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広報ブランディングのすすめ vol.3~マーケティング脳と広報脳
営業職からマーケティング職に変わった時に感じる戸惑い
営業職が最も大切にしているのは目の前のお客様の要望に対し、如何に満足していただき、期待を超える対応ができるかということです。
頭の中は、いつもお客様のことでいっぱい。
「A社さんには、そろそろこんな需要があるんじゃないかな」
「今朝の報道を踏まえて、B社さんにこんな提案をしてみよう」
そんな、具体的な目の前の一社、目の前のご担当者を満足、感動させられるような対応に心血を注いでいます。
しかしながら、営業職だった人がマーケティングに携わるようになると一気に環境が変わり、どうしていいかわからなくなります。目の前から“具体的な一社”が消えてしまうからです。
営業職と同行する時以外は、お客様と直接接点を持つ機会はありません。
製造業や商社、金融といった業種でセグメントしたり、大手や中小など企業規模でセグメントしたりと都度顧客層を想定しながら、会社全体の販売を促進するための顧客創造活動に勤しむことになります。
ただ、お客様に満足、感動していただきファンになっていただくという最終目標は営業と同じ。勝手の違いにさえ適応できれば、営業職としての経験が大いに活きるポジションに違いありません。
そういう意味で、営業とマーケティングは同じ括りに入ると言えます。
マーケティング脳と広報脳
ところが、営業およびマーケティングと広報はまるで次元が異なります。
会社や事業についてアピールする、という点は同じはずなのに、マーケティング的な観点で取り組もうとすると全く上手く行きません。
そんな、マーケティング脳と広報脳の違いに気づくまでには、通常しばらく時間がかかります。営業やマーケティングにどっぷりと浸かっていた人ほど、その傾向があります。
例えば、以下のような条件で“みかんジュース”を対外的にアピールしたい場合。マーケティングと広報とでは、打ち出し方が全く異なってきます。
売上は3年連続前年比200%増
地元三重県産のみかん使用
三重県と共同で商品開発
容器ラベルは地元の小学生がデザイン
来週金曜日まで半額セール実施
マーケティング脳だと、イメージされるのは以下のような打ち出し方です。
<主題>
半額セール実施中!
3年連続売上200%増の三重県産“みかんジュース”
セールは来週金曜日まで。お急ぎください!
<補足情報>
三重県との共同開発で話題。
地元小学生がデザインした容器ラベルが目印です。
マーケティング活動の目的はお客様に買っていただくことなので、如何に「買いたい!」と思っていただけるかがポイントになります。
本当はみかんジュースの美味しさなどもアピールしたいところですが、情報が条件の範囲だと最も訴求力があるのは「半額セール」です。
そのため、まず最初に「半額セール」の文字を置いて目線を引きつけてから、売れている事実を伝えて興味をそそり、商品名を出す、のような流れになります。
広報が訴求したい相手は、メディアと社会
一方、広報脳だと以下のような感じになります。
<主題>
三重県と共同開発した“みかんジュース”が3年連続売上200%増。
容器ラベルを地元の小学生がデザインし、素材も三重県産。
<補足情報>
来週金曜日まで、半額セール実施中。
広報活動の目的は、お客様に買っていただくことではありません。
もちろん、広報活動した結果、事業が世の中に良い形で認識されたり、テレビに出て一気に認知が広がり、たくさんのお客様が買ってくださることはあります。
広報活動の先に、お客様に買っていただくことも視野に入っているという意味では、最終目的の中には含まれているかもしれませんが、それは飽くまで広報活動によってもたらされた結果に過ぎません。
広報活動自体がまず目指すのは、メディアに取り上げてもらうことです。
メディアは、みかんジュースが半額セールしています、なんて情報を取り上げてはくれません。そんな情報を取り上げれば、その会社の宣伝を手伝っていることになってしまいます。
メディアが取り上げるのは、視聴者や読者など社会が知りたいと思うニュースバリューがある情報です。つまり、広報脳とは「メディア=社会」に訴求するための思考ということになります。
与えられた条件だと、「みかんジュースの半額セール」というありきたりな情報よりも「三重県と共同開発した商品がヒットしている」という情報の方が、レアで影響度も大きく社会的関心は高いはずです。
また「容器ラベルを地元の小学生がデザイン」していることもレアで話題性があり、社会的価値を感じます。
このように、マーケティング脳と広報脳とでは、目的も選ぶ言葉も話の流れも全く違ってくるのです。
(次回へつづく)
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