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広報ブランディングのすすめ vol.4~「広報は流行の最前線を追え!」という大間違い

「広報は流行の最前線を追え!」という大間違い

前回、広報活動自体がまず目指すのは、メディアに取り上げてもらうことだとお伝えしました。

では、メディアはどういう情報を取り上げるかというと、視聴者や読者など社会が知りたいと思うニュースバリューがある情報です。

しかし、そう説明すると得てして、「よし、ではいま流行していることに敏感にアンテナを張り、当社も流行の最前線に沿って情報を発信しよう!」と意気込んで、流行を追いかけてしまいがちになります。

ところがこれは、間違った広報活動に陥りがちなワナです。

日々配信されるプレスリリースなどを見ていると、そのワナに気づかないまま流行を追いかけ続けているように感じる事例が少なくありません。

もちろん、常にアンテナを張って流行に対して敏感であることは重要です。なぜなら、流行を押さえておくことは、何がニュースバリューが高い情報かを判断する上で大切な材料になるからです。

では、流行の最前線を追いかけることのどこに、ワナがあるのでしょうか?整理して考えてみるとその答えが見えてきます。

もしあなたがアンテナを張り、流行の最前線情報をキャッチした場合、その情報はどこから得ているのでしょうか。それは、テレビや新聞、雑誌、WEB媒体などのメディアからです。つまり、流行しているという情報をあなたが目にしている時点で、もう既にメディアには報じられた後だということになります。

メディアがその流行情報を報じたのは、報じる直前の時点においてニュースバリューが高かったからに他なりません。逆に言えば、メディアに報じられて既に流行と化した後の情報は、その瞬間から、もはやニュースバリューが下がってしまっているということなのです。

新規性が何もなく、既に誰もが知っている情報をただ報じるだけでは、視聴者や読者たちは「もう知っているよ」と興味を持ってくれません。

広報が提供すべきは、まだ知られていない情報

例えば、ChatGPTが大いに話題になったことを機に巻き起こった生成AIブーム。文章の他にも、イラストを作成してくれたり、音楽を作成してくれたり。

そんな生成AIブームが起きた後に、「よし、いま流行の最前線は生成AIだから当社も開発して追いかけるぞ!」と取り組んで情報発信したところで、その情報は二番煎じ三番煎じになってしまいます。

さらに、急いで開発してリリースしたアプリが、既に発表されている生成AIと比較して同程度の機能かそれ以下であれば、ニュースバリューとしてはほぼゼロです。ただし、自社がIT業界の大手企業だったりすれば、「ついに大手の〇〇社も生成AIに参入」などと取り上げられることもあります。

しかし、そのような取り上げられ方がされるケースは、限られた一部の会社の場合だけです。また、その場合のニュースバリューは生成AIを開発したという情報自体にあるのではなく、大手企業である自社が追随したという情報の方にあります。

繰り返しになりますが、メディアが取り上げるのはニュースバリューが高い情報です。それはつまり、既に流行していることが判明している情報ではなく、これから新たに流行する情報だったり、実は既に流行しているのだけれども、そのことが世の中に認知されていないような情報ということになります。

この点もまた、マーケティングと広報の異なる部分です。マーケティングの場合は、むしろ、流行に沿わなければなりません。なぜなら、誰もが認知しているからこそ、そこに顧客が集まり、マーケットが形成され、認知の広がりと共にマーケットはさらに拡大していく可能性があるからです。

一方、広報が目指すのは世の中に認知される前の情報提供です。実はこんな動きが広がってきているとか、新しい商品やサービスがこれから世の中を大きく変える可能性があるなど、新たなマーケットが生まれそう、あるいは生まれつつあるという情報になります。

以上を踏まえると、冒頭でご紹介した指示の文言は以下のように変わります。

「よし、ではいま流行していることに敏感にアンテナを張り、流行を踏まえた上で、世の中をあっと驚かせるような新しい情報を発信しよう!」

メディアに情報提供して、社会の新しい姿を世の中に伝えてもらうこと。それが広報担当者の役割です。
(次回へつづく)


▽広報ブランディングトレーナーのページ▽
https://kkawakami115.wixsite.com/workstyle/pr-branding

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