました。
連日暑い日が続いていますが、山では確実に季節が進んでいます。本日早朝の高尾山口駅前の気温は26℃。風も涼やかにふいて、心地いい。
暑い季節はできるだけ沢沿いの涼しいルートを選択しますが、日影沢のすぐ脇をとおる日影林道はさらに涼しく、冷たい風が吹き抜けて快適そのもの。今日も東京都心は35℃ごえの猛暑日になりましたが、ウソのようなさわやかさです。
今年はカラ梅雨でしたので渇水が心配されるところなのですが、東京都水道局の貯水量情報を見ると(*1)、2024年ならびに2023年8月9日時点の貯水量は:
2024年 2023年
利根川水系 84.4% 59.7%
荒川水系 98.5% 83.6%
多摩川水系 77.1%. 81.9%
と、憂える必要はないようです。むしろ、東京都民が半分以上依存する利根川水系は2023年のほうが貯水量が少なく、心配な状況だったのですね。そういえば、奥多摩湖にある麦山の浮橋は、去年小河内ダムの水位低下で通行禁止になったのですが、今年は水位が回復して通行解除になりました(*2)。
ところで、東京都が人工降雨装置なる設備を保有していることはご存知でしょうか(*3)。
東京都が保有する人工降雨装置は小河内ダムにあります。このダムがせきとめているのが奥多摩湖。多摩川水系の最上流域です。この「小河内発煙所」の人工降雨装置は全部で4基。ここで、氷の結晶の核になりやすい物質を合成(具体的にはヨウ化銀とアセトンの混合液を燃焼)し、空に煙を噴射することで上空の雨雲の中で人工的に氷結晶の核をつくり、雨を降らせる仕組みとのこと。
この装置、最後に本格稼働したのは2001年で、このときは小河内ダム上流に2時間で40ミリ程度のまとまった雨が降ったのだそう。その後は、2013年に試運転を実施したことはあるものの、本格稼働はないそうです。しかしいつでも使えるよう、整備は継続的にしているのだとか。
このしくみじたいは、小学生のとき(80年代です)に読んでいた雑誌に記事の記載があった記憶がありますので、そんなに最近の発案ではありません。その記事では、アメリカでハリケーンの勢力を減衰し災害を抑制する技術として、実際にアメリカ空軍のジェット戦闘機を発進し、上空からハリケーンにヨウ化銀を格納したミサイルを打ちこんで爆発させた事例が紹介されていました。小学生のころ以来すっかり忘れていたこのしくみは、2008年北京オリンピックのときに利用されたことで話題になりました(*4)。北京オリンピックの開会式当日の天気予報は雷雨。開会式を晴天で迎えるため、中国当局は開会式の数時間前に北京市内や周辺都市から合計千発以上のロケットを雨雲に打ちこみ、ヨウ化銀を散布して北京市周辺で雨を降らせる「人工消雨作戦」なるものを実施。開会式は見事な晴天となりました。
2022年北京冬季オリンピックのときも同様の措置がとられましたが、この時は競技会場で十分な雪量を確保するため、人工的に降雪を引き起こす目的で使われました。
人類による科学技術の飽くなき探究は必然のこととはいえ、ここでも神の領域に近づきすぎているのではと愚生のような者は心配になってしまいます。ちなみに、ヨウ化銀は人体に有害とのよし(*5)。気象に限っていえば、空に国境はありません。世界の空はつながっています。2024パリオリンピックの開会式は、傘がなければ全身ずぶ濡れになるほどの、雨ふりしきるなかで行われました。
おっとそんなことはともかく話を戻すと、高尾の季節は確実に進んでいます。今日も花の多いところをめぐってきました。
*1
参考資料:東京都水道局HP 水源・水質 貯水量情報
閲覧日:2024年8月12日
*2
東京都水道局HP トピックス 麦山浮橋通行再開のお知らせ
閲覧日:2024年8月12日
*3
参考資料
吉崎洋夫、"東京都の人工降雨装置の「実力」とは 20年超本格稼働せずも「準備はできている」と担当者"、AERA dot.
閲覧日2024年8月12日
東京都HP 都政情報 とちょうダイアリー これまでの都政レポート 都政レポート2022年 12月 渇水への備え 人口降雨装置ってどんなもの?
閲覧日2024年8月12日
日本経済新聞、”人口降雨装置、12年ぶり稼働 東京都が渇水対策”、2013.8.20
閲覧日2024年8月12日
*4
板垣朝子、”テクノ雑学 第101回 雨を降らせて晴れを作る −人工降雨の技術−”、TDK Tech-Mag、閲覧日2024年8月12日
https://www.tdk.com/ja/tech-mag/knowledge/101
*5
参考資料
厚生労働省 職場の安全サイト
閲覧日:2024年8月12日