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Novels

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短編小説まとめ
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#短編

定年と私

定年と私

今日で定年になった。明日からは何も無い
自慢じゃないが、趣味もなければ友人もいない
さぁ、明日から何をしようか・・・何も浮かばない
でも大丈夫だ、きっと誰かが助けてくれるだろう

今日は子供から連絡があった。結婚して実家に戻るらしい
私の居場所はおそらく無いだろう。とても憂鬱な気分だ
多分、冷たい視線が私を突き刺さるだろうよ。全く・・・
でも大丈夫だ、きっと子供が助けてくれるだろう

今日からは自

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秋日和

秋日和

カシュ、トクトクトク、んぐ、プハー外で飲むビールはやはり美味い 

この景色はなかなか他では見られないここに引っ越してよかった 

シュー、ポシュ、シャー、ほぐほぐやっぱりこの季節は秋刀魚だなぁ

黄金色に輝くススキや空一面に広がる星空も他にはない本当にここに引っ越してよかった 

独りになって3年になるかぁ子供たちはそれぞれの道で頑張っている 

虫の鳴き声がすごく切なく聞こえ、昔をふと思い出す

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雨音

雨音

ザー、ザーという砂嵐の様な音が鳴り響いている

ポチャ、カーン何かに当たったようだ

窓から見えるいつもの景色は何も変わらない

変わるのは空の色とその日の気分ぐらいだ

ずっと同じ気がする。時間は一応進んでいる

頭がボーとするし、自分自身何がしたいかわからない

身体はほぼ動かないし、何処か息苦しくて辛い

頭の中にあるのは日々の後悔だけだ

何でこんな身体になったんだ。何で自分がこんな目に

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春の訪れ

春の訪れ

強くなる。そう願って一歩踏み出した

あれから何年経ったのだろう・・・

私はちゃんと前を向いて歩けているだろうか

不安な私の側を春の風が通り過ぎた。春の訪れと共に

それは春のにおいがした。風が運ぶどこか懐かしいにおいだ

草や花の香りが心を和ませる。以前住んでいた家は植物に囲まれていた

彼女が大切にしていたあの花はもう枯れてしまったのかな

彼女は私の側にいない。忘れたいのにこの時期になる

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3日間

3日間

今日は自分が何で生きているかを考えてみた

一日中考えた。必死になって考えた

でも、何も浮かばなかった

今日も自分が何で生きているかを考えてみた

全身を使って絞り出そうとしたが、何も出てこなかった

あーもう、考えるのが面倒くさくなってきた

考えるのは3日間と決めていたが、結局何も結論は出ていない

最後の日がやってきたが、面倒なので考えることを放棄した

大の字に寝ころび、頭の中を空っぽ

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何もない部屋

何もない部屋

そこは暗闇の空間だった

どうやら穴に足を滑らせたらしい

周りを見渡しても何も見えない誰もいない

思いっきり叫んでみたが、返ってくるのは自分の声だった

仕方なく歩いてみることにした

手探りで一歩一歩確かめるように歩いた

ドン!と鈍い音がした。何かにぶつかったようだ

それは、まるで人の様に見える何かだった

すると、それは突然しゃべりだした

お前は何も役に立たない。お前を誰も必要として

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クリスマスイヴ

クリスマスイヴ

#Xmas2014

カタカタカタ...パソコンのキーボードの音、いつもと変わらない日常
コーヒーの香り、時間が止まったような静寂、何か物足りない毎日
ふと、窓に目を向けると雪が降っていた。明日はクリスマス
「私、ずっとこのままかな・・・」独り静かにつぶやいた

街中イルミネーション、行き交う恋人たち、いつもと変わらない私
クリスマスイヴ、クリスマスの前夜、何故か納得いかない日
クリスマス仕様の浮

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