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キャンプや田舎暮らしで失敗しない為のお薦めホラー漫画

ここ数年キャンプをする人が増えた。芸人のヒロシやバイきんぐ西村などキャンプ芸人がYouTubeでも人気を博していたり、マンガでも『ゆるキャン△』『ふたりソロキャンプ』『山と食欲と私』などキャンプをテーマにした多くの良質な作品がある。また『山賊ダイアリー』『罠ガール』『クマ撃ちの女』のような狩猟マンガなんてジャンルも人気だ。

そして今年に入ってのコロナ禍において、在宅勤務やテレワークなど働き方や生活様式の考え方も多様化しだし、都心を離れて地方に住みながら仕事をするという選択肢も徐々に増えてきている。

田舎暮らし。自然の中での生活。

とても憧れるシチュエーションだ。上記したマンガなどを読んでいても、大自然の中で新鮮な空気を吸いながら美味しい料理を食べて過ごす、なんて様子がとても楽し気に描かれている。

だが、ひとつ注意した方がいい。

田舎には田舎独特のしきたりや風習がいまだ残っていることがある。決して踏み入れてはいけない場所、禁忌と呼ばれる行為、そもそも外部との接触を良しとしない場所もあったりする。「いやいや、令和になってそんな場所なんか残ってないでしょ」なんてはたして言い切れるだろうか。地方でコロナを発症してしまった人への謂われない誹謗中傷、村八分のようなことが報道されたのを目にしたことがあるはずだ。

一時の癒しを求めてアウトドアライフを送ろうと自然豊かな場所へ行くのは素敵なことだ。都会での喧噪から逃れ、ゆったりとした田舎暮らしを満喫するのも素晴らしいと思う。だからこそ、穏やかな生活を送るためにも読んでおくべきマンガがある。

そんな田舎暮らしやキャンプで「やってはいけないこと」を箇条書きにしつつ、お薦めホラーマンガを選んでみた。

①村人とは仲良くしよう「ガンニバル」

現在7巻まで刊行している作品だ。そして目下クライマックス真っただ中である。前任の駐在が「村人が人を食べている」という言葉とともに失踪し、後任となった阿川も異様な死体を目の当たりにし、供花村には表の顔と裏の顔があることを知る。

明らかに怪しい一族が出てくるが、それ以上に怖いのは普通に穏やかな顔をして生活している隣人たちが“よそ者”である主人公一家を常に監視していることだ。いったい誰を信じて、誰を頼ればいいのか。そして「食人族」は本当に存在するのか。

1巻を読んだら最後、一瞬でその村の異様な雰囲気に魅了され、そこからはジェットコースターのような疾走感で脳内麻薬を放出しながら一気に7巻まで読み進めてしまう。とても恐ろしい風習に支配された村を舞台にしたホラーマンガだ。

そして最新7巻はハリウッドのバイオレンスアクション映画のような血みどろスプラッタ全開で、イーライ・ロスやアレクサンドル・アジャあたりに映画化して欲しいと思ってしまうハイテンションな大惨事となっている。

今『進撃の巨人』と共に、その行く末が楽しみでならない作品だ。

②軽い気持ちで廃村を探すな「雛接村」

2019年は映画でも『犬鳴村』が話題になり、廃村ブームなんてのも一部ではあるとかないとか。来年には「実録!恐怖の村シリーズ」第2弾として『樹海村』なんてのも製作が進んでいる。

安易な気持ちで廃村、心霊スポットなんて呼ばれる場所に行くことは愚行である。そんな教訓めいた作品は沢山ある。その中でも『雛接村』というマンガは全1巻で完結している短い作品ながらも、ただただ不条理な状態で捕らわれ殺されていくだけじゃない悲しい物語、そして切ない愛の作品だ。

ストーリーは全7話で構成され、それぞれ雛接山にまつわる神隠し伝説に誘われて来た登山者が地図にない『雛接村』へと迷い込み、村の掟に取り込まれていく。

作者の志水アキ先生はホラー・ミステリ小説界の巨匠である京極夏彦先生の『京極堂シリーズ』などを沢山マンガ化されているだけあって、絵柄も耽美で緻密なので、1ページ1ページがとても美しい。

『雛接村』は1巻で完結している短い作品ではあるが、ストーリーも練り込まれており、ただバケモノが出てくるだけじゃなく、そのバケモノがバケモノと化した悲しい歴史も紐解いていく。

クリーチャーも多彩で、ラストは巨大なモンスターも出現するが、チープさは微塵もなく読みながら映像化を期待したくなる作品だ。

③山には深入りしないこと「マガマガヤマ」

『殺戮モルフ』『餓獣』など数々のホラーマンガを生み出している小池ノクト先生が贈る「山」にまつわる短編集。その不条理さは『世にも奇妙な物語』にも通じるものがありつつ、禍々しさは何倍も凌駕している。

日本人は潜在的に山への畏敬の念を持っている。それはDNAレベルで植え付けられていて、だから誰しも心のどこかで「山は恐い」と思う気持ちがあるものだ。

とても、とても不条理な短編が詰まっているが、4話目【怪肆】猿様と6話目【怪陸】すそが僕は好きだ。特に「すそ」のワンシチュエーションで完結するメチャクチャ不幸な男の行く末が1話目に繋がるラストに震える。

2巻も発売が決定しているので、今後も楽しみな短編集だ。

ちなみに小池ノクト先生といえば『黒街』の世界観も大好きだ。ほのぼの日常系ホラーとでも分類(そんなジャンルあるのか?)できる作品で、怪異が普通に存在する世界で不条理にバケモノに追われたり、父親は怪しい仕事に手を染めたり、祖父の家には悪霊もいるし学校には怪談だらけ。

恐怖と笑いは表裏一体とはよく言うが、完全にホラーシチュエーションをブラックコメディにしてしまっている『黒街』も面白いですよ。

④田舎の風習を正しく学べ「冥婚の契」

とある事情で都会から赴任してきた教師・小沼が村に伝わる風習、伴侶を得ずに亡くなった者を弔うため、絵馬に架空の人物との婚儀を描き奉納する“冥婚絵馬”に何故か描かれてしまい恐ろしい霊に憑りつかれていく。

導入は『ガンニバル』と似ているが、あちらはバイオレンス色が強い物理系だとしたら、こちらはバリバリの霊障ものだ。村に伝わる因習と因縁、呪いの根深さが暗く底なしに恐ろしい。

“冥婚絵馬”はムカサリ絵馬という山形県の一部に現在も伝わる民俗風習をもとにしているのだろう。同じような風習は中国やインドなどでも残っており、アジア圏独特の死生観が原点にあるのかもしれない。前にテレビで絵馬が奉納されているお寺の光景を見たことがある。

なんとも言えない気持ちになる光景だが、そんな悲しい伝統が一歩間違えたら呪いにも転嫁していくというのは古い因習独特の歪な習慣にある“隙間”のせいかもしれない。

『冥婚の契』は現在3巻まで刊行されているのだが、電子書籍でしか販売されていないのが少し残念だ。しかし金田一耕助シリーズのような雰囲気に心霊ホラー要素もプラスされた世界観は一品だと思う。

さて、山のようにあるホラーマンガの中から個人的に秀作だと思う4つを紹介してみた。普段ホラーは読まない人も、まだまだ暑い夏の終わりに納涼読書も良いんじゃないでしょうか。

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